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お知らせ
2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年10月15日

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交通安全時評

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今回の「雑記」は、前回に引き続き、近年、「安全運転義務違反」を主違反とする交通事故の占率が年々高くなっている交通事故発生状況にかんがみ、道路交通法第70条の「安全運転義務違反」とは何か―を検証・論述する予定でした。しかし、3月11日午後2時すぎ、マグニチュード9.0といわれる東北太平洋沖を震源とする巨大地震が発生し、北海道、青森県から千葉県に至る太平洋沿岸の広大な地域が激震と大津波とそれによる火災に見舞われて壊滅し、当日から2週間を過ぎた今現在1万人を超える死者が確認され、2万人を超えると思われる行方不明者がいるほか、今なお、20万余の多くの人々が必要最小限の救援物資等も満足に行き届かない劣悪な環境の避難所で先の見えない厳しい避難生活を強いられています。そのうえ、東京電力の福島第一原子力発電所が激震と大津波でダメージを受け、発電がストップしただけでなく、核燃料の冷却ができなくなり、放射性物質が漏れ出し、近隣の多くの人々に避難指示が出され、農産物や水源の放射能汚染による出荷停止、摂取制限も行われ、原発事故の終息の見通しが立たないばかりではなく、さらなる大惨事に発展する可能性すら否定できない―という状況にある今日、この「雑記」でも今度の大震災に触れざるを得ません。大震災の核心は、多くの人命が損なわれ、生き残った大勢の人々の暮らしの安全が根底から脅かされている―という、まさしく「安全」にかかわる大問題だからです。

まず、連日のテレビ報道によると、多くの専門家が「今度の大地震は想定を超えたものであった」ということを指摘している一方で「千年に一度の大地震」ともいわれています。そこで、手元にあるいくつかの歴史文献で調べてみると、西暦869年、清和天皇の御世、藤原北家の藤原良房が皇族以外で初めて摂政となって天皇を後見し実権を握っていた貞観11年の5月、陸奥(東北地方)で大地震が発生し、1,000人以上が死亡したとの記録がありましたが、近年、地元の研究者の調査によると、この大地震で発生した大津波は内陸数キロの地点まで達していたことを示す痕跡が発見されており、今度の大地震・大津波に匹敵する規模の大震災がおよそ千年前にも発生していたことがわかっています。この点からすると、「想定外の大地震であった」という見解は何とも虚しいものに思えてなりません。

ちなみに、西暦869年貞観11年の8月には摂政の藤原良房が中心となった勅撰史書『続日本後紀』20巻が完成されていますが、その数年前の貞観6年には富士山が大噴火し、溶岩流が多くの農家を飲み込んだほか、本栖湖や剗海(せうみ)に流れ込み、剗海が分断され西湖と精進湖ができあがり、青木ケ原の溶岩流もこのときのものということが報告されています。

こうした歴史的事実からしても、「千年に一度」くらいの頻度だとはいえ、地震列島ともいわれる日本列島には、今度の東北関東大震災規模の大地震・大津波が発生する可能性があったことは否定できないはずですが、にもかかわらず、専門家と呼ばれる人たちの多くから「想定外」という釈明が出てくるのはなぜなのか・・・、何とも解せない問題点の一つです。特に東京電力の福島第一原子力発電所は、少なからぬ研究者が大津波襲来の可能性を指摘していたにもかかわらずその対応策をまったく講じてこなかった―、その裏には「日本の技術は世界一、原発事故は起きるわけがない」という「安全神話」が根を張っていたと思われてなりません。「そもそも安全など存在しない。常にあるのは危険である」(日本ヒューマンファクター研究所長・黒田勲)という安全思想の根幹が欠如していたに違いありません。

もちろん、「千年に一度」の大震災にも機能する万全な備えをすべきかどうか―は、現実問題として意見が分かれるところでしょうが、少なくとも危機管理としては、そうした規模の大地震や大津波が発生した場合にその被害を最小限にするため、どのように対処すべきか・・・、その処方はしっかり検討され、周知しておくべきでした。しかし、いまだ記憶に新しい阪神淡路大震災や新潟県中越沖地震などから多くの教訓を得、さまざまな対応が取られてきたことは確かでしょうが、それらはいわば「局地的」震災に対する対応策だったに過ぎず、今度のような広域にわたる大震災を想定した対応策は皆無に等しかったことが図らずも露呈されたのです。

ともあれ、今はまず、被災者の救済対策に万全を期し、一日でも早く復興再建プランを策定することが急務ですが、同時並行的に近い将来、高い確率で予測されている東海地震や東南海地震等が同時発生することも視野に入れた巨大震災対策の確立も急務であることをあえて強調しておきたいと思います。特に、いまだ予断を許さない状況にある福島原発の実情をみるとき、日本全国にある稼働中の原発50数基の耐震対策と被災対策の抜本的見直しが不可欠です。そのいずれもが、これほどの大地震や大津波の襲来がまったく想定されていないからです。原発の安全確保はエネルギー問題とも密接に関係し、その安全が損なわれれば産業や経済活動の根幹が揺らぐだけでなく、人々の生命や暮らしの安全が大きく脅かされることが今度の震災で明白になりました。日本の原発は安全だ―という「安全神話」は根底から覆ったのです。今こそ、「安全第一」というスローガンを安直な免罪符として掲げるだけでなく、その安全思想の根幹の真意をしっかり認識し直し、何をさておいても「安全第一」を旨とした国づくりのために、まず、政治・行政・産業界等が率先して真摯に取り組む姿勢に転換することを願ってやみません。
(2011年3月28日)

