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お知らせ
2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年9月25日

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  • 【第87回】

交通安全時評

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去る2月15日、新聞各紙、TV各社は、今年1月15日未明に長野県軽井沢町の国道18号「碓氷バイパス」入山峠付近で発生した、乗客乗員41人が乗っていたスキーツアーバスがセンターラインを越え、対向車線側のがけ下に転落、立ち木に激突し乗客の大学生13人と運転手と交代要員の計15人が死亡、乗客26人が重軽傷を負った事故から1カ月が経過したことを一斉に取り上げ、現場に遺族や関係者をはじめ多くの一般市民も訪れ、献花・合掌し、犠牲者の冥福を祈る模様や遺族・関係者らのコメントを伝えたほか、警察や行政による原因究明や再発防止の取組みの経緯等を報じました。これらの報道により、事故に至る経緯、事故原因等に関してこれまでに判明した主なことを以下に列挙してみます。

まず、このスキーツアーを企画募集し実施したのは旅行会社「キースツアー」(東京・渋谷区)で、ツアーに使用したバスは東京・羽村市にあるバス運行会社「イーエスピー」の貸切バスでした。株式会社イーエスピーは2008年に設立された会社ですが、設立当初は警備業務が中心の会社で、バス事業には2年ほど前の2014年4月に国土交通省の事業許可を得て参入した新参会社で、保有車両数は事業許可時で12台の小規模な貸切バス事業者であり、昨年2015年2月に実施された「一般監査」では、(1)運転者の健康状態の把握が不適切、(2)点呼の実施及び実施結果の記録が不適切、(3)運転者に対する適性診断を実施していない、といった違法管理状態が判明し、同年10月30日期限の弁明の機会を付与しましたが(弁明書10月27日提出)、結局、今年2016年1月13日に「車両の使用停止処分」(1車両20日間・1月15日から2月3日)を受け、3月15日以降に「フォローアップ監査」の実施が予定されていた直後の事故でした。

また、道路運送法では、走行距離と走行時間をベースにして旅行会社がバス会社に支払う貸切バスの基準運賃の下限を定めていますが、それによると、今回のバスツアーの基準運賃の下限は約27万円になるとのことですが、それを大きく下回る約19万円で受注していました。観光庁等の調べによると、旅行会社「キースツアー」は貸切バスの手配をしている旅行会社「トラベルスタンドジャパン」(東京・千代田区)にバスの確保を依頼し、トラベル社が「イーエスピー」に頼んだということですが、トラベル社によると、「昨年末に、キースツアーから『今年は雪が少なくてお客が少ない。値段を安くしないと、お客が来ない。当面は低い値段でやってくれないか。お客が来たら運賃を上げる』と言われた」ので、「イーエスピー」に、道路運送法に定める基準値を下回る金額でツアーを依頼した結果、「イーエスピー」社が了承し受けたということです
(※1.17読売新聞朝刊参照)。なおまた、今回のツアーを企画した「キースツアー」のツアー料金は、1、2泊の宿泊費やリフト代を含めて1万3,000円から2万円程度で、別の旅行会社によると、「バス業界全体では安全意識が改善されており以前のような価格では商品を提供できなくなった。うちのツアーは東京―上高地間の場合、バス料金だけで往復1万4,000円以上する。キ社の料金は非常に安い。かなりコストをカットしていたのではないか」と指摘しています。これに対し、キ社の福田万吉社長は報道陣の取材に「安全面を削ることは絶対にない」と話しています。都内のバス会社94社が加盟する東京バス協会は、運転手の睡眠時無呼吸症候群の検査費用や車両の安全装置について補助を設けるなど「ハード、ソフト両面から対策を進めてきた」(市橋千秋常務理事)としていますが、安全対策を周知するのは会員企業に対してだけで、今回事故を起こした「イーエスピー」社は非会員で、こうした対策も業界全体に浸透しているかは不透明だというのが実態のようです(※1.16毎日新聞朝刊参照)

