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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年10月15日

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交通安全時評

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今回の「雑記」は、前回に引き続いて、いわゆる「冬道」での「スリップ事故」の発生状況とその防止のための安全運転のポイント等について述べていくことにします。まず、前回に紹介した通り、「冬道」というのは、北海道などの降雪・寒冷地の冬期間(11月から3月)、路面が氷雪で覆われたり、降雪や吹雪等によって視界が不良になったりする夏場にはない特有の道路状況の総称で、北海道警察交通部では、この「冬道」に特有の、夏場には起こりえない降雪・寒冷地ならではの交通事故を「冬型事故」と定義づけ、毎年調査集計していますが、「スリップ事故」とは、冬の積雪・凍結路面が要因となって発生したスリップが主因となった事故で、「冬型事故」のほとんどを占めています。

前回には、北海道警察交通部の統計データに基づき、氷雪路を「積雪路面」と「凍結路面」とに2区分してみると、「スリップ事故」のおよそ90%は「凍結路面」で発生しており、「積雪路面」での「スリップ事故」は意外に少ない―という状況にあり、また、「スリップ事故」の「地形別」発生状況を検証してみると、警察の交通事故統計上、「道路に沿っておおむね500メートル以上にわたって住宅、事業所等が連立している状態であって、その地域における建造物(敷地を含む)の占める割合が80%以上になるいわゆる市街地的形態をなしている地域」と定義される「市街地」でおよそ80%の「スリップ事故」が発生している―という結果になっています。こうした状況の背景要因の一つには、スタッドレスタイヤの「積雪路面」でのタイヤのグリップ力(路面を掴まえる力)が優れている反面、「積雪路面」での滑りにくさが「冬道」の滑りやすさへの自覚を希薄化し、「凍結路面」、いわゆるアイスバーンへの油断となって「スリップ事故」のほとんどが「凍結路面」で発生している―と考えられるほか、一般的に、「市街地」の「冬道」は、「非市街地」の「冬道」に比べ交通量が多いため、「積雪路面」が多くの車の通行によって「凍結路面」になりやすい―ということもその要因の一つになっていると考えられます。

また、「市街地」での「スリップ事故」の圧倒的多数が「追突」事故だ―という状況を踏まえ、「冬道」での「スリップ事故」を防ぐためには、まず何よりも「市街地」での「冬道」を走行するときに「スリップ事故要注意」という認識をしっかり持ち、特に追従走行時に「追突」への警戒心を高め、前車や先行車群の流れ、および時々刻々、その場その場で違っている路面状況の変化にしっかり目配り・気配りして追従するとともに、いざ、という緊急時に敏速・安全に対応できる「構え・備え」をもって走行することが大切であることをお伝えしました。さらにはまた、「冬道」の安全走行を確保するために必須の操作テクニック、すなわち、(1)徐々にアクセルを踏み込んで静かに発進、(2)加速は徐々に、(3)走行中はできるだけ一定速度を保つ、(4)早め早めの減速(アクセルオフ)、(5)ブレーキは徐々に踏み込んで静かに停止という、近年その実践が望まれている「エコドライブ」とほぼ同様の5つのポイントも紹介しました。以下の「雑記」では、以上のことを踏まえたうえで、その先に話を進めましょう。

一口に「スリップ事故」といっても、もちろん、その事故類型は多様ですが、北海道警察交通部の調査データに基づき過去3シーズンの平均数値による「類型別」の「スリップ事故」発生状況を検証した結果によると、「追突」事故が半数以上を占めて圧倒的に多く、そのおよそ90%が「市街地」の「冬道」で発生しており、かつ、そのほとんどがアイスバーン等の「凍結路」で発生している―という実態にありますので、本稿では、まず、「市街地」でのスリップによるとされる「追突」事故を中心にしてその発生実態や事故防止のポイントを述べてみます。

まず、上記にはあえて、スリップによるとされる「追突」、という記述をしました。それは、前車に追突する危険を感知してブレーキ操作をしたが、路面がアイスバーン等であったために制動距離が延びて追突してしまった、つまり、夏場の乾燥舗装路面であったら前車に追突する寸前で停止できたと思われるというケースが確かに認められはしますが、アイスバーン等でのスリップそのものが事故の主因であったとはいえないケースがむしろ多いのが実態だからです。それを裏づける典型的なデータであるにも関わらず、ドライバーの多くにあまり知られていないデータがありますので、まずそれを紹介しましょう。

