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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年9月25日

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交通安全時評

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前回、前々回の2回にわたって、第10次の「交通安全基本計画」について、5年前の第9次の「交通安全基本計画」と比較しながら紹介し、その問題点等を検証してきました。前回、前々回でも紹介しましたが、念のため、「交通安全基本計画」というのは、今から40数年前の昭和45年(1970年)6月に施行された「交通安全対策基本法」の規定に従って、内閣総理大臣を会長とし、内閣官房長官や指定行政機関の長らを委員として構成される「中央交通安全対策会議」が5年ごとに策定する「交通の安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱」で、道路交通のみならず、鉄道交通、海上交通、航空交通の安全の施策も網羅された文字通りの「大綱」で、今年、平成28年3月11日付で策定された「基本計画」は、平成28年度から平成32年度までの5年間に実施しようとする施策の大綱となる第10次の「交通安全基本計画」となります。本稿では、前回、前々回同様、道路交通のみに限って、過去2回の「雑記」で記述しきれなかった部分を紹介しつつ、問題点等を検証していくこととします。

第10次の「交通安全基本計画」は、「第1部 陸上交通の安全」、「第2部 海上交通の安全」、「第3部 航空交通の安全」の3部からなり、「第1部 陸上交通の安全」は、「第1章 道路交通の安全」と「第2章 鉄道交通の安全」、「第3章 踏切道における交通の安全」の3章で構成され、本稿がテーマとしている「第1章 道路交通の安全」は、「第1節 道路交通事故のない社会を目指して」、「第2節 道路交通の安全についての目標」、「第3節 道路交通の安全についての対策」、以上の3節で構成されています。前回、前々回でも紹介しましたが、こうした構成は、第9次の「基本計画」でもまったく同様で、前回には「第3節 道路交通の安全についての対策」の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の「1、交通事故による被害を減らすために重点的に対応すべき対象」の項まで、「第9次基本計画」と比較しながら、その概要を紹介しつつ、問題点等を検証してきましたので、本稿では、「第3節 道路交通の安全についての対策」の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の「2、交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」以下の概要を紹介しつつ、問題点等を検証していくこととします。

前回にも紹介したように、「第3節 道路交通の安全についての対策」の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の「2、交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」
(※アンダーラインは「雑記子」記入)は、第9次以前にはなかった新たな項目で、(1)先端技術の活用推進、(2)交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進、(3)地域ぐるみの交通安全対策の推進、という3つの項目を掲げて記述しています。そして、前回には、「基本計画」は、5年ごとに策定される「交通の安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱」ですが、にもかかわらず、「基本計画」を詳細に検証すればするほど、少なくとも、第9次と第10次の比較検証では、ほぼ同様の構成・内容で、5年間の時間経過や対策の進捗状況等を踏まえた進展・進化が認められず、その策定作業は、結局、「机上の作文作業」に終わっているのではないか・・・、という疑念を持たざるを得ない、という結論をもって結びましたが、以下に紹介・検証する「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」のように、第10次「基本計画」で新たに付け加えられた項目(対策)もわずかながらもある、ということを付け加え、補足釈明しておきますが、問題は、そのせっかくの新たな項目(対策)も、「机上の作文作業」に終わっているのではないか・・・ということです。そこで、本稿では、まず、「第9次基本計画」にはなく、「第10次基本計画」における第3節の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の2として新たに「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」という項目が加えられましたが、その具体的項目の概要を紹介しながら、問題点等を検証してみます。

