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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年9月25日

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交通安全時評

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例年4月上旬に実施される「春の全国交通安全運動」、今年はこの5月11日から20日までの10日間に期間変更して実施されました。ただし、この期間変更は、今回限りの特別なことではありません。「運動」関係者にとっては周知のことでしょうが、実は4年に1度、つまり3年間は4月上旬に実施され、4年目には5月に実施される―というサイクルで過去にも繰り返されていたことではありますが、なぜ、4年に1度、「春の全国交通安全運動」が5月に期間変更して行われるのか・・・、疑問に思う声を聴いたことがありませんし、5月実施の「春の全国交通安全運動」初日を伝えるテレビや新聞等のマスメディアでも、過去、長年にわたって繰り返された周知の事実ということのためなのか、その期間変更の理由まで報じたことは、少なくとも「雑記子」は見聞したことがありません。特に今年の「春の全国交通安全運動」については、その初日、NHK・TVの全国ニュースが各地で実施されたいくつかの啓発活動等を紹介してはいましたが、期間変更の理由はまったく報じられませんでしたし、新聞の全国紙に至っては「運動初日」を伝える記事すらありませんでした。長年にわたって繰り返されている周知の事実でニュース価値が少ない、ということかもしれませんが、そうしたマスコミ関係者の関心の希薄さもさることながら、そもそも圧倒的多数の一般市民が、春、秋にかかわらず、「全国交通安全運動」に積極的な関心を持っていない、というのがその唯一、最大の理由であり、それだけ「全国交通安全運動」が限られた関係者だけの惰性的恒例行事として形骸化している結果だ、とするのは酷すぎる評価でしょうか・・・。

念のため、4年に1度、「春の全国交通安全運動」が4月から5月に期間変更して実施されるのは、原則4年に1度のサイクルで、いわゆる「統一地方選挙」が4月に実施されることが、その理由です。つまり、原則4年に1度実施される「統一地方選挙」は、その地方自治体の職員等がその準備・開票作業等に手を取られ多忙を極める一方、「春の全国交通安全運動」の実働現場も地方自治体であり、選挙関連作業を担当する課(係)と交通安全運動を担当する課(係)が兼務しているところも少なくなく、作業的に無理を生じることがあるほか、市民、有権者も選挙運動と交通安全運動の関連広報等が同時期に行われたのでは生活の平穏環境にも悪影響が出かねない、ということなどが勘案された結果、「春の全国交通安全運動」を「統一地方選挙」が行われるたびに5月に期間変更することとなったものと思われますが、テレビ、新聞等のマスメディアは、「春の全国交通安全運動」の実施期間変更とその理由についても、そのつど、しっかり報じてほしいと思うと同時に、マスメディアの関心も薄れているのではと思われるほど形骸化し、一部関係者のみの惰性的恒例行事となっている感が強い「全国交通安全運動」について、その必要・不必要を含めて抜本的に問い直してみる必要があると、切に思っています。

ちなみに、「全国交通安全運動」は、もともと1948年(昭和23年)11月の国家地方警察本部長官通達に基づき、12月10日から16日までの1週間「全国交通安全週間」として実施され、翌年1949年(昭和24年)と1950年(昭和25年)には11月に1週間行われ、4年目の1951年(昭和26年)には10月16日から25日までを「全国交通安全旬間」として10日間実施され、以来10日間で定着していますが、1954年(昭和29年)と1955年(昭和30年)、それと1960年(昭和35年)には例外的に10月下旬の11日間、1971年(昭和46年)春には2回に分けて計12日間実施されています。そして、1952年(昭和27年)からは春と秋の2回実施されることとなり、名称も「春季全国交通安全旬間」、「秋季全国交通安全旬間」とされ、主催者も国家警察本部、全国自治体警察長連合協議会、運輸省、日本交通安全協会となり、協賛機関・団体も建設省、文部省、労働省、国鉄などが名を連ね全国交通安全運動にふさわしい体制が築きあげられました。さらに、1962年(昭和37年)からは、交通事故の急増を受けて、政府の重要施策として「交通安全対策本部」が中心となって実施要綱が決定され、名称も1961年(昭和36年)から「昭和〇〇年春(秋)の全国交通安全運動」となり、原則4月と9月に実施されるようになり今日に至っていますので、ほぼ半世紀におよぶ歴史を有することになります。

