• 会社概要
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ
  • よくあるご質問
  • 見積もり・お問い合わせ

SIGNAL 有限会社 シグナル

営業のご案内
  • 新商品のご案内
  • 商品一覧
  • 普及版 道路交通法冊子
  • 企業の交通事故防止にこの1冊
  • 危険予知トレーニング教材など(サンプル動画あり)
  • 交通安全講習講師の派遣

悪質商法や詐欺から消費者を守る啓発資料はこちら

お知らせ
2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2019年10月18日

買い物カゴの確認・お会計

  • ホーム>
  • 交通安全時評>
  • 安全運転管理あれこれ記
  • 【第158回】

交通安全時評

バックナンバーはこちら

安全運転管理 あれこれ記 その158 事故分析の限界
交通リスクコンサルタント 小林 實

 「道路交通取締法」から始まる

 ご存知のように、昭和45年(1970)は、我が国の交通事故による年間の死者数が16,765 人と史上最多を示した年です。それより11年前の昭和34年(1959)に初めて年間1万人を超えてから、毎年1,000人単位で死者が激増していた時代でした。マスコミは、日清戦争で2年間に戦死した約17,000人に匹敵するとして、この事態を「交通戦争」と称して大きくアピールしました。車の保有台数を見ても、昭和33年(1958)の230万台から昭和45年(1970)の1,860万台と、わずか10年ちょっとで実に8倍にも膨れあがったという状況で、街には車があふれ、ダンプカーが我が物顔に爆走し、あちこちで渋滞が発生していました。
 終戦直後の昭和22年(1947)、進駐してきた連合軍(とはいってもアメリカ軍がほとんどでしたが)からの指示で、「道路交通取締法」という法律が制定されました。何しろ、彼らの目からすれば、戦後間もない日本の道路交通はどうしようもない状況に見えたのでしょう。ともかくアメリカをお手本にということで、各州の統一規範である「統一車両法典」を参考として作られた、いわばお仕着せの極めてシンプルな構成のものでした。道路交通取締法発効時の署名には「総理大臣 片山哲」とあり、当時が社会党政権であったことがわかります。
 戦後の駐留軍の指導により、交通行政のうち、クルマに関しては当時の運輸省が車検も含め所管し、人に関する部分は警察にゆだねられていましたが、当時、日本の交通警察の体制は物資の輸送確保に精いっぱいであり、とても事故の防止や交通の指導などには手がまわらない状況でした。というよりも、当時はまだクルマ優先の発想が強く、歩行者の存在は、ある意味で無視されていたといってもよい状況でした。道路交通取締法という名前が示すように、取り締まりに主体が置かれており、ソフト面への対応にはなかなか手がまわり切らなかった時代でした。

「道交法」の成立

 私たちが目にする道路交通法(通称、道交法)は、まさにこうした交通混乱の時代を背景に、昭和35年(1960)に成立しました。この法律の骨子は、国民の安全を守る生活規範たるべき―ということで、「安全」と「円滑」とが大きなターゲットになったわけです。「円滑」というのは車をスムースに流すためのノウハウであり、まずは「歩車分離」の対策が大いに功を奏しました。なにしろ歩道もない、横断歩道のマーキングすら十分でない状況からスタートしましたから、交通弱者の保護には一定の効果をあげました。
 また、人々がルールを守った方が得策であることに気づき始め、これを守るようになってきたことも大きなプラス材料となりました。例えば、交差点で渋滞が発生しますと、我も我もと先を争ってクルマが交差点に進入する始末で、クルマが全く動きの取れない「チョーキング現象」がしばしば発生していましたが、次第に、交差点に突っ込まないで交差点手前で待つ習慣ができるようになってきたのです。また、車両同士が合流する際には、自分の方が先と、無理やり突っ込むのではなく、「織り込み」といって交互に譲り合うという行為も定着してきました。
 昭和40年(1965)には、「広域交通制御」と称し、コンピュータの導入により交通量に見合った信号現示などが都市部において進められ、交通のスムースな流れが確保されるようにもなりました。また、昭和45年(1970)には「交通安全対策基本法」という法律ができ、いよいよ長期的な事故抑止策というものが始まります。

