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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年10月15日

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交通安全時評

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前回の「雑記」に続き、いわゆる「自転車の交通ルール」の陳腐さについて述べる予定でいましたが、先月7月中旬の新聞報道等により、ご承知の方も少なくないと思いますが、警察庁と国土交通省では、「自転車の交錯による事故の危険性を減少させ、歩道・自転車道における自転車の通行を整序化するとともに、自転車道等の自転車通行環境の整備を推進するため、道路標識、区画線及び道路標示に関する命令(昭和35年総理府・建設省令第3号)の一部改正を検討し、歩道又は自転車道において自転車が一方通行となるべきことを意味する規制標識を新設する」として、この8月20日まで「パブリックコメント」を求めたうえで、年内にも導入する意向―ということですから、今回は急きょ、この一部改正について述べることとします。

まずちなみに、自転車道とは、「車道の部分に、縁石線や柵に類するものによって区画された自転車の通行のためのスペースをいう」と道路交通法(第2条第1項)に定義づけられているもので、いわゆる「サイクリングロード」とは別物であり、一般的に、市街地の車道の左側端のスペースに設置されているケースが多いのですが、設置個所は全道路の1%にも満たないのが実情ですから、一般にはほとんどなじみがない―というのが実態でしょうが、この自転車道が設置されている場合は、一般的な「普通自転車」は、この自転車道を通行しなければならないと義務づけられています。

なお、この自転車道は、車道の両側に設置されている場合もありますが、その場合は、進行方向にかかわらずそのいずれの自転車道も通行することが可能ですが、車道の片側にのみ自転車道が設置されている場合は、進行方向にかかわらず、必ず、その自転車道を通行しなければなりません。ただし、いずれの場合も自転車道内では「左側通行」の原則に従って通行しなければなりません。

また、歩道というのは、道路標識・標示によって「普通自転車の通行可」とされている歩道上のスペース、いわゆる自転車通行帯のことで、白線等のマーキングによって普通自転車が通行すべきスペースが標示されている場合はその部分、「普通自転車の通行可」の道路標識だけで、通行すべきスペースがマーキングで標示されていない場合は、その歩道の中央から車道寄りの部分が自転車通行帯となりますが、いずれの場合も「左側通行」の義務はありません。また、この自転車通行帯が道路の両側の歩道に設置されている場合は、進行方向にかかわらず、そのいずれの自転車通行帯を通行してもかまいませんし、その自転車通行帯によらず、車道の左側を通行しても違法とはなりません。また、片側の歩道上にのみ自転車通行帯が設置されている場合、その自転車通行帯を通行しなければならない義務はありません。

以上が現行の歩道上に設置されている自転車通行帯と車道に設置されている自転車道の定義・通行方法等の概要ですが、今、警察庁と国土交通省が一部改正を行って新たな規制をしようとしているのは、この自転車通行帯や自転車道に一方通行を義務づけるための道路標識の新設で、一方通行に指定された自転車通行帯や自転車道を逆走した者には、3月以下の懲役または5万円以下の罰金を科す―というものです。
★現在、設置されている自転車道や自転車通行帯のなかには十分な幅員を持たないものも少なくないため、自転車同士の接触・衝突事故のほか、自転車通行帯では歩行者との、自転車道では自動車との接触・衝突事故が懸念されてきました。このため、交通量が多くて幅員が狭い道路の両側に設置されている自転車道や自転車通行帯には、新設の道路標識を掲げ、自転車に一方通行を義務づけ事故防止に資する、また、一方通行の導入で事故の懸念が少なくなれば、狭い道にも自転車道や自転車通行帯の設置が促進される―というのが今度の改正のねらいです。

果たして、この一部改正によって、自転車道や自転車通行帯の設置が本当に促進されるのか、また、自転車事故の防止に寄与することができるのか―といえば、少なくとも本「雑記子」は悲観的にならざるを得ません。まず、第一に、自転車道や自転車通行帯を設置するのは道路管理者である地方自治体ですが、その地方自治体は長引く財政の悪化に加え、今度の大震災による直接・間接の影響を受け、どこの地域経済も基本的に疲弊し、財政が一層悪化しているうえ、自転車道や自転車通行帯を設置する以上に重要とされる行政課題が山積みされているからです。そして、問題の自転車事故の防止ですが、交通量が多くて幅員が狭い道路に自転車の一方通行を導入することで、果たして安全性がどれだけ高まるのか―、その根拠が不明であるうえに、自転車利用者に対する広報・指導活動等を十分に行うことができる体制が未整備な状況のもとで、この改正自体、自転車利用者に周知徹底することが現実的に難しい―と思われるからです。

もちろん、先にも紹介したように、違反者に対する罰則規定もありますので、現場の警察でも、相応の指導・取締りも行うことでしょうが、その指導・取締り体制が従前以上に強化できる環境にはないこと、また、仮に指導・取締りを強化しても、運転免許を有した自動車等のドライバーの同様の違反には基本的に反則金・違反点数制度の行政処分で済まされるのに対し、自転車の違反者だけは、いきなり刑事罰が適用される―という根源的矛盾をはらんでいるだけに、現実的には、自転車の違反者を次々に検挙するわけにもいかない―というのが実情でしょうから、警察の指導・取締りによる周知徹底にもおのずと限界があるといわざるを得ません。以上のことを勘案すると、自転車道や自転車通行帯にも一方通行の規制を導入する―という今度の改正は、いかにも唐突的な改正で、その効果にも大きな疑問を持たざるを得ないのです。

確かに、自転車による交通事故は、交通事故全体の20%をも占め、いわゆる歩行者事故の2倍以上も発生している多発事故で、しかも、交通事故全体の減少傾向に比べれば、その減少ぶりもわずかで、その死亡事故は、歩行者の死亡事故の3分の1程度ですが、死亡事故全体が年々着実な減少傾向をたどっているのに、自転車の死亡事故の減少具合はそれよりも少ない―という状況にあることからしても、自転車事故の防止対策は、今後の交通安全対策の重要課題の一つであることは否定できません。しかし、前回の「雑記」でも述べたように、いわゆる「自転車の交通ルール」には、もっと根源的な問題があり、小手先の一部改正ではさまざまな整合性を保つことができないのが実情ですから、現行の道路交通法を抜本的に見直し、新たな道路交通法を制定することこそ急務であり、その点からしても、今度の一部改正は何とも唐突で不可解なものだといわざるを得ません。
(2011年8月18日)

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