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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年11月8日

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交通安全時評

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周知のように、この4月6日から15日までの10日間、長年にわたる「年中行事」と化した「春の全国交通安全運動」が展開されましたが、「展開された」とはいっても、過去10年ほどにわたる交通事故の全国的な減少傾向と、交通事故死者の劇的な減少化、加えて、長年にわたる国や都道府県等交通安全関連機関・団体の深刻な財政悪化が相まってか、せっかくの「春の全国交通安全運動」も、単なるマンネリ化にとどまらず、要所と思われるところに「運動」の期間中であることを示す看板や「のぼり」の類が見られるほかには、いわゆる「安全教室」、「安全講習会」、「住民大会」などの具体的事業が伴わない(あってもごくわずかの)形ばかりの「運動」になりさがった・・・というのが実情のように思われます。

そんななかでも、運動期間中、全国で発生した交通事故は、警察庁まとめによると、1万5,725件で前年比790件の減少、負傷者は1万9,419人で、やはり857人の減少という結果で終わり、特に死者数は前年同期よりも13人少ない105人にとどまり、2010年の春(96人)に次ぐ少なさだったということですが、「雑記子」としては、結果良ければすべてよし、とは言い切れない「わだかまり」が残る、というのが正直な実感です。

ところで、今回の「春の全国交通安全運動」の「重点」には、これまた恒例化している(1)自転車の安全利用の推進(特に、自転車安全利用五則の周知徹底)、(2)全ての座席のシートベルトとチャイルドシートの正しい着用の徹底、(3)飲酒運転の根絶、という3点が掲げられましたが、具体的事業が伴わない「運動」のなかでは、これらの「重点」が到底、「徹底」されたとはとても思われませんが、とりわけ、「自転車安全利用五則」については、その存在自体をまったく知らない自転車利用者がほとんどというのが実情で、その状況は今回の「運動」によっても何ら好転しなかった―とみるのは、果たして「雑記子」だけでしょうか・・・。したがって、この「雑記」では「自転車安全利用五則」にかかわる、いわゆる「自転車の交通ルール」、その根本的問題点について述べていくこととします。ただ、「自転車の交通ルール」の根本的問題点については、以前の「雑記」でも度々取り上げてきましたが、「自転車の危険運転常習者に対する『講習制度』の公布後2年以内の施行」が去る3月に閣議決定・法案提出されたことでもありますので、改めて、以前の「雑記」では取り上げなかった「自転車の交通ルール」の根本的問題点の一つを紹介し、問題提示しておくことが必要だと思うからです。

まずちなみに、「自転車安全利用五則」というのは、内閣府の「交通対策本部」が策定したもので、(1)自転車は、車道が原則、歩道は例外、(2)車道は左側を通行、(3)歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行、(4)安全ルールを守る(○飲酒運転・二人乗り・並進の禁止、○夜間はライトを点灯、○交差点での信号遵守と一時停止・安全確認)、(5)子どもはヘルメットを着用、というもので、自転車利用者はこの「五則」を守って自転車を利用することが求められているわけですが、この「五則」の基となっている、いわゆる「自転車の交通ルール」、つまり、自転車にかかわる現行の道路交通法に根本的な問題点がありますので、仮に「自転車安全利用五則」を知っていたとしても、それを厳格に遵守するのは至難である―というのが実態なのです。

根本的問題点の第一は、「自転車は、車道(通行)が原則、歩道(通行)は例外」という「自転車安全利用五則」の第一則にかかわるもので、自転車は、なぜ、車道を通行しなければならないのか・・・という点ですが、解答は簡単です。現行の道路交通法では、自転車は「車両」の一種、「軽車両」の一つで、「車両」は「歩道または路側帯と車道の区別がある道路では車道を通行しなければならない」(道路交通法第17条第1項)と定められているからです。しかし、エンジン等原動機を備え、人力に比べ桁外れのパワーを有する自動車と人力に頼る自転車を同じエリア(車道)を通行させること自体、安全確保や事故・危険防止の観点からすれば、あまりにも初歩的すぎる誤りだと思わざるを得ません。だからこそ、現行の道路交通法においても、たびたびの改正をもって「自転車道」の定義化や「普通自転車」の「通行可の歩道」の設置等を規定してきました。しかし、その「自転車道」などの設置・整備は遅々として進展せず、結果、自転車の歩道通行が黙認状態となり、一般化し、いわゆる自転車の悪質違反者の増加を招いた―という経緯があって、今、改めて「自転車は、車道(通行)が原則、歩道(通行)は例外」を強調せざるを得ないという状況に立ち至ったというわけですが、もともと「自転車は、車道が原則、歩道は例外」という原則では自転車の安全確保に無理があった故に、「自転車道」や「普通自転車」の「通行可の歩道」の設置等を法改正によって規定し、その設置・整備を進めようとしたはずなのに、国や地方自治体等の道路管理者の都合でその設置・整備が進まなかったことを問題視せず、「自転車は、車道が原則、歩道は例外」の強調に立ち戻るというのは本末転倒というべきです。