「追突時の前車の状態別」発生状況というのがそのデータで、進行中の前車に追従車が追突した―というケースはわずか数%程度しかなく、渋滞や信号待ち等のため、すでに停止した状態にある前車に追突した―というケースの追突事故が90%以上を占めている―というデータがそれです。つまり、「冬道」のスリップで制動距離が夏場以上に長くなったことが事故の決定的原因ではなく、前車がすでに停止した状態にあることに気づくのが遅れたことが決定的原因なのです。ただし、すでに停止した状態にある前車に追突した―というケースの追突事故が圧倒的に多いという状況は、夏場の追突事故にもほぼ同様に認められますが、「冬道」での追突は、その特徴が一層顕著になっている、すなわち、すでに停止した状態にある前車に追突した―というケースの事故の割合が夏場(90%弱)以上に高くなっているという差異が認められはしますが、それでも、「制動距離の延びが決定的原因」とは言い難いのが実情です。

追突事故を詳細に調査研究した資料のなかには、「追突した車のドライバーがもう1秒早くブレーキを踏んでいれば事故に至らずに済んだと思われるケースが圧倒的に多い」というデータもありますが、これも、追突事故の圧倒的多数は、「前車がすでに停止した状態にあることに気づくのが遅れたことが決定的原因」であることを裏づけています。さらにはまた、北海道警察交通部の「冬型」事故の統計資料により、「違反種別」の「スリップ」追突事故の発生状況を検証してみると、「車間距離不保持」が主因とされたケースはわずか1%ほどで、80%以上は「安全運転義務違反」に該当する「操作不適」を主因とするケースである―というのが実態であり、この点からすると、夏場の乾燥舗装路面に比べ、タイヤと路面の摩擦力が格段に小さくスリップしやすいアイスバーン等の凍結路で、かつ、すでに停止した状態にある前車に気づくのが多少遅れたとしても、追突回避の適切な操作を行っていれば、事故は避けられたと思われる追突事故が圧倒的多数を占めている―という実態が浮かび上がるのです。そこで問題は、追突の危険が差し迫った状況で、どんな不適正な回避操作をしてしまったのか―ですが、北海道警察交通部の事故統計では、この点に関する貴重なデータも調査集計されています。

「操作不適」の「人的要因の内訳」というデータがそれですが、それによると、「スリップ」追突事故の主因とされた「操作不適」のなかで最も多いのが「回避操作の遅れ・緩慢等」で53%ほど、次いで「ブレーキ不十分」が19%、「急ブレーキ」が18%、「ブレーキとハンドルの同時操作」が7%などとなっていますが、最も多い「回避操作の遅れ等」というのは、追突事故の場合、「ブレーキ操作の遅れ・緩慢」と言い換えることができますが、なぜ、追突の危険が差し迫っていることを認知しているのにブレーキ操作が遅れてしまったのか、あるいはまた、せっかくブレーキを踏んだのに「ブレーキ不十分」ということで事故に至ったのか・・・が大問題となり、この実態をきちんと理解し、あらかじめ十分な心構えをしっかり構築しておかないと、結果的に「ブレーキ操作の遅れ・緩慢」とか「ブレーキ不十分」ということで事故に至る危険性が高くなる―と、まず強く警告しておきたいと思います。

まず、「ブレーキ操作の遅れ・緩慢」というのは、先にも若干触れておきましたが、認知のミス、つまり、前車に追突する危険に気づくのが遅れた結果ではなく、あくまでも操作段階でのミスであって、危険に気づいた段階で素早くブレーキを踏むべきであったのに、一瞬躊躇し、ブレーキを踏むタイミングが遅れたために事故に至った―というもので、夏場の追突事故にはほとんどみられない「冬道」のアイスバーン等ならでは追突事故の特徴ですが、ドライバーの誰もが犯し得る、意外に厄介なミスでもあります。すなわち、夏場の乾燥舗装路面では、追突の危険が差し迫った等の緊急時には、ほとんどのドライバーが無意識・反射的に、いわゆる「急ブレーキ」を踏んでしまいますが、「冬道」の凍結路、とくに「つるつる路面」などと称される、いわばスケートリンクの氷盤のように表面が滑らかに磨かれたアイスバーンでは、アイスバーンの危険性を恐れているドライバーほど、無意識にも、急ブレーキを踏むのを一瞬ためらってしまうのです。なぜなら、「冬道での急ブレーキは禁物」、「冬道では急のつく操作をしない」など、その瞬間、言い古された警告が頭をよぎってしまうからだ、と思うからです。また、ブレーキをしっかり踏み込んでいれば事故は回避できたと思われるのに、踏み込みが十分でなかったとされた「ブレーキ不十分」という操作ミスも、アイスバーンでのブレーキの強い踏み込みを恐れた結果のミスだ―と考えるのが妥当だと思います。

