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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年12月7日

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交通安全時評

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今回の「雑記」では、前回に引き続き、「冬道」での安全運転、特に、冬の積雪・凍結路面での多発が懸念される、いわゆるスリップに起因する「追突」事故の発生実態を紹介し、そこから教示される追突事故防止のための安全運転の実戦的ポイントを述べてみようと思います。というのも、冬に降雪・寒冷に見舞われる地域は北海道のみならず、東北や北陸、山陰など、日本列島のほぼ半分ほどの地域が該当しますが、北海道(警察)を除けば、冬のスリップ事故等に関しての詳細な調査分析が行われているところがあまり見当たらない―というのが実情のようですから、その意味でも、北海道(警察)の詳細な調査分析データを紹介し、「冬道」でのスリップ事故の実態を知ってもらうことは大いに意義あることと考えるからです。もちろん、同じ降雪・寒冷地とはいえ、東北や北陸、山陰等の「冬道」状況は北海道のそれと異なることも少なくありませんが、北海道(警察)の調査分析データは、それらを斟酌してもなお十分に参考になるものだと思います。

なお、前回の「雑記」では、「冬道」というのは、北海道警察が「冬期間」と定義づけている11月から翌年の3月までの間に生成する積雪路面や凍結路面、また、雪氷が融けてシャーベット状になっている降雪・寒冷地特有の状態にある道路をいい、スリップ事故とはその積雪・凍結路面で「スリップ」が決定的要因になった事故をいい、近年は凍結路面でのスリップ事故が圧倒的に多いこと、また、「冬道」走行に適しているといわれるAT車(オートマチック車)や4WD車(4輪駆動車)、あるいはABS(アンチロックブレーキシステム)装備車によるスリップ事故が大多数を占めていることを紹介し、車やスタッドレスタイヤの安全走行性能の飛躍的向上に伴ってドライバー総体の「冬道」を安全に走行するための知識・技能、すなわち、「冬道」での安全運転能力が低下しているのではないか―という懸念が生じていることを述べましたが、今回はスリップ事故、なかでも、最も多く発生しているスリップによる「追突」事故の発生状況をより詳細に紹介することから始めましょう。

北海道警察交通部がまとめた過去3シーズンのデータを分析した結果によると、「冬道」で発生したスリップ事故で圧倒的多数を占めているのは「追突」事故です。特に、道路に沿って住宅、事業所等の家屋がおおむね500メートル以上にわたって連立している状態にある「市街地」の道路で発生したスリップ事故のおよそ60%が「追突」で占められている―という状況にあります。そしてまず、それらのスリップによる「追突」事故を引き起こした車がどのような駆動方式等の車であったか・・・を調査集計したデータによると、実にその80%がAT車(オートマチック車)という実態にあります。もちろん、近年は全国的にみても、少なくても自家用の乗用車のほとんどがAT車であるという普及状況にありますから、AT車によるスリップ「追突」事故が圧倒的多数を占めているのも当然の結果ともいえますが、AT車を運転しているドライバーのほとんどが発進から停止までシフトチェンジをせず、ドライブモード(「D」レンジ)のままで運転していますが、それが少なからず災いしている・・・とも懸念されます。

承知の方も少なくないと思いますが、MT車(マニュアル車)であれば、発進から加速まで、否が応でもローギアからセカンドギア、そしてサードギアへとギアチェンジ操作を強いられ、その結果として、減速する場合もサードギアからセカンドギア、あるいはローギアへとチェンジし、いわゆるエンジンブレーキを活用しながら減速する操作習慣を身につけていた者も少なくありませんでした。しかし、AT車では、ギアチェンジの代わりとなるシフトチェンジを発進から停止までまったくしなくても運転可能ですから、減速時もドライブモード(「D」レンジ)のままでいきなりブレーキを踏むということになり、特に夏場の乾燥舗装路面に比べ摩擦力が格段に低い「冬道」では効果的な制動力が得られない、ということが災いしていると考えられるのです。さらにまた、AT車でも、走行中にアクセルを戻せば、いわゆるエンジンブレーキが効きますが、MT車に比べれば、若干効き遅れする―という特性も災いしていると考えられるのです。したがって、AT車でも、特に「冬道」ではドライブモード(「D」レンジ)のままで走行する習慣を改め、「L」(ローレンジ)や「S」(セカンドレンジ)にこまめにシフトチェンジして運転する、特に、頻繁に交通の流れが変化し、減速・停止を強いられることが多い「市街地」などでは「S」レンジにシフト変換し、エンジンブレーキが効果的に活用できる態勢で走行する習慣をつけることが望まれます。

