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お知らせ
2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年11月8日

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交通安全時評

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今年(2016年)10月21日午前4時ごろ、秋田県由利本荘市の日本海東北自動車道で76歳の男性が運転する軽乗用車が国道(105号)から自動車道に入る際、誤ってかジャンクションの出口から逆走して本線片側1車線に進入して大型トラックと正面衝突し、軽乗用車の運転者と同乗者男性82歳とその妻79歳)の計3人が死亡するという事故が発生。ちなみに、10月22日付の毎日新聞の記事では、「付近の住民によると、このジャンクションについて以前から通行方法が分かりにくいという声が出ていた」という。

同10月28日午前8時5分ごろ、横浜市港南区の市道
車道幅約3.5mの一方通行路で87歳の男性が運転する軽トラックが、バス停で客の乗降のため停止したバスの後方で一時停止していた軽乗用車に追突して乗っていた2人を負傷させた後、横転しながら路側帯幅90cmほどで路面が緑色に塗装されていた)を集団登校中の小学生9人の列に突っ込み、小学1年生の男子児童を死亡させたほか児童4人を負傷させるという事故が発生。事故を起こした軽トラックの運転者は、前日27日の朝、「ごみを捨てる」と家族に告げて自宅を出た後、帰宅しておらず、逮捕前の事情聴取で「どこをどう走って現場に)きたのか覚えていない」などと話しており、その後の捜査でも、事故前日に自宅を出てから横浜市内や東京都内の首都高や湾岸道など複数の出入り口で乗り降りを繰り返していることが判明しているが、3年前の2013年11月の免許更新時の「認知機能検査」では「異常なし」とされ、免許を更新されていたという。

同11月10日午後2時5分ごろ、栃木県下野市内にある自治医科大学付属病院の敷地内で、治療を終えて帰宅する途中の84歳の男性が運転する乗用車が病院正面玄関脇のバス停に突っ込み、ベンチに座っていた女性
89歳をはねた後、通路に乗り上げて鉄柱と壁に衝突して止まったが、はねられた女性は頭を強打しまもなく死亡、通路を歩いていて突っ込んできた乗用車を避けようとして転倒した女性2人も重軽傷を負うという事故が発生。現場にブレーキやスリップ痕はなく、運転者は「病院の駐車場を出る際、駐車料精算機に手が届かず、アクセルとブレーキを踏み間違えて急発進してしまった」などと話しているという。なお、同運転者には認知症等の症状はないという。

同11月12日午後3時ごろ、東京・立川市内の国立病院機構災害医療センターの敷地内で83歳の女性が運転する乗用車が駐車料金所の開閉式のバーを折って暴走直進し、車道と植え込みを突っ切って歩道に乗り上げ、歩道を通行していた30代の男女2人がはねられて致命傷を負い、まもなく死亡、運転者も頭を打って入院するという事故が発生。運転者は「ブレーキを踏んだが止まらなかった」と話しているが、警察では、現場にブレーキ痕はなく、車の運転席側の窓が開き、運転席に小銭が散らばっていたことから、駐車料金を投入する際、誤ってアクセルを踏み込んで暴走した可能性があるとみている。また、事故を起こした運転者は同病院に入院中の夫が危篤状態になったため、前日
11日は徹夜で看病し、12日午前中に夫の着替えを取りに帰宅し、再度、来院して帰る際だったという。また、当運転者は以前、ほとんど運転しておらず、夫の入院後、病院に通うため運転するようになったが、今年5月の免許更新時の「認知機能検査」でも問題はなかったという。

以上、今年
2016年)10月から11月にかけて全国で発生した75歳以上の、いわゆる「後期高齢ドライバー」が第一当事者になった主な死亡事故の発生概要等を唐突に紹介しました。というのも、こうした高齢ドライバーによる死亡事故の続発を受けて、安倍晋三首相は11月15日に「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」を開催し、「取り得る対策を早急に講じ、喫緊の課題に一丸となって取り組んでほしい」と指示したことが新聞等のメディアで報じられましたので、今回の「雑記」では「続発する後期高齢運転者による事故」とその安全対策に関し、過去にも何度か同様のテーマを取り上げてきましたが、改めて高齢ドライバーによる事故の発生実態やその安全対策の課題等について考えてみようと思ったからです。まず、新聞等のメディアで報じられた「関係閣僚会議」での首相のコメント・発言は断片的な概要にすぎませんので、「首相官邸ホームページ」に載っている「関係閣僚会議」での首相発言の全文、とはいっても、さほどの長文ではありませんので、まず、それを紹介してみましょう。

