★「自動運転」にかかわる技術水準を示す「レベル0」から「レベル5」までの6段階のうち、一般に「自動運転」とされているのは、特定の条件を満たしてさえいれば、緊急時などの対応を除くすべての運転操作をシステムが実行する「レベル3」からですが、現在、「レベル3」の技術開発が急速に進んでおり、その実用化が間近となっています。
※「自動運転」にかかわる技術水準を示す「レベル」の詳細については、本項「交通安全コラム」No.21を参照。
★こうした状況を受けて、本年4月1日、「自動運転」の実用化に対応するための道路交通法一部改正が施行されました。
★そこで、今回のコラムでは、道路交通法一部改正により、何を目的に、どのような規定が設けられたのか―について解説します。
★ドライバーに代わって運転を担当するシステムを道路運送車両法上の「自動運行装置」として規定したうえで、自動運行装置を使用して自動車を用いる行為(以下、「自動運転」という)を道路交通法上の「運転」に含めることが定められました。
★この改正により、「レベル3」に該当する自動運転を道路交通法上の道路(公道)で行うことができるようになりました。
★改正前の「運転」の定義は、「道路において、車両または路面電車をその本来の用い方に従って用いること」でしたが、改正後の規定では、「道路において、車両または路面電車をその本来の用い方に従って用いること(自動運行装置を使用する場合を含む)」に変更されています。
※自動運行装置…改正道交法において「道路運送車両法に規定する自動運行装置をいう」と定義されています。道路運送車両法の該当規定(要旨)は以下の通りです。
「プログラムにより自動的に自動車を運行させるために必要な装置で、装置ごとに定められた条件(使用条件)を満たす場合に、ドライバーの認知、予測、判断、操作の能力のすべてを代替できるもの」(道路運送車両法第41条第2項要旨)
★「自動運行装置」には、道路運送車両法の規定により、装置を適切に使用することができる「使用条件」が装置ごと(車種ごと)に設定されています。たとえば、「高速道路に限る」などの道路に関する条件や、天候、昼夜などの環境に関する条件などが挙げられますが、言うまでもなく、使用条件に従わずに自動運転を行うと危険を伴うため、使用条件を満たさない状態で自動運行装置を使用することは禁止され、その罰則等が整備されました。
★また、自動運行装置の使用条件に従って自動運転を行っている限り、ドライバーは、自動運転中に携帯電話などを使用したり、カーナビ・カーテレビなどの画面を注視したりしても違反行為(携帯電話使用等)に問われない―という規定も設けられました。ただし、ドライバーは、自動運行装置の使用条件から外れた場合や車両が故障した場合には直ちにこれを認知し、運転操作を引き継ぐことができるような状態でいなければなりません。
※自動運行装置は、作動中に使用条件を満たさなくなる場合や正常に作動しないおそれがある場合は何らかの警報を出すようになっています。
★「自動運行装置」には、その作動状態を確認するために必要な情報を記録するための「作動状態記録装置」が備えられていますが、その記録データは、自動運行装置を搭載した車(以下、「自動運転車」という)が事故を起こしたり違反をしたりした場合、その原因や状況等を把握するうえで非常に重要です。
★そのため、以下のルールが設けられました。
(1)正常な「作動状態記録装置」を備えていないなど、必要な情報を正確に記録することができない状態で自動運転車を運転してはならない。
(2)自動運転車の使用者など、その整備について責任がある者は、上記(1)の状態にある自動運転車を運転させてはならない。
(3)自動運転車の使用者は、「作動状態記録装置」による記録を所定の期間保存しなければならない。
★道路交通法には、道路運送車両法の規定に基づく「道路運送車両の保安基準」に適合しないために交通の危険を生じさせたり、他人に迷惑を及ぼすおそれがある車両(整備不良車両)を運転させたり、運転したりすることを禁止する―という規定がありますが、「道路運送車両の保安基準」の一部改正(2020年4月1日施行)によって「自動運行装置」が保安基準の対象になったことに伴い、道路交通法上、自動運行装置にかかわる整備不良車両を運転することや運転させることも禁止されることになり、その罰則等が以下の通りに定められました。
★また、警察官は、道路交通法の規定により、整備不良車両と認められる車が運転されているときは、(1)その車両を停止させる、(2)車検証などの書類の提示をドライバーに求める、(3)車両の装置について検査をする―といった措置をとることができますが、今回の改正により、自動運転車については、「作動状態記録装置」により記録された記録データを提示するようドライバーに求める―という措置をとることもできるようになりました。
★なお、「作動状態記録装置」の記録データの提示を求めるにあたって、警察官は、その記録データを判読するために必要な措置を自動車メーカーなどの関係者に求めることができる―という規定も併せて定められました。
※警察官は、従来から、整備不良車両に対し、必要な応急措置を命じることができ、応急措置によっては必要な整備ができない車両(故障車両)については、運転を継続してはならないことを命じることができます。(ドライバーが命令に従わなかった場合の罰則は「3月以下の懲役または5万円以下の罰金)
(2020年3月31日)
A4判 40ページ カラー ●平成21年6月施行分から最新施行分までの道路交通法一部改正の要点について、わかりやすく丁寧にまとめた冊子です。イラストや写真等を豊富に使用し、詳細な説明が必要な部分には注釈を添えるなど、誰もがしっかり理解できるよう工夫しました。 ●また、参考資料として、「近年の主な道交法施行令等一部改正の要点」、特別企画として、「人身交通事故の処罰規定の変遷」と「飲酒運転の罰則等の変遷」を掲載しました。 |