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バックナンバー

第117回
クルマ社会の大革命―自動運転(走行)車の実用化が迫っている今、半世紀以上も前に制定された道路交通法の大改革が必要不可欠・・・No.2
第116回
クルマ社会の大革命―自動運転(走行)車の実用化が迫っている今、半世紀以上も前に制定された道路交通法の大改革が必要不可欠・・・
第115回
道路交通法の「安全運転義務」を緩和するだけで「レベル3」相当の自動運転(走行)車の実用化を促進するのは拙速・乱暴な方策だ・・・
第114回
次代を担う子供のかけがえのない命を社会全体で交通事故から守るには、事故発生状況を分析し、特徴等を的確に把握することが出発点となる・・・
第113回
次代を担う子供のかけがえのない命を社会全体で交通事故から守ること、その重要性・必要性が一層高まっているが、諸対策は進捗していない・・・
第112回
関連法の整備、国民・ユーザーへの周知・理解を得る動き等が鈍いまま性急に突き進む「自動走行車」実用化の動きに再び危惧を呈する・・・
第111回
問題ではないのか―、交通事故は半減、死者数も激減しているのに、「類型別」発生状況の基本的構図に変化が認められないのはなぜか・・・
第110回
全国の交通事故死者数、68年ぶりに最少記録を更新、慶事ではあるが、にわかには信じ難い「怪」記録である側面にこそ考慮・・・
第109回
最高速度・規制速度の見直し、ようやく着手、そも、現行法の速度規定が半世紀以上も前の遺物なのが根本的問題・・・
第108回
EV・FCV、自動走行車の実用化は道路交通史上の大革命、 なのに消費者・市民は「蚊帳の外」では無用の混乱と弊害を招く・・・
第107回
関連法等の抜本的改正など社会的環境整備の進捗状況が見えぬままに進められる「自動走行」実現化に向けた実証実験等性急な動きを懸念・・・
第106回
夜間の歩行者の死亡事故防止は重要課題だが、その解決のためにも、なぜ、日本は歩行中の死者数の割合が高いのかの検証が必要不可欠・・・
第105回
交通安全対策は国・政府の責務、警察主導の交通安全対策を憂う・・・
第104回
これでいいのか、企業等「組織」の業務上過失致死傷罪は無罪放免?・・・
第103回
「自動運転車」の実現化、そんなに急いで大丈夫なのか・・・
第102回
「高齢者講習」や「認知機能検査」の予約を取るのが大変だ!?・・・
第101回
「人対車両」の事故と「歩行中」の事故との違いについて考える・・・
第100回
「自動運転の実用化」にかかわる関連法整備上の問題点・・・
第99回
交通安全、「喫緊の課題」について考える・・・
第98回
果たして、高齢ドライバー対策は今後の交通安全問題の核心なのか・・・
第97回
首相指示「喫緊の課題」、高齢ドライバーの事故防止対策について・・・
第96回
「高速道の最高速度110キロ試行」に関連して・・・
第95回
「日本の自転車交通の混迷」を読んで・・・
第94回
「自動運転」車開発の現状と課題を考える・・・No.3
第93回
「自動運転」車開発の現状と課題を考える・・・No.2
第92回
「自動運転」車開発の現状と課題を考える・・・
第91回
第10次「交通安全基本計画」を点検する・・・No.3
第90回
第10次「交通安全基本計画」を点検する・・・No.2
第89回
第10次「交通安全基本計画」を点検する・・・
第88回
「観光バス事故」の惨劇に続いてトラックのトンネル火災事故、いずれも「規制緩和」による深刻な副作用、関係当局の対応に疑義あり・・・
第87回
続発する「観光バス」事故から見える「安全第一」の空念仏を嘆く・・・
第86回
2015年、「第9次交通安全基本計画」の目標は達成できずに終わった・・・
第85回
「小樽飲酒ひき逃げ事件」札幌高裁控訴審判決について考える・・・
第84回
繰り返される特設自転車レーンの「社会実験」、いまさら何を検証する?
第83回
ブレーキとアクセルの踏み違い等「操作不適」事故について考える・・・No.2
第82回
ブレーキとアクセルの踏み違い等「操作不適」事故について考える・・・
第81回
国民の「安全」にかかわる2つの厄介な問題について考える・・・
第80回
自転車悪質運転に「安全講習」が義務化されたが・・・
第79回
4年に1度、変則5月実施の春の全国交通安全運動・・・
第78回
人身事故は確かに減少しているが物損事故はどうなっているのか・・・
第77回
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第76回
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第75回
交通安全対策の根源的糧となる交通事故統計にまとわる疑義・・・
第74回
「安全運転義務違反」による事故、その問題点等を考える・・・
第73回
「冬道の安全運転」に対する関心が薄れているのではないかと懸念する・・・
第72回
自転車の安全対策、本気と抜本策が求められる・・・
第71回
「自動車運転死傷行為処罰法」について考える・・・No.4
第70回
「自動車運転死傷行為処罰法」について考える・・・No.3