この「春(秋)の全国交通安全運動」は、当初(昭和33年から40年代半ば)、その重点目標として「道路交通環境の整備改善」という政府や関係行政機関等が担うべき施策の推進や「雇用者等の義務観念の向上」や「適正な運行管理体制の確立」などといった企業経営者等が為すべき対策の促進等も掲げられており、いわば、交通安全対策全般の促進を図る官民一体の一大運動という趣旨がみられましたが、昭和45年(1970年)に「交通安全対策基本法」が施行され、それに国や地方自治体の責務、つまり、交通安全推進のための総合的施策計画の策定とその実施等が明記されたこともあってか、昭和40年代半ば以降には「交通環境の整備改善」といった政府や関係行政機関等が担うべき施策の推進項目は重点目標から消え、やがて、「運転者の労務管理の適正化」や「適正な運行管理体制の確立」などといった企業経営者等が為すべき対策の促進にかかわる項目も重点目標には掲げられなくなりました。そして、たとえば、この5月の「平成27年春の全国交通安全運動」の推進要綱(内閣府)の「目的」に「本運動は、広く国民に交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進することにより、交通事故防止の徹底を図ることを目的とする」とあるように、専ら国民に対する意識啓発が目的となっています。事実、先にも紹介した1970年(昭和45年)に施行された「交通安全対策基本法」に基づき、5年ごとに策定されてきた「交通安全基本計画」(内閣総理大臣が会長の中央交通安全対策会議策定)には「講じようとする施策」として、「道路交通環境の整備」、「車両の安全性の確保」、「道路交通秩序の維持」など8つの施策が掲げられていますが、施策の2として掲げられているのが「交通安全思想の普及徹底」ですが、その具体的施策としては、1)段階的かつ体系的な交通安全教育の推進、2)効果的な交通安全教育の推進、3)交通安全に関する普及啓発活動の推進、4)交通の安全に関する民間団体等の主体的活動の推進、5)住民参加・協働の推進という5項目が掲げられ、問題の「交通安全運動」は、3)交通安全に関する普及啓発活動の推進策の1つとして「国民一人一人に広く交通安全思想の普及・浸透を図り、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践を習慣付けるとともに、国民自身による道路交通環境の改善に向けた取組を推進するための国民運動」(平成23年度から平成27年度・第9次「基本計画」)として位置づけられています。つまり、「春(秋)の全国交通安全運動」というのは、端的にいえば、交通安全思想の普及・浸透を図るためのキャンペーン(宣伝・広報活動)だと定義づけることが妥当だと思います。

したがって、この5月に実施された「平成27年春の全国交通安全運動」でもそうでしたが、具体的にどんなことが行われたかといえば、各地域での工夫は相応にみられるものの、所詮は運動初日に警察の白バイやパトカーの出動式を行うとか、幼稚園児や小学生の子供たち、あるいはまた、いわゆる「ゆるキャラ」や芸能タレントらが街頭に出てドライバーたちに事故防止・安全運転を呼び掛けるメッセージ等を渡すなどのセレモニー的行事を行い、それをテレビ等のマスメディアが報じることで「運動」のほとんどすべてが終始するというのが実態だといって過言ではないでしょう。確かに、かつては、もちろん、都道府県、市町村によって格差はありましたが、10日間の期間中、毎日というほどではありませんが、日々、たとえば、住民大会とか「青空交通安全教室」など各種の安全講習会を含むさまざまな催しが行われていましたが、この10年間ほど、人身交通事故の発生件数が全国的に減少傾向をたどり、特に最大の懸案であった交通事故死者数の劇的・驚愕的な減少と経済の低迷等による都道府県・市町村の財政悪化とが相まってか、近年の「春(秋)の全国交通安全運動」は、先にも述べたように、運動初日を伝えるセレモニー的行事のみで終始し、テレビや新聞などマスメディアの関心もかつてに比べれば相当希薄になっているように思います。もちろん、「交通安全運動」が「交通安全基本計画」の「講じようとする施策」の1つ、「交通安全思想の普及徹底」策のそのまた1つである「交通安全に関する普及啓発活動の推進」策の1策である限り、そして、人身交通事故の発生件数が全国的に減少傾向をたどっているという状況を勘案すれば、「交通安全運動」が担うべき役割も縮小しているとも考えられますから、かつてと同程度の費用や労力等を投入して、かつてと同規模の「運動」を展開する必要はないと、「雑記子」も思います。