ちなみに、バス業界が、いわゆる「格安ツアー」などで問題視されるようになったのは2000年から2002年(森喜朗内閣―小泉純一郎内閣)にかけて実施された「規制緩和」がそもそもの起因になっていると思われます。需給調整の観点から国の「免許制」だった貸切バス事業が、一定の要件を満たした事業者であれば誰もが参入できる「事業許可制」へと切り替えられ、貸切バス事業の新規参入が相次ぎ、「格安競争」が激化しだしたのです。特に、ツアー会社が企画し、貸切バス会社が運行するツアーバスは、乗合バスと違って運行計画を事前に国土交通省に届け出るなどの規制が少なく、過当競争を生んだ一方で安全性の問題が懸念されていました。そんななか、2007年2月、大阪府吹田市でツアーバスが運転手の居眠りが原因でモノレールの橋脚に衝突し、27人が死傷する事故が発生しました。この事故を受けて国交省は2008年6月、1人の運転手が運転できる1日の最大運転距離を670キロとする指針を定め、これを超える場合は交代運転手の配置を求めることとしました。しかし、2012年4月に、群馬県藤岡市の関越自動車道で運転手が眠気を感じながら運転を続けていたとされるツアーバスが自動車道の側壁に激突して45人が死傷する事故が発生し、またまたツアーバスの無理な運行状況がクローズアップされました。そこで、国交省は2012年から2013年にかけて、1日の走行距離の上限を昼間は原則500キロ、夜間は400キロに引き下げ、運行記録計を使った運行管理を義務づけたほか、運賃制度も改定し、基準運賃の下限と上限をともに引き上げました。この結果、バス会社の安全対策コストが上昇し、旅行会社がバス会社に支払う額も1.5倍ほどに膨らみ、こうしたコストをかけられない零細業者はかなり淘汰されたとみられていましたが、業界全体には徹底されず、むしろ、一層の格安料金で生き残ろうとするゲリラ的事業者が潜在化するという土壌を生んだことも否定できません。今回の事故は、奇しくもその実態を露呈したといえますが、次には、今回の事故について、これまでに判明している経緯を紹介しましょう。

ツアー客(その多くが大学生などの若者)39人を乗せ、「イーエスピー」社の65歳の契約社員の運転手と交代要員(57歳)の同社社員を乗せたツアーバスは1月14日午後11時ごろ東京・原宿を出発、練馬ICから関越自動車道に入り、関越道の上里SAで休憩した後、藤岡ICで関越道を降り、国道18号を走行し、同道の碓氷バイパスの入山峠付近で事故を起こしました。しかし、旅行会社が事前に作成していた行程表では、関越道の上里SAで休憩する予定はなく、その手前の東松山ICで関越道を降り、国道18号を走り、群馬県の松井田妙義ICから上信越自動車道を走行して長野県に入り、15日の午前8時ごろ斑尾のホテル前に到着する予定でした。行程表と異なるルートに変更するためには、運行管理者に連絡してその許可を得なければ道路運送法違反となりますが、「イーエスピー」はその連絡がなかったことを認めています。また、バス会社は発注元の旅行会社が要望する行程表を基に「運行指示書」を作り、運転手に手渡す必要がありますが、その「運行指示書」には出発地と目的地のみが記載されていただけだということも判明しています。しかし、運転手が無断でルート変更したのは、旅行会社「キースツアー」が作成していた行程表の要望ルートは承知していたとみられますが、その行程表のルートだと、混雑してバスを止めにくいSAがあるため乗客を休憩させやすい上里SAが使いやすく、また、上里SAで休憩し、その先の藤岡ICで関越道を降り、以後、上信越自動車道を利用せず、国道18号で目的地に向かうことによって高速料金を行程表に合わせることができる・・・と、今回、交代要員として乗務していた57歳の「イーエスピー」社の社員がかねてから他のドライバーにも推奨していたことによるとみられます。なおまた、道路運送法では乗務前に運転手に対し「点呼」を実施し、健康状態等をチェックしたり、安全運行上、必要な事項を指示・伝達したりすることが義務づけられていますが、「点呼」を行う予定であった高橋社長が遅刻したため実施しておらず、また、バスが目的地に到着し、運転手から業務終了の報告を受けた後に作成すべき「業務記録」には、既に運行管理者の押印があり、同社の運行管理が日常的にきわめてずさんに行われていたことも判明しています。

