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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年10月15日

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交通安全時評

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去る3月7日、新聞・テレビ等の報道が一斉に伝えたニュースは、近年、次から次へと、さまざまな衝撃的ニュース報道が国内外からあふれるように報じられ、いささかの感覚麻痺をきたしているのではないかと危惧している「雑記子」にとっても、あまりにも唖然とする衝撃的なものでした。きわめて残念なことに、その後の経緯報道がほとんど見かけられませんが、「雑記子」が唖然としたニュースとは、大阪府警下の泉南警察署交通課のY警部補(57歳)が飲酒運転検問の際、アルコール検出値を水増しし、虚偽の書類を捏造して検挙していた―というものです。

新聞各紙の報道を総合すると、事案の顛末は以下のようになります。まず、大阪府警管内の飲酒運転の摘発件数は8年連続全国最多で、このため、ほかではあまり例のない日中の一斉検問も実施し、全体の摘発件数が減るなかで問題となったY警部補が勤める泉南警察署の2011年の摘発件数は79件で、2010年の36件の倍以上になっており、Y警部補は79件中51件に関わっており、昨年7月、府警交通部長は交通取締りに尽力したとしてY警部補を表彰しているとのことです。しかし、昨年9月、泉南市内のJR駅前で原付バイクを運転していた60歳代の男性が飲酒検問を受け、同警部補による呼気検査の結果、呼気1リットルあたり0.15ミリグラムのアルコールが検出されたとして「酒気帯び運転」で交通切符(赤切符)を切られ、同年10月、略式起訴により罰金刑が確定しました。しかし、その男性運転者は、飲酒検問による摘発の際、確かに、そのおよそ2時間前の昼食時に「350ミリリットル」の缶ビール1本を飲んでいたので、その旨を説明しましたが、岸和田区検で事情を聴かれた際、捜査書類に「500ミリリットル」の缶ビール1本を飲んだと記載されていることに気づいたので、罰金を納付した後、電話で泉南警察署のY警部補に抗議したところ、Y警部補は「すみませんでした」と謝罪したが、その後、免許停止の行政処分が通知されたため、11月に改めて泉南警察署に訴えました。

この訴えを受けた府警には、この直前、別の男性からも同様の苦情が寄せられていたこともあって府警監察室が調べた結果、二人の男性のアルコール濃度は、泉南市内の交番で、Y警部補が、本来、違反容疑のあるドライバーの目の前で測定しなければならないマニュアルに反し、ドライバーに表示が見えないように背を向けて一人で測定していたことが判明、Y警部補は、事前に、日時とともにアルコール濃度が印字される仕組みの検知器を操作し、基準値以上の数値が記録された用紙を準備し、その虚偽の記録紙を貼付して送検していたとみて、この3月6日、大阪府警はY警部補を「虚偽有印公文書作成・同行使と証拠隠滅」の疑いで逮捕し、捏造を繰り返していた可能性もあるとみて調べている―ということで、新聞報道によると、大阪府警監察室長は、「犯罪を取り締まる警察官が重大な不正事案を引き起こし、極めて遺憾。事実関係の調査を徹底し、厳正に対処する」とのコメントも出しています。

交通安全、交通事故防止に関し、事あるごとに「ルール順守」を訴えている警察がこの体たらく、言語道断の職権乱用事犯であることは確かで、憤慨の極みです。願わくば、大阪府警の一警部補の特殊な愚行であってほしいものですが、「市民の目フォーラム北海道」の原田宏二代表(元北海道警察釧路方面本部長)の「ノルマは管理目標とか努力目標という言葉に置き換えられており、取締りのためなら多少のことはやってもいいというおごりがある。上司のチェック機能も甘い※北海道新聞3.7記事」―という批判をはじめ、いわゆる交通取締りの「ノルマ主義の弊害」や「チェック体制の甘さ」が背景にあるとする指摘も少なくなく無視できません。

改めて確認しておきますが、道路交通法の第1条には、「この法律(道路交通法)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的とする」と明記されています。よって、警察による「交通取締り」も、当然、この目的を達するために行うもので、摘発自体が目的であっては断じてなりません。しかし、現実には、「ネズミ捕り」と揶揄されるスピード違反の取締りや「覆面パトカー」によるスピード違反の取締りなど、摘発を優先させた「取締りのための取締り」が多く行われているのが実態で、取締り・摘発実績が高い警察官を表彰するなどの慣行は「取締りのための取締り」を助長する要因になると断じても過言ではないと思います。

