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2020年6月24日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯(5月1日〜31日分)を「追稿4」としてまとめた「シグナル交通安全雑記/第139回」を公開しました。

2020年5月29日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯に4月20日〜30日の出来事を「追稿3」として加えた「シグナル交通安全雑記/第138回」を公開しました。

2020年5月29日

ドライバーを処罰する道路交通法の罰則における「刑罰」や「過失規定」、「両罰規定」などについて解説した「交通安全コラム/第27回」を公開しました。

2020年5月22日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯(4月1日〜20日)をまとめた「シグナル交通安全雑記/第138回」を公開しました。

2020年5月12日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯に2月末〜3月末の出来事を「追稿1」として加えた「シグナル交通安全雑記/第137回」を公開しました。

2020年4月24日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯を時系列で整理・記録した「シグナル交通安全雑記/第137回」を公開しました。

2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、「交通安全時評」内でお読みいただけます。

更新日:2020年7月7日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その168 消火器はなぜあるのか
交通リスクコンサルタント 小林 實

地味な活動

 「備えあれば患いなし」とは昔からある格言ですが、これを象徴するものが、会社や工場、さらには家庭にもよく置いてある消火器です。いつ火事が起きてもすぐに初期対応ができるようにするため、いざというときに役に立たない…ということがないよう、定期的に中に入っている消火剤の点検や取り換えを行う必要があります。また、正しい使い方の訓練なども、防災の日などに行われています。
 空港の隅っこの格納庫のそばに、いつもぽつんと寂しそうにしている消防車も同じです。普段は出番がなくて退屈そうですが、いざ離着陸時に飛行機のトラブルが発生したときや、さらには重大事故が発生したときなどには、なくてはならない存在だといえましょう。しかし、この空港ではもう何年も大きな事故がないから…と、定期点検や訓練をないがしろにしていると、常に備えるという普段の「リスク管理」の状態から、いざ緊急事態という「危機管理」の状態へシフトすることを難しくします。
 これは、企業における安全管理にも言えることで、「うちの会社は、もう長いこと大きな事故もないから…」といって、管理体制を縮小したり経費を削減したりするのはままあることではないでしょうか。同様に、国や自治体などの予算を見ても、全体的に労働災害や交通事故が減ってきますと、予算、ことにソフトの面で削る傾向があり、例えば、安全教育用のパンフレット配布ですとか、講習会の開催といった地味な活動は、事態が好転すると減らされることが多いようです。
 しかし、無事故を続けるためには、このように地味ではあってもしっかりした防衛体制や活動を続けることが鉄則なのです。

風化するスペイン風邪の教訓

 およそ100年前に世界的な大流行をした「スペイン風邪」で、我が国でも多くの犠牲が出ましたが、それ以来、ほとんどの疫病は医学的手法で封じ込めてきました。この間、サーズ(SARS)やマーズ(MERS)といった感染症も発生しましたが、世界的な大流行に至らずに済みました。ある意味で、こうした最近の実績というものが、スペイン風邪という世界的大流行の教訓を次第に風化させたとみることもできるでしょう。
 人間にとって記憶、ことに嫌な記憶というものは、できるだけ早く消去したい、忘れたいとする傾向があります。それが100年前の出来事ともなりますと、ほとんどの人が経験していませんから、軽く評価され、その結果、風化してしまうのかもしれません。それゆえに、感染病予防のための予算措置も、ある意味で軽減されたとみてもよいでしょう。
 ところで、5月1日付けの朝日新聞に、20年前に看護学生であった方の投書がありました。それによりますと、「今から20年前の当時は感染症の時代が終わり、慢性疾患の時代になったといった風潮が強かった」ということでした。つまり、感染症に対する慢心といいますか、今回の新型コロナにつながる防御体制の弱体化という一つの土壌ができつつあったわけです。