先にも紹介したように、「2、交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」には、(1)先端技術の活用推進、(2)交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進、(3)地域ぐるみの交通安全対策の推進、という3つの項目が掲げられていますが、まず、(1)の「先端技術の活用推進」では、「運転者の不注意による交通事故や、高齢運転者の身体機能等の低下に伴う交通事故への対策として、運転者の危険認知の遅れや運転操作の誤りによる事故を未然に防止するための安全運転を支援するシステムや、交通事故が発生した場合にいち早く救助・救急を行えるシステムなど、技術発展を踏まえたシステムを導入推進していく。」としていますが、少なくとも、「雑記子」には、「(新)システムの導入推進」の具体像や推進過程を思い描くことができず、確かに新しい視点ではありますが、実施すべき対策としては具現化されておらず、結局、新しい視点を表記しただけの「机上の作文作業」にとどまっているように思えてなりません。ただ、安全運転の支援システムや、救助・救急システムの高度化といった科学技術は、いわば、必然的に進歩・向上するものですし、実際、様々な新技術が自動車の生産現場や救助・救急の現場で逐次取り入れられており、事故の未然防止や事故時の被害軽減に役立てられ、今後もそうした動きが加速されていくことだろうと思いますが、問題は、国の施策として、どのように具現化するのか、それが示されなければ「基本計画」上の施策ということにはならない、と思うのです。なおまた、安全運転の支援システムの技術革新に関しては、かねてから、気がかりになっている問題点がありますので、それもつけ加えておきましょう。先にも紹介したように、この「安全運転の支援システム」というのは、「運転者の不注意による交通事故」を未然に防止するための支援システムですが、いわゆる「IT」等の先進的技術革新によって、「運転者の危険認知の遅れや運転操作の誤りによる事故」を防ぐシステム技術そのものは間違いなく進化していくことと思いますが、「運転者の不注意」そのものの科学的解明が十分に解明されているとは思えない実情の下では、「IT」等による先進的技術システムも、その機能が十分に発揮されないおそれがある、ということです。つまり、「IT」等による先進的技術の開発・導入もさることながら、運転者の「不注意」による交通事故の科学的解明こそ、最優先の課題だと考えるものですが、その点に関してはまったく触れられていないことに、この「先端技術の活用推進」という取組事項の危うさを感じるのです。また、同様の危惧は、「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」の(2)、「交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進」という取組事項の記述にも感じます。

すなわち、「第10次基本計画」における第3節の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の2として新たに加えられた「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」の(2)には、「交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進」として、「安全運転義務違反に起因する死亡事故は、依然として多く、近年、相対的にその割合は高くなっている。このため、これまでの対策では抑止が困難であるこの種の交通事故について、発生地域、場所、形態等を詳細な情報に基づき分析し、よりきめ細かな対策を効果的かつ効率的に実施していくことにより、当該交通事故の減少を図っていく。」
(※アンダーライン部分は雑記子が補足)としていますが、「安全運転義務違反に起因する(死亡)事故」というのは、その圧倒的多数が、いわゆる「運転者の不注意」による事故と同義といってもよい実情にありますので、「発生地域、場所、形態等の詳細な情報に基づいて分析」したところで、「不注意」の科学的実相を解明するにはきわめて不十分です。なぜなら、「不注意」は、事故の「発生地域、場所、形態等」にも関わりを有することは否定できませんが、運転者たる人間の心理・行動そのものの科学的解明こそが本筋であり、そうした本筋での調査・研究により「不注意」の科学的実相が解明されない限り、事故の真因は把握できず、結果、「効果的かつ効率的な対策」を打ち出すことができないと思うのです。つまり、キーワードは、いずれも「運転者の不注意」であり、この科学的解明への取り組みが明記されていない「先端技術の活用推進」も、「交通実態等を踏まえたきめ細かな対策の推進」も、結局は、「交通事故が起きにくい環境をつくるため」の対策とはなり得ず、「机上の作文作業」にすぎないのでは・・・という懸念がぬぐえないのです。