また、今度のアルコール濃度記録紙捏造による摘発事犯にはさらに煩雑・やっかいな問題が秘められていることも指摘しておきたいと思います。周知のように、道路交通法(第65条第1項)では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と定められており、「酒気を帯びて・・・」というのは、「身体に通常以上のアルコールを保有した状態」と解されておりますので、2時間ほど前に「350ミリリットル」の缶ビール1本を飲んでいた―と答えている原付バイクを運転していた60歳代の男性は、この道路交通法(第65条第1項)の規定に違反した「飲酒運転」をしていたことは確かで、問題の検問時、たとえば、呼気が「酒臭かった」などの現象が認められた故に呼気検査に至ったのであろうと考えられます。果たして、呼気検査の結果の正確な呼気中のアルコール濃度の値はどうであったのか、各メディアでもその報道はないので知るすべもありませんが、問題のY警部補が事前に用意していたと思われる虚偽の記録紙を貼付したことからすると、「酒気帯び運転」として罰則適用の対象とはならない呼気1リットルあたり0.15ミリグラム未満の値しか検知されなかったことは確かでしょう。しかし、それでも、「飲酒運転」であったことは否定できません。

問題のY警部補が、事前に虚偽の記録紙を用意しておいて、こうした「基準値未満」のドライバーをも摘発するという愚挙に出たのは、摘発実績を上げるという不純な意図があったことのほかに、この種の「酒気帯び運転」に至らぬ飲酒ドライバーが少なからず横行していた―という背景があり、それが不純な意図を助長した―とも考えられます。現に、摘発された原付バイクを運転していた60歳代の男性というのは元警察官であった―という一部の新聞報道がありますが、元警察官であった者でさえ、2時間ほど前に缶ビール1本を飲んではいるが、「酒気帯び運転」には当たらない・・・という認識があったのではないかと推測されます。つまり、「飲酒運転」の本旨を理解していなかったのではないか・・・ということです。あるいは、「350ミリリットル」の缶ビール1本だけ飲んだことは確かだが、2時間も経過しているから摂取したアルコールはもう正常に戻り、「飲酒運転」にも該当しないと思っていたのかもしれませんが、こうした認識は、何も大阪に限られず、全国的にも、少なからぬドライバーにみられる認識です。

しかし、運転前に「飲酒あり」とされたドライバーによる事故を分析調査した結果によると、いわゆる「基準値」未満だったとされたドライバーが相当数おり、飲酒は、たとえ、呼気中または血液中のアルコール濃度が「基準値」未満でも安全運転の阻害要因になる―というのが現在までの知見であり、それ故に、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という飲酒運転禁止の条項が設けられたはずです。ただ、その反面で罰則の適用は、あくまでも、呼気中または血液中のアルコール濃度が「基準値」以上ある場合に限られていますので、「酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という規定自体は、いわば、単なる訓示規定といえる性格になっており、その点が「基準値」未満の飲酒運転者の横行を許し、今度のY警部補の愚挙を生む背景になっているとも考えられるのです。

それだけに、たとえば、最高速度違反の場合は、10キロ未満の超過でも罰則規定があるのに、いわゆる「基準値」未満の飲酒運転には、なぜ、罰則が不要なのか・・・、もし、10キロ未満の速度超過に比べても危険性が乏しいというのであれば、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」という規定自体を抜本的に見直すべきであり、またもし、たとえ、「基準値」未満の飲酒運転でも安全運転の阻害要因になり危険であるとするならば、それ相応の罰則規定を設けるべきです。また、同時にその危険性の根拠を誰にでも容易にわかるように示し、周知徹底を図る―、そういった根本的対処を取らなければ「飲酒運転」の根絶はもちろん、今度のY警部補のような愚挙の根絶も至難であると思わざるを得ませんが、少なくとも、交通警察への不信の基となる道路交通法の目的をわきまえぬ「取締りのための取締り」は抜本的・早急に改善してほしいと切に願って結びとします。
(2012年3月16日)

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