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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年9月25日

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交通安全時評

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去る8月8日の新聞報道で、警察庁(交通局)がまとめた今年1月から6月(上半期)に全国で発生した交通事故による死者の発生状況が発表されました。それによると、全国の「24時間死者数」(以下同じ)は2,004人で、昨年同期に比べ70人の増加となっており、上半期の死者数が前年よりも増加したのは2000年(平成12年)以来13年ぶりのことだとのことです。ちなみに、上半期の交通事故死者数は、2000年に前年比72人増の4,267人になったあと、2001年から2012年までは毎年減少し続け、年間の死者数も01年から12年まで連続して減り続け、2000年には9,073人(愛知県警データ修正後、以下同じ)だった年間の死者数が2012年にはその半分以下の4,411人にまで減少しました。

この10年余りにおよぶ交通事故死者数の減少傾向を受けてか、2010年(平成22年)に政府は、「平成30年(2018年)を目途に、交通事故死者数を半減させ、これを2,500人以下とし、世界一安全な道路交通の実現を目指す」という目標を設定しました。さらにまた、平成23年(2011年)度を初年とする第9次の「交通安全基本計画」(中央交通安全対策会議決定)では、「計画」の最終年となる「平成27年までに24時間死者数を3,000人以下とし、世界一安全な道路交通の実現を目指す」という目標を掲げていますが、その「計画」の中間年に当たる今年の上半期の死者数が増加に転じており、結果、年間の死者数も前年対比で増加ということになれば、「平成27年までに3,000人以下とする」という目標達成は極めて厳しく、難しいことになると思います。

ちなみに、過去の「基本計画」の達成目標とその達成状況をみてみると、まず、17年前の平成8年(1996年)の3月に策定・決定された最終年度を平成12年(2000年)度とする「第6次」の「基本計画」では、「平成12年までに全国の24時間死者数を9,000人以下とする」という目標を掲げましたが、平成12年末の死者数は9,073人となり、目標値を僅かながらも上回り、目標達成はなりませんでした。そして、平成13年(2001年)度から平成17年(2005年)度にわたる「第7次」の「基本計画」では、「平成17年までに全国の年間の24時間死者数を、交通安全対策基本法施行以降の最低であった昭和54年(1979年)の8,466人以下とする」という目標を設定しましたが、平成17年末の死者数は、目標値よりも1,500人以上も少ない6,927人となり、設定した目標は見事、達成できました。続いて、平成18年(2006年)度から平成22年(2010年)度にわたる「第8次」の「基本計画」では、「平成22年までに全国の年間の24時間死者数を5,500人以下とする」という目標、「平成22年までに年間の死傷者数を100万人以下とする」という目標の2つを掲げましたが、平成22年(2010年)末の死者数は4,922人、死傷者数は901,216人となり、2つの目標ともに達成するという成果が上がりました。その上、2001年(平成13年)以降2011年(平成23年)までの10年間にわたり、全国の交通事故死者数は一途に毎年減少の傾向をたどってきたことも相まって、平成23年(2011年)度を初年とする第9次の「交通安全基本計画」では、「計画」最終年となる「平成27年までに全国の24時間死者数を3,000人以下とする」という目標を設定したのも、あるいは無理からぬことといえるかもしれません。

しかし、過去10年余り、確かに全国の交通事故死者数は減少し続けてきましたが、この10年余りの間、目新しい抜本的な交通安全対策が為されてきたのか・・・、「基本計画」に盛り込まれた「講じようとする施策」が過不足なく実現できる財源的裏付けが為されてきたのか・・・と問えば、少なくとも、財源面では、「失われた20年」ともいわれる日本経済の低迷により、国や地方公共団体の財政が悪化の一途をたどったことに伴って、国や地方公共団体の交通安全対策関係予算は毎年縮減されてきた上に、交通安全協会など民間の交通安全関係団体の予算も年々縮小され、その活動の活力も間違いなく低減してきた10年余りでありました。ただ、交通安全対策面、というよりも、交通規制・交通取締りの関係では、道路交通法の一部改正により、飲酒運転など悪質違反者に対する罰則強化やシートベルトの後部座席着用の義務化など、新たな展開があったことは確かですが、もともと、飲酒運転など悪質運転者による事故死者や後部座席のシートベルト非着用による死者は合わせても20%未満というのが実情でしたから、これらの施策が交通事故死者総体の劇的減少傾向の大きな要因になったとは言い難いことです。つまり、この10年余り、確かに交通事故死者数は劇的な減少傾向をたどってはきましたが、それはなぜか、減少要因が解明されないままに、トレンドとして、今後も減少していくであろうとの思惑優先で「平成27年までに全国の24時間死者数を3,000人以下とする」という目標が設定されたように思えてなりません。したがって、今年上半期の交通事故死者数の増加傾向が一過性のものであり、幸いにも今年の年間の死者数が前年に続いて減少したとしても、平成27年(2015年)までに年間の死者数を3,000人以下にすることは、よほど確かで効果的な対策をきちんと実施しない限り達成できない至難な目標ではないかと大いに懸念している、ということです。