耳慣れない言葉の氾濫

 今回のコロナウイルスの流行による様々な影響の一つに、普段耳にしない言葉や新語が街に氾濫したことが挙げられます。政府は、あえて「社会的距離」とか「行動変容」といった言葉を用いていますが、これは、心理学や社会学で使う学術用語という感じがぬぐえません。
 社会的距離のことを英語では「ソーシャルディスタンス(social distance)」などと言い、英語圏などの人には極めて自然な響きがありますが、果たして日本人にはどうでしょうか。こうしたあいまいな表現を避け、あえて「物理的距離(physical distance)」と表現する国も多くなっており、ドイツなどはその好事例です。
 ですから、結果論にはなりますが、「お互いの距離を余分にとりましょう。両方が手を伸ばしても届かないくらいの距離で」といった、日本語での平易な呼びかけのほうがよかったのではないでしょうか(「前後の距離」の場合は、後ろは自分ではコントロールしにくいのですが)。
 一方、「行動変容」というのは、臨床心理学や社会心理学などでよく使う言葉ですが、これを社会生活の中で一般的に使うには、いささかなじみにくい用語です。単純に「行動を変える」とか「行動を変えましょう!」と呼びかけたほうが、説得性は高いのでないかと思います。
 また、政府から国民への情報の伝達の仕方にも問題があります。総理や担当大臣が口をそろえて「ここまで減ってきたのは、国民皆さんのご協力によるものです。ありがとうございました」と言っていますが、何か他人事というか、上から目線というか、聞く者の心に訴える感じが薄く、訴求性の低い表現に聞こえます。これに対し、ドイツのメルケル首相のスピーチを聞いていると「皆で一緒になって努力していきましょう!」というように、一体感が強く、訴求性の高いものになっています。

崩壊した安全神話

 さて、これからの交通運輸の安全を考えるに際し、常に我々は『「安全神話」はもはや存在しない』という意識のもとに当たらねばならないでしょう(これは、東日本大震災時の福島第一原発での放射能漏れという想像もしなかった事故が発生したことでも言えることですが)。
 「失敗学」で有名な畑村洋太郎氏は、失敗しながら努力して新しいシステムを作っていくという文化が、まだわが国には育っていないこと、新しい事態に対応するのに弱い社会になっている―ということを指摘しておられます。
 今回の新型コロナウイルスの世界的な流行を今まさに体験している我々に課されたものは何なのか、考えてみる必要があります。「新しい生活様式」なるものが提唱されてきていますが、交通安全管理の場でも、この際見直す部分がありそうです。ドライバーや現場の皆さんの健康維持という問題は、今まで以上に神経を使わなければならないでしょうし、限られた人的資源をどう回していくのか、交代要員をどう確保していくのか、新型コロナの第二波ないしは第三波がくることを予想した上での新たな管理体制が必要となってきます。

(2020年5月)

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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バックナンバー

第168回
消火器はなぜあるのか
第167回
新型コロナと安全管理
第166回
濃厚接触
第165回
俯瞰的な発想
第164回
ハワイとレンタカー
第163回
負のスパイラル
第162回
「江戸しぐさ」とマナー
第161回
あおり運転は防げるか
第160回
新しい交通三悪
第159回
点検について
第158回
事故分析の限界
第157回
「人動車」という発想
第156回
教科で教える
第155回
平成の総括 その3
第154回
平成の総括 その2
第153回
平成の総括 その1
第152回
0.5秒の持つ重み
第151回
老いの初心
第150回
2030年の交通社会
第149回
異常をどう検出するか
第148回
ラスムッセンのSRK理論
第147回
JR西日本の「考動計画」
第146回
運転教育とコーチング
第145回
コーチングについて
第144回
かくれんぼができない子供たち
第143回
これからの安全管理
第142回
「駐車場」というワナ
第141回
脅かされる歩行者空間
第140回
台車事故を考える
第139回
「注意」の落とし穴
第138回
デイサービスと安全管理
第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
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「パーおじいさん」のこと
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40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
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トップの厳しい目
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ベトナムとヘルメット
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左か右か
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はい作業とは
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脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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