百歩譲って、仮に「自転車は、車道が原則、歩道は例外」を容認するとしても、これまで、ほとんど論じられてこなかった非常に厄介な問題点があります。道路交通法の定義によれば、「車両」の一種、「軽車両」の一つである自転車とは、「ペダルまたはハンド・クランクを用い、人の力によって運転する二輪以上の車で、レールを必要としないものをいう」とされていますが、身体障害者用の車いす、歩行補助車等とともに「小児用の車」は除外され、これらは「歩行者とみなす」とされています。つまり、道路交通法上、「歩行者」とみなされる「身体障害者用の車いす」、「歩行補助車等」、そして「小児用の車」は「歩道通行が原則」となりますが、問題となるのは、「小児用の車」です。しかし、この「小児用の車」に関する規定は道路交通法上どこにもなく、一般的に「乳母車、小児用の三輪車や自転車の類をいう」ものと考えられている―というのが実態で、これも、現行の道路交通法の意外に知られていない不備の一つですが、「雑記子」が特に問題視するのは「小児用の車」のうちの「小児用の自転車」です。

「交通警察質疑応答集」によれば、子どもの自転車のうち小学校入学前(6歳未満)の者が乗車するものとしてつくられた自転車、すなわち、車体が6歳未満の者が乗車する程度の大きさ(車輪がおおむね16インチ=約40センチ以下)で、かつ、走行・制動操作が簡単で速度が毎時4キロから8キロメートル程度しか出せない自転車は「小児用の車」に該当すると解する―とされています。つまり、簡略的にいえば、6歳未満の者、いわゆる幼児が乗車している自転車は「歩行者とみなす」ということですから、当然、歩道通行が原則となり、安全確保の観点からしても至極妥当な措置だと思います。しかし、かつて「雑記子」が取材した結果からすると、幼稚園等での幼児を対象にした「交通安全教室」などでは、小学生に対する安全指導と何ら変わりのない「自転車の安全な乗り方」が指導され、「歩行者とみなす」という観点からする安全指導をみかけたことはありませんでした。もっとも、警察庁が調査集計した交通事故統計資料により分析した結果によると、全国では幼児の「自転車運転中」の事故が年間400件前後発生していますので、この「自転車運転中」が文字通り、「歩行者とみなす」ことができない「自転車」運転中の事故であったと解するべきでしょうから、この点からすると、幼児を対象にした「交通安全教室」などでも、小学生に対する安全指導と何ら変わりのない「自転車の安全な乗り方」が指導される必要があるとはいえます。しかし、その一方で「歩行者とみなす」こととなった「小児用の自転車」運転中の事故も相当数あると考えられますから、この観点からの安全指導も当然ながら不可欠だということになり、幼児に対する実際の交通安全指導の現場では困惑を招くことは必定です。

ただ、近年(2008年平成20年6月施行)の道路交通法の一部改正によって13歳未満の子どもは「通行可」の標識・標示がない歩道でも自転車を運転して通行してもよいこととなりましたので、13歳未満の子どもたちに対する「自転車の安全指導」は、安全確保・事故防止の観点からすれば、「できるだけ歩道を通行する」ことを強調することが望ましいと思われます。しかし、それでも、ややこしい問題が生じます。たとえば、家庭で、13歳未満の子どもと父母などの大人が連れ立って自転車に乗って買い物などに出かけるというケースが少なからずあり得ると思いますが、こうした場合、大人は「車道通行を原則」、13歳未満の子どもは「歩道通行を原則」というわけにはいかないのが現実で、子どもの安全を優先させて「歩道通行を原則」とすれば、父母等の大人はルール違反を強いられますし、「車道通行を原則」とすれば、子どもの安全が脅かされることになります。したがって、「自転車の交通ルール」は現実の交通場面にそぐわないために、事実上軽視され、自転車利用者個々の判断により、時には車道を通行したり、時には歩道を通行したり、ということをせざるを得ず、いくら「自転車はルールを守って安全通行を・・・」と繰り返し叫んでも、肝心の自転車利用者の多くには、「建前・きれい事」として聞き流され、結局、「良好な自転車交通秩序の確立」は遠のくことになっているのです。

つまり、現行の道路交通法上での自転車の扱い、その通行方法等の根本的問題点、つまり、歩行者からも自動車のドライバーからも迷惑がられ危険視される誠に中途半端な位置づけになっており、かつ、現実の交通場面との乖離(かいり)が大きすぎる机上論的ルール等を抜本的に見直し、自転車に、歩行者、自動車と並ぶ一般的な道路交通手段としての市民権を明確に付与した観点でのルール作りと環境整備を実現しない限り、「良好な自転車交通秩序の確立」は到底実現し得ないと思うのです。
(2013年4月17日)

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事故現場からの警告者・故加藤正明氏を偲ぶ
第3回
事故回避の実行力、安全運転を確保するためのテクニック
第2回
雑記 第2回
第1回
雑記 第1回

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