解剖なき医学

 かくして、我が国の交通事故の年間死者数は年々減少を示し、昭和54年(1979)には8,400人台まで減りましたが、それより再び上昇に転じます。高度成長時代を迎え、クルマが増え続けるのに対し、道路や安全施設の整備が間に合わなくなってきたというわけで、ここから「第二次交通戦争時代」へと突入していきます。
 当時、交通工学研究者で東京大学教授の越正毅氏(故人)は、この第二次交通戦争といわれた当時の日本の交通安全対策を、「解剖なき医学」と同じではないかと評されました。ろくに中身を調べもしないで(解剖もしないで)対処しようとするのは、杉田玄白以前の医術ではないか―という比喩なのでしょう。
 ご存知のように、杉田玄白(1733?1817)は中津藩の前野良沢らと苦労してオランダの解剖書を翻訳し、「解体新書」を出版しましたが、これは、それまで漢方に頼る東洋医学しかなかった日本に近代医学をもたらした画期的な資料だといわれています。彼は、江戸小塚原の刑場で罪人の「腑わけ」を目の当たりにした折に、オランダの解剖書と照合してその正確さに驚嘆したということです。
 このことは、真の原因を突き止めることの重要性を指摘したものとして言い伝えられていますが、越氏は、今や我が国は交通事故という難病にかかっている―という厳しい指摘をされました。その根拠は、過去20年間に徹底的な交通安全対策を進めたドイツ(当時の西ドイツ)での死者半減という成功例にありました。つまり、ドイツで発生した膨大な交通事故の徹底的な調査と分析が、死者半減に大きく寄与した―というのです(「日本・死者急増」日本放送出版協会編より)。
 第二次交通戦争当時の行政は、交通事故の原因追究まで手が回らず、言い換えれば手術をしないまま、いわば即効性のある投薬により、その場しのぎの対策をやっていました。つまり、病気を完治させるに至らなければ、同じような病気(この場合は事故)は再発する―というわけです。

事故の原因追究の限界

 そうした反省を踏まえ、その後、「交通事故総合分析センター」が設置されるなどして、事故の解剖が進み、その原因が徐々に明らかになってきました。それにより、衝突時の被害軽減のためにシートベルトの着用が義務化され、エアーバッグが開発されるなどして、乗車中の被害の軽減は大きく進みました。
 しかしながら、人的な要因が主役である交通事故の真の原因追究においては、「人間」というブラックボックスの存在が一つの弊害となります。つまり、解剖しても真の原因にはなかなか到達しない面があるのです。多発する追突事故などはその例でしょう。
 警察の事故統計に出てくる追突事故の主な原因は「前方不注視」、「脇見運転」といったものになりますが、なぜ「前方に注視していなかったのか」、「脇見をしたのか」という心理的プロセスは見えないままなので、結果として「車間距離を十分とる」とか「脇見をしない」といった程度の教育や指導、つまり対症療法的になりがちであり、なかなか根本的に治療できない…という、いわば限界を抱えているわけです。
 こうした中で、クルマの自動化というものが着々と進んでいますが、例えば、周囲のすべての情報処理を人間に代わって機械すなわちAI(人工知能)が行うようになれば、事故分析の手法そのものも大きく様変わりするかもしれません。

(2019年7月)

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

ページトップ

最新の「安全運転管理あれこれ記」へ戻る

バックナンバー

第159回
点検について
第158回
事故分析の限界
第157回
「人動車」という発想
第156回
教科で教える
第155回
平成の総括 その3
第154回
平成の総括 その2
第153回
平成の総括 その1
第152回
0.5秒の持つ重み
第151回
老いの初心
第150回
2030年の交通社会
第149回
異常をどう検出するか
第148回
ラスムッセンのSRK理論
第147回
JR西日本の「考動計画」
第146回
運転教育とコーチング
第145回
コーチングについて
第144回
かくれんぼができない子供たち
第143回
これからの安全管理
第142回
「駐車場」というワナ
第141回
脅かされる歩行者空間
第140回
台車事故を考える
第139回
「注意」の落とし穴
第138回
デイサービスと安全管理
第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

ホームへ戻る