問題は、「交通安全運動」は、あくまでも、交通安全を推進する総合的施策・「講じようとする施策」の1つ、「交通安全思想の普及徹底」策のそのまた1つである「交通安全に関する普及啓発活動の推進」策の1つにすぎず、「交通安全思想の普及徹底」を図るための他の施策であり、「交通安全に関する普及啓発活動の推進」策以上の重要性を有すると考えられる「段階的かつ体系的な交通安全教育の推進」策や「効果的な交通安全教育の推進」策が具体的に推進され、拡充されていればよいのですが、かつてもそうでしたが、「基本計画」に掲げられているように、幼児から小学生、中学生、高校生、そして大学生、さらには成人や高齢者、障害者に至るまでの「段階的かつ体系的な交通安全教育」が具体的に推進されている状況は、まったくといってもよいほど見当たらないことです。むしろ、少なくとも、幼稚園や小学校、中学校、高等学校の学校現場での「交通安全教育」の機会は、少子化による子供たちの交通事故死傷者数の減少傾向と相まってか、かつてよりも大幅に減っているというのが実情です。また、「効果的な交通安全教育の推進」についても、「参加・体験・実践型」等のいくつかの教育方法が研究・調査され、提唱されてもいますが、それらが幼稚園や小学校、中学校、高等学校等の学校教育現場での「交通安全教育」に積極的に導入され、「交通安全教育」が逐次・適宜適切に改善されているという状況もまったく見当たりませんし、教育方法・手法の研究調査や提唱はあっても、教育内容を抜本的に見直し、検証する研究調査もほとんどありません。つまり、「交通安全思想の普及徹底」を図るための施策には、「交通安全教育の推進」と「普及啓発活動の推進」という2大施策が掲げられていますが、「交通安全運動」などの啓発活動・キャンペーン活動はあっても「交通安全教育」、少なくとも「段階的かつ体系的」な「交通安全教育」はほとんど実現されておらず、端的に言えば、交通安全のキャンペーン活動はあるが、「交通安全教育」はほとんど名ばかりで、特に、小学校、中学校、高等学校等の学校教育現場では、いまだに「交通安全教育」が市民権を得ていない、という実情にあるのが「世界一安全な道路交通の実現を目指す」という目標を掲げている我が国における「交通安全思想の普及徹底」策の実態だというのが「雑記子」の所見です。

「平成27年までに24時間死者数を3,000人以下とし、世界一安全な道路交通を実現する。平成27年までに死傷者数を70万人以下にする」という「第9次交通安全基本計画」に掲げられた達成目標は、今年がその目標達成のための最終年に当たりますが、昨年2014年に全国で発生した人身交通事故は57万3,800件余で、死者数は4,113人、負傷者は71万1,300人余となっており、あと半年余りしか残されていない今年平成27年中に「24時間死者数3,000人以下、死傷者数70万人以下」という目標を達成することは非常に厳しい情勢にあると思います。しかし、過去10年ほどの間、死者数は年間7千から8千人台が半数ほどに激減し、死傷者数も100万人台を大きく下回るほどに、人身交通事故が確実な減少傾向をたどっていることは確かですから、「第9次交通安全基本計画」に掲げた目標が達成できなかった要因は何なのか・・・、「第9次交通安全基本計画」の実施状況、なかでも「交通安全思想の普及徹底」を図るための施策のうちの「交通安全教育の推進」策がなぜ、具体化されなかったのか・・・をしっかり検証し、改善すべき課題等を明確に洗い出し、明年平成28年度を初年度とする『第10次交通安全基本計画』にしっかり反映させ、『交通安全基本計画』を単なる作文ではなく、文字通りの具体的で実効性のある実施計画に仕上げれば、かの目標達成も一層現実味を帯びてくるはずです。以上、今回の「雑記」は、4年に1度、「統一地方選挙」のため、5月に期間変更して行われた「平成27年春の全国交通安全運動」に関連して、「交通安全運動」の目的にもなっている「交通安全思想の普及徹底」を図るための施策の現状と抜本的問題点について考えてみました。
(2015年5月21日)

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