また、「冬道」でのスリップによる「追突」事故を引き起こした車の80%弱がABS(アンチロックブレーキシステム)装備車であったというデータもあります。ABSはコンピューター制御によりブレーキング時の踏力を自動的に制御し、最適な制動力を発揮させる機能を持ってはいますが、必ずしも最短の制動距離で停止できるというものではありません。特にアイスバーンといわれる最も滑りやすい凍結路面では制動距離が延びてしまうことも少なくありません。さらにまた、ABSは凍結路面等でブレーキをちょっと強く踏みすぎると直ちにシステムが作動してブレーキペダルが振動したり異音が出たりしますが、ABSの機能を発揮させるためには、その振動等に構わずさらに強くブレーキペダルを踏み続けることが必要ですが、そのことを十分に認識・体験していないドライバーはその振動などに驚き、思わず踏力を緩めてしまうことが少なくありません。この結果、せっかくのABSもまさしく「宝の持ち腐れ」となるばかりか、制動効果が低下し、避けられたはずの危険が回避できず事故に至ってしまいます。「冬道」でのスリップによる「追突」事故を引き起こした車の80%弱がABS装備車であった―という状況には、こうしたABSの機能特性も関与していると考えられますので、ABS車を運転する者はこの点をしっかり理解し、ABS作動に十分に習熟しておくことも必要です。

また、北海道警察交通部がまとめた過去3シーズンのデータには、「冬道」でのスリップによる「追突」事故の「前車の状態別」発生状況や第一当事者となった車の「事故直前速度」も集計されていますが、それによると、進行中の前車に追突したケースはわずか6%程度で、90%以上はすでに停止している前車に衝突している―というのが実態で、第一当事者となった車の「事故直前速度」も70%以上が時速30キロ以下であり、時速40キロ以下でくくると、ほとんどの「追突」事故がその範囲に入る―という状況にあります。

したがって、「冬道」でのスリップ事故の第一当事者となったドライバーの「違反種別」の発生状況をみても、いわゆる車間距離を適正に保っていなかったことが事故の決定的原因とされた「追突」事故はわずか1%未満と極めて少なく、また、夏場の「追突」事故では圧倒的に多い「前方不注意」等による事故も18%程度で意外に少なく、80%以上の事故は「操作不適」が決定的原因とされており、なかでも、「ブレーキ操作不適」がほとんどを占めている―という状況にあります。つまり、「冬道」でのスリップによる「追突」事故は、「追突」の危険を感知した後のブレーキ操作が適切に実行されていれさえすれば回避できたケースが圧倒的に多い―というのが実態だということです。

そこで、問題の「ブレーキ操作不適」の詳細を検証してみると、「回避操作(ブレーキング)の緩慢・遅れ」(53%)や「ブレーキ不充分」(19%)が圧倒的多数を占めています。つまり、前車の停止に気づき、「追突」の危険を感知したが、ブレーキを踏むのを一瞬ためらったり、ブレーキをしっかり踏み込まなかった結果の事故が圧倒的に多いということですが、なぜ、こんな失敗を犯してしまうのか、それが問題ですが、冬の凍結路面で、いわゆる「急ブレーキを踏むのは危険」という、ある意味で間違った認識が頭の片隅にこびりついていた結果であり、また、緊急時のブレーキ操作技能を習得していなかった結果であろうとしか思われません。

ですから、夏場の乾燥舗装路面ではもちろん、雨などでぬれた路面でも、冬の積雪・凍結路面でも、「追突」の危険が差し迫った緊急時には、素早く力いっぱいブレーキを踏み、タイヤの回転を止める(タイヤをロックさせる)―というのが最も有効な危険回避策であることをしっかり認識しなおすことが大切です。もちろん、特に冬の凍結路面ではタイヤがロックすると、回転が止まったままの状態で路面を滑走するスリップが生じますが、走行速度が急激に減速されることは確かであり、ハンドルをしっかり保ってむやみに操作しない限り、車体は慣性力(速度)がある間、慣性の方向に直線的に滑っていき、ブレーキを踏んだとたん、いわゆる「尻振りスリップ」や「スピン(旋回)」などのより危険なスリップに見舞われることはまずありません。特に近年は、ABS(アンチロックブレーキシステム)や駆動輪の左右の回転差やスリップの度合いを適正に制御するシステム(LSD=リミテッド・スリップ・デファレンシャル)が搭載されている車が普及していますので、これらの車は一層安心です。

しかし、これはあくまでも、危険が差し迫った緊急時に意識的に操作するブレーキテクニックを駆使してのことで、ほとんどのドライバーは、この緊急時のブレーキテクニックについての知識や技能を持ち合わせておらず、ために、無意識・反射的にいわゆる「急ブレーキ」を踏んでしまう結果、一瞬のためらいが生じたり、踏み込みも不十分で、タイヤもロックせず、しかも、無意識にハンドルも同時に操作してしまうなどの結果、急ブレーキを踏んだとたん、「尻振りスリップ」や「スピン(旋回)」などを招いたり、制動距離が延びたりして危険を増大させ、事故に至っている―というのが実情なのです。

したがって、夏場でももちろん同様ですが、特に冬の積雪・凍結路での「追突」事故を防止するためには、先々の路面状況や先行車群の流れの変化にしっかり目配り・気配りして追従する―というメンタルなテクニックを確実に実行するとともに、危険が差し迫った緊急時には、ためらわず、素早く力いっぱいブレーキを踏み込み、タイヤの回転を止めるブレーキングを意識的に駆使できるように、その知識・技能をしっかり習得しておくことが必要です。「安全運転を確保するためには安全運転を確保するためのテクニック(知識・技能)が厳然としてあり、これを習得し、駆使する必要がある」という安全運転の本物の鉄則が「冬道」走行ではなおさら必要不可欠であることを強調して稿を閉じることとします。
(2011年12月16日)

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