またちなみに、確かにこの10年余り、交通事故死者数は劇的な減少傾向をたどってきましたが、肝心の人身交通事故の件数自体は、交通事故死者数の劇的な減少と正比例して減少しているわけではありません。ただ、この数年は、人身事故件数も減少傾向をたどっており、昨年2012年に全国で発生した人身事故の件数は66万件余りで、交通事故死者数が減少傾向をたどり始めた2001年(平成13年)に比較すると、28万件余も少なくなっていますが、過去をさかのぼってみると、今から20年余り前の1991年(平成3年)にも年間66万件余りの(人身)交通事故が発生したことが記録されていますが、このときの死者数は11,000人余りとなっています。また、その前年1990年には64万件余りの交通事故が発生、1991年の翌年1992年には69万件余の交通事故が発生していますが、そのいずれも年間の死者数は11,000人を超えています。つまり、最近数年は、全国の交通事故発生件数が確かに減少傾向をたどっており、昨年は10年ほど前に比べ28万件余りも少ない66万件台までに減少しましたが、20年ほど前には同じ66万件前後の交通事故件数で11.000人を超える死者が発生していたのに、なぜ、近年は交通事故死者数だけが劇的に減少し続けているのか・・・、それが何とも不可思議、という実情にあり、その不可思議を多角的・科学的な調査研究によって解明する動きもほとんど見られないままに「平成27年までに全国の24時間死者数を3,000人以下とする」という目標が設定されていることに危うさを感じるのです。

確かに、「平成27年までに全国の24時間死者数を3,000人以下とする」という目標を掲げている第9次の「交通安全基本計画」には、「講じようとする施策」として、(1)道路交通環境の整備(2)交通安全思想の普及徹底(3)安全運転の確保(4)車両の安全性の確保(5)道路交通秩序の維持(6)救助・救急活動の充実などといった従前と変わりのない「対策の柱」のもと、具体的な実施事項も数多く盛り込まれているほか、「事故危険区間重点解消作戦(事故ゼロプラン)の推進」などの新規施策項目もいくつか掲げられており、これらの施策が着実に実施されれば、交通事故減少化の傾向を一層確実なものとし、交通事故死者数の減少化も加速できると思います。しかし、過去の「第8次計画」や「第7次計画」等もそうであったように、また、かつての国政選挙で各党が掲げた「マニフェスト」がそうであったように、どれだけの財源をどのような工程で投入し、いつまでに実現するのか―といった具体性がほとんど見られず、単なる「机上のプラン」になっているに過ぎないと思えてなりません。

もちろん、日本の経済はいまだ確固たる明るい展望が見えず、国や地方公共団体の財政は 極めて危険な状態にまで悪化し、その上、3.11の震災復興問題、エネルギー問題、年金や医療等々といった緊急な解決・改善が迫られている課題が山積みされている今日、交通安全対策にまわせる財源は益々限られてくることは財政の素人にも十分推察されますが、それだけに数々ある交通安全対策・施策の何を優先すべきか、優先順位を明確にして実施していくことが大切です。そのためには、まず、この10年余り、交通事故の発生件数はさほど減少していないのに、なぜ、交通事故死者だけが激減してきたのか・・・、交通事故の発生件数は20年ほど前と変わりないのに、なぜ、交通事故死者だけが激減してきたのか・・・、それをきちんと解明することに叡智を結集して取り組むことこそが必要不可欠だと切に思う次第です。
(2013年8月19日)

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