第69回
「自動車運転死傷行為処罰法」について考える・・・No.2
第68回
「自動車運転死傷行為処罰法」について考える・・・
第67回
減少し続ける「子ども人口」、子どもの安全を守ることの重要さを考える・・・
第66回
高齢者の交通事故死傷者の実態を検証しておこう・・・
第65回
「安全思想」、「安全文化」を考える・・・
第64回
都心に45年ぶりに25cm以上の積雪、「冬道」運転のイロハ無知を嘆く・・・
第63回
2013年の全国死者数、前年に引き続き4,500人を割り込んだ・・・
第62回
「24時間死者数を3,000人以下とする」という目標は達成できるか・・・
第61回
危険運転の罰則強化、「自動車運転」だけを特別視する風潮に疑義・・・
第60回
高齢ドライバーの事故実態、一律に危険視するのは非常に問題!
第59回
「秋の全国交通安全運動」を機に、再び「手上げ横断」の奇怪を問う!
第58回
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第57回
再び、スピード規制とスピード違反取締りの問題点について考える・・・
第56回
事故実態と無縁な「スピードの出しすぎ注意!」について物申す・・・
第55回
道路交通法と道路運送車両法の整合性について考える・・
第54回
再び、「自転車の交通ルール」の不可解を考える・・・
第53回
通行空間が未整備では、罰則強化等で自転車の安全確保はできない・・・
第52回
61年ぶりに4,500人を下回った全国の輪禍死者、国際的にみると・・・
第51回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題 No.4
第50回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題 No.3
第49回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題 No.2
第48回
「冬型交通事故」の実態と「冬道」安全運転の課題
第47回
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第46回
本末転倒、枝葉末節すぎる「自転車の押し歩き推奨」対策・・・
第45回
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第44回
「危険運転致死傷罪」、「自動車運転過失致死傷罪」を考える・・・
第43回
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第42回
交通安全指導に当たる者は、まず自らしっかり「ルール」を学習せよ!
第41回
唖然!「飲酒検出値偽造による検挙」、交通取締りの原点を確認せよ・・・
第40回
交通事故、「類型別」発生状況の不可解・・・
第39回
東日本大震災をはじめ多くの災害に見舞われた2011年だったが・・・
第38回
冬道でのスリップ追突事故の実態から学ぶ安全運転のポイント
第37回
大震災の被災地にも冬将軍が襲来、冬道での安全運転を願って・・・
第36回
陳腐で難解な「自転車の交通ルール」を再び検証する・・・
第35回
一般道をブレーキ装置がない「ピスト」で疾走する自転車集団暴走族・・・
第34回
自転車道や自転車通行帯に一方通行を導入する予定だそうだが・・・
第33回
大災害による悲惨な惨状と「なでしこジャパン」が教えてくれたもの・・・
第32回
大震災から露呈された「安全問題」はいまだに虚しく空回りしている・・・
第31回
未曾有の大震災から露呈された「安全問題」の課題を探る・・・No.2
第30回
未曾有の大震災から露呈された「安全問題」の課題を探る・・・
第29回
「安全運転義務違反」による事故の増加、その問題点と課題を探る・・・
第28回
減少し続ける全国の交通事故死、その現状に潜む課題を探る・・・
第27回
最多の事故類型、追突事故の意外な実態と事故防止のポイント・・・
第26回
無知なのか、怠慢なのか、放置される違反自転車摘発の根本問題・・・
第25回
「居眠り運転」の不可解・・・
第24回
「走るコンピューター」と化したクルマに潜む未知の危険・・・
第23回
「事業仕分け」で改善勧告を受けた全日本交通安全協会の事業・・・
第22回
困ったもんだよ、警視総監の「手上げ横断」セレモニー・・・
第21回
交差点での事故防止対策こそ、交通事故の減少を図る決め手・・・
第20回
先進的なハイテクにこそ、予期できぬ未知の危険が潜在している・・・
第19回
年間死者数2,500人以下を目指す、その具体的施策が見えない・・・
第18回
新政権に望む、半世紀も前につくられた道路交通法の抜本的見直し・・・
第17回
ドライバーに「安全運転教育」のニーズが不足しているのはなぜか・・・
第16回
民主党圧勝し政権交代、どうなる「高速道路無料化公約」・・・
第15回
新スタートした高齢運転者の免許更新時講習等の不可解・・・
第14回
危険運転致死傷罪認定の危うさ・・・

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