「先月
10月28日、横浜市で発生した、小学生男児の交通死亡事故を始め、このところ、80歳以上の高齢運転者による死亡事故が、相次いで発生しております。亡くなられた方々の御冥福をお祈り申し上げますとともに、御遺族の方々に心よりお見舞い申し上げます。このような大変痛ましい事故を防止するため、政府では、これまでの高齢運転者対策に加え、来年3月、認知症のおそれがある高齢運転者に医師の診断を義務付けるなど、認知症対策を強化した改正道路交通法を施行することとしています。まずは、その円滑な施行に万全を期すとともに、自動車の運転に不安を感じる高齢者の移動手段の確保など、社会全体で高齢運転者の生活を支える体制の整備を着実に進めてまいります。同時に、今後、高齢運転者の一層の増加が見込まれることから、政府としては、一連の事故を80歳以上の方々が引き起こしたことを踏まえ、更なる対策の必要性について、専門家の意見を聞きながら、検討を進めてまいります。各位にあっては、改正法の施行に万全を期すとともに、取り得る対策を早急に講じるなど、この喫緊の課題に一丸となって取り組むよう指示いたします。」以上が、11月15日に開催された「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」の冒頭の挨拶で安倍首相が述べた発言の全文、とのことですが、これを受けた関係閣僚からどのような反応・発言があり、どのような議論等が行われたのかは、新聞等メディアの報道にはもちろん、「首相官邸ホームページ」でも報じられていません。

したがって、今後、この安倍首相の指示を受けた関係閣僚の管轄下の省庁で、果たしてその具体化・政策化に向けてどのような動きがみられるのか、特に新聞等メディア関係者は大いに注目し、その動き等を掌握し、逐次・詳細に報道するとともに的確な論評を加えていくことを期待したいものです。もしかしたら、今度の安倍首相の指示は、世論向けの単なる政治的看板・場当たり的なパフォーマンスにすぎないのではないか、という懸念もありますので、その点を見極める視点も忘れないでほしいと願うものです。というのも、そもそも、この度は、たまたま、80歳以上の高齢ドライバーによる痛ましい死亡事故が相次ぎましたが、少子高齢化に伴う高齢ドライバーの急増とその事故の増加という懸念は急に噴出した問題ではなく、少なくとも20年以上も前から懸念されていた課題で、1996年
平成8年を初年度とする第6次の「交通安全基本計画」の「講じようとする施策」の「3、安全運転の確保」の項には「高齢運転者対策の充実」が掲げられています。にもかかわらず、20年も経た今日、いまさらのごとく、「喫緊の課題」だと表し、「一丸となっての取組み」を指示したということは、これまでの20年ほどの間は、さしたる取組みが為されてこなかったか、少なくとも効果的な対策が講じられてこなかったことの証左でもあるといえますし、よって、今回の「指示」も、看板倒れ・場当たり的なパフォーマンスに終わる可能性の懸念が拭えないと思うからです。

懸念の第一は、来年3月には、認知症のおそれがある75歳以上の高齢運転者に医師の診断を義務付ける道路交通法の一部改正が施行され、「認知症」と診断されれば、運転免許の「停止」か「取り消し」が行われることになりますが、11月15日、日本老年精神学会は、「認知症を引き起こす病気は複数あり、運転能力への影響もわかっていないことが多い」
したがって)、「認知症を一律に運転の制限対象とするのではなく、個人の能力を適切に評価して判断するよう求める提言」を発表し、同日、警察庁や厚生労働省などに発送した(2016.11.16朝日新聞、アンダーライン部は「雑記子」による)ということにもみられるように、来年3月施行の「認知症対策の強化(臨時認知機能検査等)」には、そもそもの疑念があることです。この「認知症対策の強化」の導入を図る道路交通法の一部改正案が公表された際(2015年1月、精神科医ら約1万6千人でつくる公益社団法人・日本精神神経学会は、「認知症と危険な運転との因果関係は明らかではなく、この道路交通法改正は拙速だ」とする意見書を警察庁に提出しました(2月3日付。このことは当時2015年2月25日付のこの「雑記」でも詳細に紹介しましたが、極めて重大な「意見書」であり、より多くの方々に知ってもらいたいと思いますので、敢えて再度、その大部分を紹介してみましょう。