次に、事故に至る直前の運転行動・走行状態はどうであったか、それを紹介しましょう。不幸中の幸いともいうべきか、事故現場から約1キロ手前の入山峠頂上付近と事故現場直前の約250mの地点にも定点カメラが設置されていたため、事故を引き起こしたバスの走行状態が映像に残っていました。それによると、約1キロ手前の定点カメラの映像では、バスの走行に異常はみられませんが、その後、勾配度6.5%の緩やかなS字カーブの下り坂を走行、事故現場の約250m手前の定点カメラには、規制速度の時速50キロを超える80キロ程度の速度でセンターラインをはみ出し、S字の左カーブを車体を右に傾けながら走行し、右カーブに差し掛かり、左側ガードレールに接触したとみられるカーブ出口付近を通過した後、山陰に隠れていったという映像が記録されていました。その先の映像は映っていませんが、左側ガードレールに接触したはずみでか、走行方向のコントロールを失って対向車線にはみ出し、右側車輪のみの片輪走行となったのか、右側タイヤ痕を約40m残し、道路を逸脱、右側ガードレールを約10mにわたって押し倒して落差約3mの崖下に転落して横転し、立ち木に激突したものとみられています
(※1.21読売新聞朝刊、同・毎日新聞朝刊の記事参照)。なお、事故の現場検証によって回収された運行記録計に残された記録を解析した結果、転落現場でガードレールに衝突した時点での速度は時速96キロに達していたことが判明しています。そんなハイスピードで転落して立ち木に激突した結果、車室の天井が押しつぶされ車内空間が大きく消失したほか、車体右側の運転席や側面も激しく損傷大破、乗客の多くは車外に放り出され、バスの下敷きになった人も少なくなく、死亡者の大半は頭部や胸部に外傷があり、即死に近い状態だった、という悲惨な事故に至りました(※1.15北海道新聞夕刊参照)

なおまた、このバスは後輪駆動の6速のマニュアル車で、ブレーキはドラム式で、下り坂を走行中にフットブレーキを使いすぎると、ブレーキの利きが低下する「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起きる可能性があるため、下り坂ではギアを3速以下に落とし、エンジン回転の抵抗で速度を落とす「エンジンブレーキ」を利かせて走行するのが常識であり、また、バス等の大型車には排ガスの圧力を調整してエンジンブレーキの効果を高める「排気ブレーキ」も装備され、運転席にあるスイッチで作動させることができますが、「エンジンブレーキなどを使っていれば、定点カメラに映っていたような高速ではなく、もっとスピードは落ちたはず」(※1.21読売新聞夕刊)ですが、減速された様子は認められませんので、「排気ブレーキを作動させていないうえ、フットブレーキにも異常があり、減速できなかったのではないか」、または、「ハンドル操作だけでカーブを切り抜けようとしたのではないか」との見方もされています。しかし、事故現場直前の約250mの地点に設置されていた定点カメラに残っていた映像では、ブレーキランプは点灯し続けているように見えますし、ブレーキランプは、フットブレーキを踏んだときはもちろん、「排気ブレーキ」による減速中も点灯しますので、残された映像に見える尾を引いているような赤いランプの灯がブレーキランプのものであるとするならば、下り坂が始まる1キロ手前から250m手前までのわずかな距離でブレーキを多用したために「フェード現象」や「ベーパーロック現象」が起きたとは考えにくいので、フットブレーキでの減速が十分でなく、「排気ブレーキ」も何らか事情で十分に働かなかった、とも思われます。実際、長野県警の現場検証の結果では、ブレーキ部品に異常は見られず、整備不良も見つからなかったが、ギアはニュートラルの状態になっていた、ということですから、運転手がギアチェンジをする際に焦って誤りニュートラルに入れてしまったのではないかということも考えられますが、衝突時の衝撃によってニュートラルに入ってしまったということもあり得ますので、いつの時点でニュートラルになったのかはもちろん、下り坂から事故に至るまでの運転手の運転操作行動を、回収された運行記録計等の綿密な調査解析によって、できるだけ具体的に、また、科学的に明らかにしていくことが望まれます。

