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2020年6月24日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯(5月1日〜31日分)を「追稿4」としてまとめた「シグナル交通安全雑記/第139回」を公開しました。

2020年5月29日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯に4月20日〜30日の出来事を「追稿3」として加えた「シグナル交通安全雑記/第138回」を公開しました。

2020年5月29日

ドライバーを処罰する道路交通法の罰則における「刑罰」や「過失規定」、「両罰規定」などについて解説した「交通安全コラム/第27回」を公開しました。

2020年5月22日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯(4月1日〜20日)をまとめた「シグナル交通安全雑記/第138回」を公開しました。

2020年5月12日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯に2月末〜3月末の出来事を「追稿1」として加えた「シグナル交通安全雑記/第137回」を公開しました。

2020年4月24日

新型コロナウイルス感染症の世界的大流行の経緯を時系列で整理・記録した「シグナル交通安全雑記/第137回」を公開しました。

2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、「交通安全時評」内でお読みいただけます。

更新日:2020年7月7日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その166 濃厚接触
交通リスクコンサルタント 小林 實

40日間の隔離

 あっという間に世界中に新型コロナウイルスが拡散している中で、国境の閉鎖とか、検疫体制の強化など、今までにないほど厳しい状況になってきています。
 テレビでよく報じられるように、外国から日本へ帰ってきて空港でまず目にするのは「検疫」の文字で、英語では「quarantine(クアランティン)」と表記されます。およそ英語らしくない言葉ですが、元はイタリア語で数字の「40」(quarantena)からきている言葉だからなのです。ところが、イタリアでは検疫のことを、この外来語(?)を使用せずに「controllo sanitario」、つまり「衛生検査」と呼んでいます。
 なぜ40なのかといいますと、14世紀にイタリアの確かベニスの港だったと思いますが、船内にペスト患者がいないことを確認するため、疑わしい船を港の外に40日間隔離したことによります。この年にはペストが全世界的に流行し、1億人以上の死者が出て世界中がパニックに陥ったわけですが、少なくとも40日間隔離して様子を見れば大丈夫ということだったのでしょう。
 今からおよそ100年前の第一次世界大戦の末期である1918年には、全世界で「スペイン風邪」が流行し、全世界の死者は約3千万人、日本では約40万人にも達したのですが、このときも今回のような初期対応の遅れが指摘されました。当時は航空機による移動も少なく、日本は島国でもあり、こうした伝染病の広がりは、ある程度の水際作戦で防げるという過信があったのでしょう。今や、人や物が国境を越えて地球規模で移動するグローバル化が進んでいますから、伝搬の高速化はまさに新たなリスクだといえます。

人と人との距離

 新型コロナウイルスの予防に関し、疫病関係者が盛んに「濃厚接触」を避けるように、「社会的距離」(social distance)をとれと言っていますが、これは人との距離の大きさのことを言っています。文化人類学者のエドワード・ホールの「プロクセミックス」という理論によれば、人と人との距離というものは、次のように分類されるといいます。
 一番近いのは「密接距離」と呼ばれる45センチ以内の距離のことで、ハグしたり手を握ったりすることのできる距離のことをいい、混雑する電車の中では否応なしにこの状態に追い込まれます。
 新型コロナウイルスの影響でしょうか、さすがに昼間から電車の中でイチャイチャする若い男女の姿はあまり見られなくなりましたが、これこそ密接距離のうち「近接相」(15センチ以内)と呼ばれる典型で、まさに「濃厚接触」に当たります。
 イタリアでは、目下爆発的に新型コロナウイルスの感染が拡大し、死者も爆発的に増えていますが、高齢者人口が多いことに加え、接触文化が浸透しているお国柄で、キスやハグなどが日常生活で普通に行われる習慣もあるからでしょう。ことに近隣や友人らとの頻繁な交流というのをイタリア人は大切にしていますので、これも新型コロナウイルスの拡大と関係があるとされています。
 次に近いのは「個体距離」と呼ばれるもので、45センチから1.2メートルまでの距離をいいます。この距離というのは、両方が手を伸ばせば触れ合うことのできる距離であり、会議など話し合いの場などが相当します。
 そして、疫病関係者の口にする「社会的距離」というのは、1.2メートルから3.5メートルの距離を指しています(「濃厚接触」を避ける目安とされている2メートルはここに入ります)。お互いが3メートルも離れれば、今回の新型コロナウイルスのリスクである接触感染や飛沫感染を避けるには十分の距離だと考えるからでしょう。
 感染を防ぐためには、「公衆距離」と呼ばれる3.5メートル以上も離れればさらに安全性は増すでしょうが、お互いにコミュニケーションをとるにはかなり難しい距離だといえましょう。
 人が行列をつくるとき、待機位置を示すサークルを地面に書いておくと、一種の領域のブロッキング、つまり「自分の縄張り」を示すことになり、一定の効果があると考えられています。一方で、スーパーの混雑した行列に並んでトイレットペーパーを奪い合う…といった行動は、濃厚接触のリスクが高く、感染に拍車をかけることにしかなりません。
 いずれにしても、いつもよりも意識してお互いの距離をとり、「社会的距離」を維持することを心がけるよう、生活習慣そのものを変える必要がありましょう。