すなわち、当学会は、「私たちも交通事故の減少を望む」としたうえで、「欠格とされているのは介護保険法に規定する認知症であり、医学的な意味での認知症全般を指すわけではありません。
警察庁の改正試案では、その混同をあえてしており、用語の使用法という観点からしても不適切」、「認知症の診断は短期記憶の障害を重視していますが、記憶障害それ自体が運転に与える影響は小さい」、また、「医師はその疑いの者も含めて病気と診断する傾向があり、これも健康維持という観点からすれば妥当なことですが、運転能力が残されているにも関わらずそれが制限されてしまう者を生じさせる可能性がきわめて大きく、診断場面や検査で適切な方法が現在存在しない以上、安易な診断書作成には協力できない」、さらに、「平成25年中の認知機能検査で認知症のおそれがあると診断された者は34,716人という多数に及ぶことが明らかにされているが、こうした多数の者を診察する医師をどのように確保するのか、その方策が全く示されていない。また、その診察の際の費用負担のあり方が明らかでなく、数万円以上に及ぶと思われる費用を本人が望まない診察において、その負担を強いることが適切か」、「運転を奪うことによる生活障害への補償がない」、「真に重症の認知症の高齢者は、免許がなくなったことすら失念して運転することもあり、その際の事故の損害賠償は家族に及ぶことがあり、家族の救済にもならない」、したがって、「道路交通法の改正より前になすべきことがたくさんあり、今回の改正は見送り、当事者(家族団体、医療関係団体、関係学会、司法関係者、有識者で構成される検討会を開催し、十分な検討を行うことを強く望む」というのが公益社団法人・日本精神神経学会が提出した「意見書」の大綱ですが、こうした専門家集団の科学的知見に基づく貴重な提言にも関わらず、それを無視するようにして国会に上程され、「認知症」について専門的な知識を持たない、いわば「素人集団」の国会議員によって可決・成立したのが、来年3月に施行される「認知症対策の強化(臨時認知機能検査等」なのですから、これが「認知症」が疑われる高齢運転者の安全運転、事故防止に本当に役立つことになるのか、はなはだ疑問であると思わざるを得ないのも当然でしょう。せめて、先にも紹介した日本老年精神学会の提言、すなわち、「認知症を引き起こす病気は複数あり、運転能力への影響もわかっていないことが多い。認知症を一律に運転の制限対象とするのではなく、個人の能力を適切に評価して判断するよう求める」という提言に十分に配慮し、改正法に基づく新制度の実施、運用にあたってほしいと願うばかりですが、この新制度には、先に紹介した日本精神神経学会の「意見書」にも明記されているように、診断する専門医の不足や診察料の負担等々、問題が山積みされているほか、相次いで発生した高齢ドライバーによる死亡事故の原因等が、少なくとも、メディアの報道を見る限り、まだ未解明の状態であり、「認知症」とのかかわりも不確かな状態のままでの新制度の導入ですから、この一部改正が、果たして、高齢運転者の事故防止にどれだけ役立つのかという疑問は拭えません。