しかし、夏場の乾燥舗装路面であろうと、冬の積雪・凍結路面であろうと、いざ、という緊急時にはブレーキを素早く力いっぱい踏み込む―というのが本来の安全運転の鉄則です。にもかかわらず、長年にわたって「急ブレーキは禁物」という「知識」が流布されてきた結果、多くのドライバーの頭の片隅にそれが浸み込んでいるのが実態だと思います。確かに、特にタイヤと路面の摩擦力が夏場の乾燥舗装路面に比べ格段に弱い冬のアイスバーン等では、ブレーキを強く踏みすぎると、タイヤはロックして(回転が止まって)路面を滑走してしまいます。その結果、制動効果が落ちて制動距離が延びたり、ハンドルを操作しても進路の変更ができなかったり等の危険を招く恐れがあることは確かです。それ故に、特に「冬道」では、「急ブレーキ」を避け、ブレーキを徐々に踏み込んでタイヤがロックする寸前のところを維持する「ノンロックブレーキ」やブレーキを小刻みに踏み込んだり放したりする「ポンピングブレーキ」が推奨されてきました。しかし、危険が差し迫った緊急時には、「ノンロックブレーキ」や「ポンピングブレーキ」は事実上実践不能で、無意識・反射的に「急ブレーキ」を踏んでしまうのが一般的ですが、頭の片隅に「急ブレーキは禁物」という「知識」がこびりついているため、「急ブレーキ」を踏むのを一瞬躊躇したり、ブレーキを踏み込んでも強く踏み込むことができなかったりすることが生じるのだと考えられます。そして、このブレーキ操作の一瞬の遅れや踏み込みの不十分さが「冬道」での追突事故の多くの決定的原因になっているのです。

したがって、「冬道」での追突事故を防ぐためには、前車の動向のみならず、先行車群の流れの動向にも十分な目配り・気配りをし、かつ、適正な車間距離を保持して追従する―という基本行動の実践を習慣づけるとともに、追突の危険が差し迫った緊急時には、意識的に、素早くブレーキを力いっぱい踏み瞬時にタイヤをロックさせる(回転を止める)―という緊急時のブレーキングを習得し、実践できるようにしておくことが必要です。この緊急時のブレーキングを習得するためには、機会をみつけ、然るべき指導者の下で一度、正規のトレーニングを受けるのが望ましいことですが、そうした機会が身近にない場合は、日常の運転時に1回、安全が十分に確保できる場所で、20キロ前後の走行速度で十分ですから、アクセルから素早く足を踏みかえてブレーキを力いっぱい踏み込む―というトレーニングを繰り返すことで緊急時のブレーキングを身につけていくことが可能です。なお、この日常の運転時のトレーニングは、一度、正規のトレーニングを受けたことがある者にも実践することをお勧めします。また、念のため、そのトレーニングのポイントは、ハンドルは直進を保ったままで操作しないことと、クルマが完全に停止するまでブレーキをしっかり踏み続けることです。

ただ、ABS車(アンチロック・ブレーキシステム装備車)の場合は、ブレーキを強く踏み込みタイヤがロックすると、システムが作動し、自動的に、いわゆる「ポンピングブレーキ」が行われますが、この際、ブレーキペダルが小刻みに振動するなどのキックバック現象が生じますので、これを認識・習熟していないドライバーは思わず踏力を緩めてしまうことが少なくありません。ABS車でブレーキの踏力を緩めると、せっかくのシステムが作動しなくなりますので、結果、制動効果が低下し、制動距離が延び、追突の危険を増大することになりますので要注意です。つまり、ABS車を運転中に追突の危険が差し迫った場合は、やはり、先に述べたと同様、素早く力いっぱいブレーキを踏み込み、アンチロックシステムが作動しブレーキペダルが振動するなどしても、決して踏力を緩めず、さらにしっかり踏み込み続けることが肝心ですが、これを緊急時に実践するためには、少なくとも一度はアンチロックシステムの作動状態を体験し、緊急時のブレーキング方法をしっかり頭に叩き込んでおくことが必要です。

というのも、北海道警察交通部の統計資料によると、「冬道」でのスリップによるとみられる追突事故を引き起こした車の圧倒的多数(80%弱)は「ABS装備車」であったという実情にあるからです。もちろん、「ABS装備車」が普及し一般的になった―というのが大きな背景要因ではあると思われますが、ドライバーがABSの機能・特性を十分に理解しておらず、肝心なときに、せっかくのABS機能を活かしきれなかった故の事故や、ABSへの過度な信頼が事故要因になったと思われるケースも少なくないと懸念しています。特に、いわゆる「アイスバーン」ではABSが作動しても制動距離が最短になるわけではなく、むしろ、長くなる傾向にありますから、「ブレーキングの遅れ」や「ブレーキの踏み込み不十分」という操作ミスが事故に直結する危険性が増大することになりますので、ABS車こそ、追突の危険が差し迫った緊急時には「ブレーキを素早く力いっぱい踏み込む」というテクニックをしっかり身につけ、駆使できるようにしておくことが必要です。(次回に続く)
(2012年11月19日)

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