というのも、国土交通省は2月2日、今回のバス事故を引き起こした「イーエスピー」社に対し、貸切バス事業許可を取り消す処分案を通知したほか、バス事業者が運転手を採用する際、運転手が長年運転していない大きさのバスを運転させる場合、新たな講習を義務づける「指針改定」を行う方針を固めた(※2.1朝日新聞朝刊参照)ということですが、その講習の実効性を高めるためにも、今回の事故はもちろん、過去のバスによる重大事故等をしっかり検証し、どのような運転操作行動が事故原因になったのかを、科学的具体的に明らかにし、大型バスの運転者にはどのような運転技能等が必要不可欠になるのかをしっかり学び、新たな講習に具体的に反映していくことが必要だと思うからにほかなりません。ちなみに、国交省のこれまでの「指針」では、バス事業者が新たに運転手を採用した場合、原則として6時間の座学などを行うように定めていますが、過去3年以内に同じ事業を営む会社で運転手をしていた者についてはこの講習が免除されており、今回の軽井沢でのバス事故を引き起こし、死亡した65歳の運転手も大型二種免許を持ち、前職も貸切バス事業者の運転手だったため、この講習の対象外だった、ということを問題視した結果の改定というわけです。

確かに、今回の軽井沢でのバス事故を引き起こし、死亡した65歳の運転手の運転経歴等には、いくつかの問題点が認められます。1月17日の日本経済新聞などの記事によると、この65歳の運転手は昨年12月に「イーエスピー」社の契約社員として入社。本人は面談の際、「大型も何回も運転したことがあるから大丈夫」と話していたというが、前の職場では中型やマイクロバスを中心に運転しており、大型バスの運転経験は数回程度というのが実際だったようですが、「イーエスピー」社は前職場での運転歴等を確認せず、「一般道の運転はさせず、高速道路をやってもらおうと指示していた」と、経験を不安視していたことを明らかにしたといいます。大型バスを15年運転した経験がある運転手によると、「経験が浅いと、ブレーキをかけても重さでバスが減速せず、パニックになることもある。大型バスの運転経験が数回程度だったとすれば、実務に就くにはあまりにも少ない」と話しているとのことです。また、NHKの独自取材
(2.15、19時のNHKニュース)によると、昨年12月10日、前のバス会社に在籍中、任意の運転適性検査を受けており、その結果によると、同運転手は9つの検査項目のうち、状況変化への反応をみる「正確さ」や「速さ」などの4つの項目で、5段階で最も低い「1」と評価され、総合的な評価でも5段階で最低の「特に注意」と診断されていましたが、検査が任意で行われていたことや、直後に退社したことなどから、検査結果は会社や本人に手渡されていなかったということも判明しています。同運転手はその後、「イーエスピー」社に入社し、事業者に法令で義務づけられている適性検査を受けないままに乗務し、今回の事故を起こしたわけで、このことから国交省は全国のバス会社に検査の徹底を指示したということですが、あまりにも「泥縄」的すぎる対処のように思えてしょうがありません。

いずれにしても、今回のツアーバス事故は、運転手やバス会社に多大の問題があったゆえの事故であることは確かですが、それは「氷山の一角」にすぎず、貸切バス会社の過当競争、バス運転手の高齢化、国土交通省の監査態勢の不備、さらには「安全」を軽視した「規制緩和」など、奥深く、裾野の広い問題が潜在していることを見逃してはならないと思いますが、これらの潜在的問題点に比べればいみじくも、今回の事故で大学生の娘を亡くした父親が、その通夜後に、遺族としての深い悲しみなど私的な感情に耐え、冷静に読み上げたコメント、そして、自分のゼミの学生10人が乗車し、うち4人が死亡した法政大学教授で教育評論家の尾木直樹さんが事故の1カ月後、事故現場に足を運び合掌した後、朝日新聞の取材に応じて語ったコメントは、今回の事故の本質を鋭く的確に突く貴重な指摘だと感服しましたので、以下にそれを紹介しておきましょう。

