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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年12月7日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その150 2030年の交通社会
交通リスクコンサルタント 小林 實

AIが革新的に進化

 「平成」という時代が、その30年の幕を閉じようとしています。この30年はどんな時代だったでしょうか。何かあっという間に過ぎた感じでしたが、あと10年ちょっとで今度は「2030年」という一つの節目を迎えます。というのも、このころに世の中の動きが大きく変わるだろう…ということが予想されるからです。
 2027年には品川と名古屋の間を結ぶリニア中央新幹線が開通して、さらなるスピードアップが現実となり、人の移動に大きな変化がみられるでしょう。道路の方も、新東名高速道路が一足先に全線開通しているはずです。
 車の自動化も進むでしょうが、それはせいぜい運転支援装置の高度化にとどまり、自動運転そのものは実現がかなり限定されたものにとどまる可能性が高く、交通社会そのものに大きな変化をもたらすほどではない…という意見も多いようです。しかし、AI(人工知能)というものは、現場で学習を積むことによって「ディープラーニング」し、さらに精度を上げていくわけですから、いろいろなところに影響が出てくるのではないでしょうか。
 2030年ごろにはAIの成熟度が上がり、見えないところで人間に近い機能を備えるようになり、いよいよ人間とAIとの共存が問われてくることでしょう。そして、これはまだ先のことですが、2045年には「シンギュラリテイ」、つまり、AIが人間を追い越す「技術的特異点」に到達すると予想されています。

人手不足が深刻化

 今から数年後の2022年ごろからは、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者へと移行し始めます。このため、さらなる急激な少子高齢化時代を迎えることになり、労働人口の大幅な不足、それに伴う財政の急激な悪化などが今から予想されます。最近の調査によりますと、2020年に384万人、2030年には644万人の人出不足が見込まれており、ことにサービス業、医療福祉関連などで厳しくなるようです。このため、政府は今後5年間で外国人労働者の受け入れを最大34万人見込んでいる―という報道もあります。
 ところで、物流にはどのような変化が起こるでしょうか。ドライバーをはじめとする運転関連の人手不足も、おそらく外国人労働者でカバーしようとするでしょう。現在でもちらほら外国人のトラックドライバーを見かけますが、今後、タクシーなどの分野にも参入してくるはずです。フォークリフトによる運搬作業はおそらく無人化が進むでしょうが、クレーン作業などには外国人労働者が多く見られるようになるでしょう。
 我が国の運転免許制度では、外国免許からの切り替えが難しく、国際免許も一時的にしか有効ではないので、日本で新たに免許を取得しようとする外国人が急増するでしょうから、これへの行政的な対応も必要となってきます。

無人配達や隊列走行の実現

 物流の自動化でいえば、現在、ヤマト運輸が「ロボネコヤマト」と称するプロジェクトをDeNAと共同開発中です。これは、「ラストワンマイル(お客へ商品を届ける物流の最後の区間のこと)のオンデマンド」と称し、自動運転車の車内に設けた宅配ロッカーと顧客のスマートフォンにより、ドライバーレスで顧客に商品を届ける―というもので、これはすでに実用化の域に達しつつあるようです。
 また、ドローンによる輸送についても、日本郵便が近距離の書類輸送の実証実験に成功しています。今後、航空法や電波法の改正、総重量制限の解除により、小型貨物をドローンで地域拠点に運送することも小規模ながら行われるでしょう。すでにドローンは、災害時の被害状況の把握ですとかインフラの調査、ハイテク農業など、活用の分野がかなり広まっています。
 トラックの「隊列走行」も、新東名高速道路での実証実験がいよいよ始まります。これは、先頭のトラックを人間のドライバーが運転し、レーダーと通信によって、数台のトラックを自動追尾させるものです。走行中に発生する不測の事態に備えるため、実験では各トラックに監視員が乗るようですが、2030年までには新東名と名神に「隊列走行」用のレーンが設置され、実用化されていることでしょう。
 また、トラック自体の運転支援装置も、このころには前車を自動追尾し距離を一定に保つなどの「レベル2」程度が普及していると思われます。これによりドライバーの負担はかなり軽減されるでしょうが、あくまでも安全確保についてはドライバーの責任です。おそらく、モニター画面を運転中に監視する作業が増えますから、あまり気を抜いた運転は無理でしょう。
 ところで、あと10年たっても、街を走る自家用車のほとんどは「レベル0」、つまり、運転支援装置のない車が大半を占めているのではないでしょうか。したがって、「レベル1」や「レベル2」の車との錯綜が意外に多いかもしれません。例えば、法定速度を超えない自動運転車にいらいらした「レベル0」のドライバーが無理な追越しをかける…といった行為が多くなる可能性があります。運転支援装置が進化すれば大きな事故の件数は減るかもしれませんが、小さな事故はおそらく減らないでしょう。

これからの安全管理

 こうした自動化の波を受け、安全管理にも変化がみられるでしょう。管理者と各ドライバーとは端末で結ばれ、個別の指示に変わるため、今行われている朝礼のような形態はなくなる可能性もあります。AIが各人の健康状態を把握し、直接ドライバーに運行計画や安全運転を指示したり、ロボットが呼気検査などを受け持ったりするようになるかもしれません。
 すべての情報は各自の端末に送られ、情報の共有化は図られるものの、管理者と各ドライバーとの関係はかなり希薄になるかもしれません。トラックドライバーはよく一匹狼などといわれますが、横のつながりがますます希薄となり、いわゆる人間関係をどう構築していくか―は、これからの時代の大きな課題ではないでしょうか。
 また、自動化が進めば安全教育は不要になるのではないか…という声も聞かれますが、自動化というのはあくまでも限られた部分であり、少なくとも感情の動物である人間が不測の事態に対処することを要請されている以上、さらなる教育の高度化が必要でしょう。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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