にもかかわらず、拙速に新制度
臨時認知機能検査等の導入・実施に踏み切ったのは、高齢ドライバー、特に「認知機能検査」が免許更新時に義務化されている75歳以上の、いわゆる「後期高齢運転者」による交通事故増加ということがその根幹的要因になっているのだと思いますので、その実態を、公益財団法人・交通事故総合分析センターから入手した基礎データを基に改めて確認しておくことにします。まず、交通事故統計上、「高齢運転者」とされている65歳以上のドライバーが自動車・原動機付自転車の運転者として第一当事者または第二当事者になった人身交通事故以下、人身を略すの過去10年間全国の推移をみてみると、10年前の2006年には145,544件、そして2015年には144,860件となっており、この間多少の増減はありますが、ほぼ「横ばい」で推移しているというのが実情です。また、死亡事故に限ってみると、2006年には1,288件、そして2015年には1,225件、10年間の推移としてはわずかながらではありますが減少の傾向をたどっています。したがって、「高齢運転者の交通事故が年々増加している」と思い込んでいる人も少なくないと思いますが、それは、明らかに間違った思い込みであるということを確認しておきます。ただ、そうした間違った思い込みが生じているのは、交通事故や死亡事故が全体として年々減少の傾向をたどっているため、高齢運転者による事故の割合が増加傾向にあり、それを強調する報道等の影響を受けて「高齢運転者の事故が増加している」との思い違いが生じているのだと思いますので、そうした思い違いが生じ得るような報道の仕方は厳に謹んでもらわなければなりません。また、その点では、11月15日に開催された「高齢運転者による交通事故防止対策に関する関係閣僚会議」も、「高齢運転者による事故の増加を受けて・・・」と誤解されかねない会議名ですが、安倍首相が「喫緊の課題」として「関係閣僚が一丸となって取り組んでほしい」と指示したのは、先にも紹介しましたが、「80歳以上の高齢運転者による死亡事故が相次いで発生した」ことを受けてのことです。そこで、65歳以上の「高齢運転者」による事故全体ではなく、「認知機能検査」や「臨時認知機能検査」の対象となる75歳以上の「後期高齢運転者」が第一当事者または第二当事者になった事故に限って過去10年間の発生状況の推移等をみてみると、確かに年々増加の傾向をたどっています。

公益財団法人・交通事故総合分析センターから入手した基礎データを基に検証してみると、10年前の2006年、全国では75歳以上の「後期高齢運転者」が第一当事者または第二当事者になった交通事故の発生件数は36,900件余でしたが、2015年には43,900件弱となっており、ほぼ毎年増加の傾向をたどり、10年前に比べ実数で6,900件余、指数で18.7ポイントも増加しています。死亡事故に限ってみても、10年前の2006年には505件でしたが、2015年には546件となっており、やはり、ほぼ毎年増加の傾向をたどっています。また、80歳以上の「高齢運転者」に限ってみると、2006年には215件で、75歳以上の「後期高齢運転者」による死亡事故の42%ほどを占めていましたが、2015年には307件に増加し、「後期高齢運転者」による死亡事故の56%をも占めるに至っています。ちなみに、「高齢運転者」数の推移、つまり、65歳以上の運転免許人口の推移をみておくと、10年前の2006年には1,038万人余で全免許保有者の13%ほどを占めていましたが、2015年には1,710万人余に増加し、全免許保有者の20%余、つまり、運転免許保有者の5人に1人が「高齢運転者」という状況になっています。また、この「高齢運転者」のうちの28%ほどが75歳以上の「後期高齢運転者」で、最近、問題視されている80歳以上の運転者だけに限ってみても、10年前に比べ2.3倍以上の196万人にもなっており、65歳以上の「高齢運転者」全体の中でも11%余を占めるに至り、ドライバー社会でも「超高齢化」が確実に進行している状況が確かめられます。

それだけに、安倍首相の指示を待つまでもなく、「高齢運転者」、なかでも、75歳以上や80歳以上の高齢ドライバーによる交通事故防止対策の実効性・有効性が大きく問われるわけですが、それには、むやみに「高齢運転者」の危険性やその運転による事故増加の懸念を訴え、運転免許の自主返納を求めたり、「認知症」が疑われる者を一律的に排除したりする、いわば、消極的対策に終始せず、生活維持のため、やむなく運転をせざるを得ない高齢運転者はもちろん、老後の人生充実化のために運転を継続したいと思っている大勢の高齢運転者が、実際の運転において安全を確保するための具体的な方策をこそ優先課題として取り組んでほしいと願うものです。そのためには、少なくとも、まず、近年、相次いで発生している「高齢運転者」による事故を多角的・科学的に検証し、真の原因や問題点を明確にすること、また、如何なる「認知症」が安全運転上の欠格事由となるのか等の基礎的研究の促進が必要不可欠です。真の原因や問題点の解明がなされないままでの対策は無駄を生み、対策推進当局(者)の単なるアリバイづくり、「免罪符」にすぎず、「高齢運転者」のための対策にはなり得ないと思うからにほかなりません。
(2016年12月21日)

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