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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2019年9月20日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その159 点検について
交通リスクコンサルタント 小林 實

故障しない車

 テレビで大雨のニュースを見ていますと、かなりのスピードで水たまりに突っ込み、派手に水しぶきを上げて走る勇ましいクルマの姿が映しだされます。われわれのような昔のクルマを知っている世代のドライバーからすれば、これがとても異常に見えるのです。昔だったら台風や大雨の際に、エンジンルームに水が入りはしないか…と、恐る恐る水たまりを進むのが常識でしたが、クルマの電気系統の防水が進化したせいでしょうか、それともドライバーが大胆になった結果なのでしょうか。
 「車検」という言葉はもちろんご存じでしょうが、これは、政府が行う「自動車検査登録制度」のことで、例えば、乗用車を所有している人の場合、登録の3年後と、その後2年ごとに安全及び環境の二つの基準に適合しているか―を検査することが義務付けられています。また、自動車の保守管理責任として、「法定点検」なるものも1年ごとに行う必要がありますが、多くの場合、車検と同時に法定点検も行い、これに自賠責保険の更新も伴いますから、車検費用は高い…という印象が強いかもしれません。
 そうしたこともあり、車検制度にはかなり異論の声があるのも事実です。というのも、この制度ができたのが1951年と、今から70年近くも前のことであり、当時走っていたクルマに比べ、現在のクルマは大きく進化しており、故障率も極めて低くなっていることから、もっと簡素にしてもいいのでは…というわけです。
 今のクルマといえば、ハイテクの塊のようなもので、どこか悪いところがあると部品ごと取り替えてしまい、修理という概念すら失われつつあります。クルマのボンネットを開ければほとんど触れるところはありませんし、むしろ「いじらないでください」といった感じです。かつては、エンジンの状態を、手で触れたり、音を聴いたりすることによって体感できたものですが、今ではこうした機械類がブラックボックス化して、ある意味、われわれ人間にとって冷たい存在ともなっています。

意外に多い路上トラブル

 そうはいっても、路上でのクルマのトラブルは結構あるようで、JAFロードサービスの出動回数は、全国で月間16万件以上にものぼるということです。最近の主なトラブルとしては、過放電によるバッテリー上がり、タイヤのパンク、キーの閉じ込みなどがあります。
 バッテリー上がりの原因としては、近年の暑さでエアコンを頻繁に使用することや、ハッチバックの後部ドアが完全に閉まっていなかったことに気づかなかったことなどが挙げられます。また、普段はトランクにしまっているスペアタイヤをいざ使う際、意外と空気圧が不足していることも知っておくべきでしょう。

五感で確かめる点検

 大型トラックのドライバーが、頭の部分が小さく柄の長い「点検ハンマー」というものを使って、タイヤの空気圧やボルトナットの締め具合をチェックする光景を見た方もあるかと思います。これは、タイヤの脱落が、ほかのクルマを事故に巻き込む重大な原因になるからです。
 ホイールナットの下側に指を添え、ハンマーでホイールナットの上側を叩き、その音の具合からホイールナットとボルトの締め具合を判断するわけですが、最近では、こうしたチェック方法を知らない若いトラックドライバーも結構多いと聞いています。しかし、こうした人間の感性による故障の予防方法は、いまだに有効なのです。

人の点検

 クルマのハード面での点検とともに欠かせないのは、これを運転する「人」の点検です。体調がすぐれない、日ごろから疲労がたまっている…といったドライバーの健康状態は、その日の運転に大きく影響します。こうした体調の気がかりな点が、どうしても安全運転を阻害します。安全管理者にとって、こうした人の「故障」を事前に察知し、その日の乗車を避けるなどの対策を講じる必要があります。
 また、最近多発している高齢ドライバーによる暴走事故は、ご家庭でも大きな関心事かと思いますが、ご本人の突然の体調変化というものがその引き金になっていることを認識され、運転を控えさせるために家族による監視や説得も欠かせない点検項目といえるでしょう。

企業での日常点検

 クルマがあまり故障をしなくなると、乗るほうも点検に配慮しなくなります。しかし、日常の業務で車を使う企業にとって、日常点検をないがしろにすることは危険です。これら企業の事業用車には、「運行前点検」といって一日一回運行前に日常点検が義務付けられています。日常点検の目的とは、故障個所をチェックすることでなく、あくまでもその芽を摘むことにあります。
 ボンネットを開けてエンジンルームを見るときは、例えば、ウインドウォッシャーや冷却水の液量が十分かどうか、できればオイルチェックも行うなど、目視によるチェックが大切です。夏場はエアコンを使う頻度が高いので、バッテリー液の点検も重要です。
 また、外回りでは、タイヤの空気圧チェックがあります。ことに夏場は外気温が高く、長時間の高速走行の際などはバーストの危険もありますので、目視でしっかりチェックすることです。
 クルマが故障しにくくなったということは、人間の持つべき警戒心が低くなっているということでもあり、点検という監視を怠ることにつながります。そして、ラスムッセンのいう「知識ベース」、つまり、聞いたことはあるが経験したことはない事態に直面した際、とっさの正しい行動が阻害されることになります。
 登山家としても有名な西堀栄三郎氏は、「品質管理法」を我が国へ導入され、デミング賞も受賞された方ですが、いみじくもこう述べられています。「人にとってもっとも恐ろしいのは、惰性で日を送ることである。向上心があれば飽きることはない。仕事や生活の中に、向上の道を残さねばならない」と。これは、現代を生活するわれわれにとって心すべき言葉でしょう。

(2019年8月)

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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