本日、真理絵の通夜を無事に営むことが出来ました。本当に明るく、誰とでも仲良くできる自慢の娘でした。・・・略・・・。今回の事故については、憤りを禁じ得ませんが、多くの報道を見ていると、今の日本が抱える偏った労働力の不足や過度の利益追求、安全の軽視など、社会問題によって生じたひずみによって発生したように思えてなりません。今回の事故については、警察によって原因と責任の追及がなされ、また行政による旅行業者の問題点の洗い出しや改善が行われることを期待しておりますが、すぐに良くなるものではないと思っています。今日も多くの若者がバスツアーに出かけているでしょう。ぜひ自分の身は自分で守るということを考えてください。優先順位を間違えないこと。安全はマスト(Must)項目であり、費用削減はウォント(Want)項目であることを冷静に考えてほしいと思います。
(※以下、略。アンダーラインは雑記子による。阿部真理絵さんの父親のコメント)

バス会社の問題が次々と明るみに出たが、国土交通省も法令違反を得意げに発表している場合ではないと思う。規制緩和で貸切バス会社が増えたのに、国の監査は追いつかない。いずれ必ず起きる事故だったと思うんです。だから、法政大では、「事故」と誰も言わない。「事件」と言っています。一番感じるのは、日本社会が命を大事にしなくなっているのではないかということ。ハンドル一つに40人の命が乗っているという責任感が感じられないバス会社。誰が乗っていたか満足に説明できないツアー会社。それらを見逃してきた行政。競争原理で他社より一歩でも先んじようとする社会になってきている今、命を大事にする、ゆとりを持つ、という原点に戻る必要があるのではないでしょうか。
(※尾木直樹氏、2.16朝日新聞朝刊所載)

以上が、今回の事故の本質を鋭く的確に指摘した遺族・関係者のコメントですが、これをもって本稿の結びにしたいところではありますが、これら本質的問題点に比べれば、些細すぎることかもしれませんが、もし、この「きわめて偏向的で奇妙な規制」が是正され、バスにも適用されていれば、少なくとも、今回の事故をはじめとする近年の幾多のツアーバス事故の多くが回避されたのではないかと思っていることがあり、一般にはあまり知られていないことでもあると思いますので、敢えてそれをも紹介し、本稿を結ぶこととします。「きわめて偏向的で奇妙な規制」というのは、まず、第一には、高速自動車国道・自動車専用道路における大型自動車の最高速度制限です。同じ大型でありながら、バス(大型乗用自動車)は100キロで普通自動車と同様の最高速度が認められているのに、トラック等(大型貨物自動車、大型特殊自動車等)は80キロに制限されていることです。そして、第二には、1997年10月に、高速道路での大型自動車が絡む重大事故を防止するため、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラック等(大型貨物自動車、大型特殊自動車等、以下、同じ)は、「通行帯」が指定されている場合、その通行帯を通行しなければならない、という新たな規制が設けられましたが、大型バスはこの対象外となっていることです。またさらには、2003年9月に、車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上のトラック等には最高速度を自動的に90キロに制御する「スピードリミッター」の装備が義務づけられましたが、大型バスはこの規定も対象外になっています。確かに、大型トラックが絡む事故は、重大・悲惨な事故になることが少なくありませんが、数十人もの人命を乗せて走る大型バスの安全性が大型トラックよりも高いとはとても思えません。むしろ、大勢の人命を乗せる大型バスこそ、高速道路の最高速度を低減し、「指定通行帯」の通行、「スピードリミッター」の装備を義務づけるべきなのに、なぜ、除外したのか、その理由が、どう考えても理解できない「きわめて偏向的で奇妙な規制」だと「雑記子」は思い続けてきたのです。先に紹介した今回のバス事故の遺族・関係者の2人のコメントにもあるように、本質的問題点は、いくら指摘しても「すぐに良くなるものではない」と思いますが、この「きわめて偏向的で奇妙な規制」の是正は、関係者が、その気にさえなればすぐにでも実現可能なことのはずです。せめて、この「きわめて偏向的で奇妙な規制」を真摯に、かつ、早急に検討し、適正に是正してもらいたいと切に願っていることを記して本稿を結ぶことにします。
(2016年2月24日)

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道路交通法と道路運送車両法の整合性について考える・・
第54回
再び、「自転車の交通ルール」の不可解を考える・・・
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第50回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題 No.3
第49回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題 No.2
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