交通社会での濃厚接触

 人間は、見えないものに対するリスクを過小評価し、見えているもののリスクは過大評価するものです。
 運転中、例えば「危険物」といった表示がある車が前を走っているとしましょう。これは目に見えているリスクといえますが、前を走る車のドライバーがどんな性格の人か、衝動的にカッとなる性格が強いかどうかまではわかりません。前の車という物理的な存在は認識していても、箱の中にいる人の特性まではわかりませんから、これは目に見えないウイルスのようなものです。そこで、不要なトラブルを避けるためにも、十分な車間距離を保って走ることが必要なわけです。
 他の車に異常接近する、つまり「濃厚接触」をすることは、相手に対する威嚇ともとられかねません。ましてや、「濃厚接触」の果てには追突といった事故のリスクもあるわけですから、このような見えないリスクをもっと意識してハンドルを握る必要がありましょう。「十分な距離」というのは安全なクッションを確保することですから、多くのドライバーが積極的に十分な車間距離なり側方間隔なりをとるようにしてほしいと思います。
 最近、コロナウイルスの影響で学校が休みとなり、小さいお子さんを連れて歩いている家族の姿をよく見かけますが、歩車道が分離されていない道路で、子供に車道側を歩かせる親の心理はなんとも理解しかねます。車との「濃厚接触」のリスクは子供のほうが高いわけですから、このリスクから子供を遠ざける意識が大切でしょう。
 この際、車を運転しているドライバーをはじめとする交通参加者それぞれが、リスクに対する感度をさらに高めることを期待したいものです。

(2020年3月)


小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

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バックナンバー

第168回
消火器はなぜあるのか
第167回
新型コロナと安全管理
第166回
濃厚接触
第165回
俯瞰的な発想
第164回
ハワイとレンタカー
第163回
負のスパイラル
第162回
「江戸しぐさ」とマナー
第161回
あおり運転は防げるか
第160回
新しい交通三悪
第159回
点検について
第158回
事故分析の限界
第157回
「人動車」という発想
第156回
教科で教える
第155回
平成の総括 その3
第154回
平成の総括 その2
第153回
平成の総括 その1
第152回
0.5秒の持つ重み
第151回
老いの初心
第150回
2030年の交通社会
第149回
異常をどう検出するか
第148回
ラスムッセンのSRK理論
第147回
JR西日本の「考動計画」
第146回
運転教育とコーチング
第145回
コーチングについて
第144回
かくれんぼができない子供たち
第143回
これからの安全管理
第142回
「駐車場」というワナ
第141回
脅かされる歩行者空間
第140回
台車事故を考える
第139回
「注意」の落とし穴
第138回
デイサービスと安全管理
第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
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第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
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第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
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事業仕分け人
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青矢印信号の謎
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第43回
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第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
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感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
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近づくもの・遠ざかるもの
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転倒リスク

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