次に、「第10次基本計画」における第3節の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の2として新たに加えられた「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」として掲げられた事項の最後、(3)の「地域ぐるみの交通安全対策の推進」を紹介し、それにかかわる上記とは別の問題点を述べてみます。まず、当該、「(3)地域ぐるみの交通安全対策の推進」に記されている全文を紹介してみます。すなわち、「交通事故の発生場所や発生形態など事故特性に応じた対策を実施していくためにも、インターネット等を通じた交通事故情報の提供に努めるなど、これまで以上に地域住民に交通安全対策に関心を持ってもらい、当該地域における安全安心な交通社会の形成に、自らの問題として積極的に参加してもらうなど、国民主体の意識を醸成していく。(ことが必要である。)また、安全な交通環境の実現のためには、交通社会の主体となる運転者、歩行者等の意識や行動を周囲・側面からサポートしていく社会システム(の構築が必要であり、それ)を、都道府県、市区町村等それぞれの地域における交通情勢を踏まえ、行政、関係団体、住民等の協働により形成していく。(また、)各自治体で取り組んでいる飲酒運転対策、自転車の交通安全対策などについては、他の地域における施策実施に当たっての参考となるよう、条例の制定状況等を含め、積極的な情報共有を図っていく。(条例の制定状況等を含め、関連する情報を積極的に発信し、その共有を図っていく。)」というものですが、「雑記子」が敢えて挿入した(書き換えた)、( )内のアンダーライン部分がなければ、修飾関係が不明瞭で、作文としても落第点となる稚拙な悪文で、誰が「都道府県、市区町村等それぞれの地域における交通情勢を踏まえ」るのか、「行政、関係団体、住民等」の誰がリーダーシップを取り、どのようにして「協働」していくのか、責任所在等が不明で、結局は、「基本計画」の策定は「机上の作文作業」にすぎないことを証拠だてていると思うのです。そして、何よりも問題なのは、「地域ぐるみの交通安全対策」を、国がどのようにバックアップ、サポートして推進していくのか、それがまったく示されていないことです。

そもそも、「交通安全基本計画」というのは、冒頭にも記したように、「交通安全対策基本法」(昭和45年・1970年6月施行)の規定に従って、内閣総理大臣を会長とし、内閣官房長官や指定行政機関の長らを委員として構成される「中央交通安全対策会議」が、「国民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ」、5年ごとに策定する「交通の安全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱」であり、当然ながら、国は、この「大綱」に掲げられた諸施策を「実施する責務を有する」ことも、「交通安全対策基本法」に明記されています。もちろん、国のみならず都道府県や市町村も中央交通安全対策会議が策定した「交通安全基本計画」に基づき、都道府県や市町村レベルにおける「基本計画」を策定し、実施する責務を有していますが、都道府県や市町村での「基本計画」の策定、実施を促進するためにも、まず、国が果たすべき施策を明確にし、かつ、都道府県や市町村レベルで実施すべき施策を促進するためのバックアップ、サポート策も明確化し、具体的に打ち出すことが必要不可欠だと考えますが、それら施策や責務の分担等があいまいになっていることが「交通安全基本計画」の最大の問題点だということを指摘しているのです。

ちなみに、「地域ぐるみの交通安全対策の推進」は、交通事故防止のためにはもちろん、「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」としても必須事項であることに異議はありませんし、また、それを為し遂げていくために「行政、関係団体、住民等の協働」が必要不可欠であることにも異論はありませんが、その「協働」のリーダーシップは、「交通安全対策基本法」の意図する精神・目的からして、最終的には市区町村という自治体が単位になると思いますし、事実、かつては全国のほぼすべての市区町村役場に、その地域における交通安全(活動)を推進するための専任担当者がおかれていたものですが、現在は、市区町村財政の悪化や人口減少・高齢化、そして、問題の交通事故(死)が、ともかくもこの10年余にわたって大幅な減少傾向をたどってきたことなどが相まってか、交通安全(活動)を推進するための専任担当者がおかれている市区町村役場はほとんどないというのが実情であり、また、市区町村レベルにおける行政にとって交通安全対策は二の次、三の次の課題にすぎなくなっているというのが実態だと思います。それだけに、「地域ぐるみの交通安全対策の推進」を図るためには、まず、「中央交通安全対策会議」が策定した「基本計画」において、国が「地域ぐるみの交通安全対策」を推進するために、都道府県等地方自治体にどのようなバックアップ、サポート策を為すのかを具体的に明示し、国、都道府県、市区町村それぞれが果たすべき責務や役割分担等を明確化しない限り、「地域ぐるみの交通安全対策の推進」は、単にスローガンを掲げたにすぎないものになると危惧するのです。

以上、今回の「雑記」では、第10次の「交通安全基本計画」の第3節の「1 今後の道路交通安全対策を考える視点」の2として新たに加えられた「交通事故が起きにくい環境をつくるために重視すべき事項」を紹介しつつ、その問題点等を検証しました。次回には、「基本計画」の第3節「道路交通の安全についての対策」の要ともいえる「2 講じようとする施策」の概要を紹介し、問題点等を検証していくこととします。
(2016年6月20日)

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