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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年10月15日

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交通安全時評

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周知のように、昨年2010年・平成22年、全国で発生した交通事故(人身事故)は、72万件余にとどまり、2005年以降6年連続して減少しました。また、最大の懸案とされている交通事故死者数は2001年以降10年連続して減少し、ピーク時(1970年)の3割以下の4,863人にとどまりました。混迷・混沌の様相が益々増す世界情勢や日本の政治・経済・社会情勢を思えば、せめて交通事故だけは今年もこうした減少傾向が持続されることを切望しますが、あえて、老婆心ながらの懸念をいえば、確かに交通事故は減少傾向をたどっていますが、先行き気がかりないくつかの問題点があります。今回の「雑記」ではその懸念事項の一つを取り上げてみます。

その懸念事項とは、一言でいえば「安全運転義務違反」が主違反とされた交通事故の占率(割合)が年々増加の一途をたどっている―ということです。2000年以降に限ってみても、2000年には「安全運転義務違反」が主違反とされた事故の占率は人身事故で69.0%、死亡事故では46.7%でしたが、それ以降、その占率はほぼ毎年増加し続け、昨年は人身事故の75.3%、死亡事故の60.6%が「安全運転義務違反」が主違反となっています。なかでも、死亡事故では、いまだに「スピードの出しすぎ」や「飲酒運転」等のいわゆる悪質違反によるものが多い―という認識が一般的になっていますが、ちなみに、昨年の場合、「最高速度違反」(スピードの出しすぎ)が主違反とされた人身事故はわずか0.4%、死亡事故でも6.7%にすぎません。また、「飲酒運転」、なかでも最悪の「酒酔い運転」が主違反とされた人身事故は0.04%でほぼゼロに近く、死亡事故でも0.8%ときわめて少なく、「飲酒運転」による死亡事故総計でも数%ほどしかありません。

つまり、「スピードの出しすぎ」や「飲酒運転」等のいわゆる悪質違反による交通事故は実数・占率ともに年々減少しているのに、「安全運転義務違反」による事故は、交通事故全体の減少につれ、その実数こそ減少傾向にありますが、全体に占める割合は年々高くなっている―ということです。なぜ、「安全運転義務違反」による事故の占率は増加傾向をたどっているのか・・・、それが問題ですが、そもそも「安全運転義務違反」とは何か、その具体的な理解・認識を有しているドライバーが少なく、「安全運転義務違反」に対する危険認識・警戒心が乏しいドライバーが圧倒的に多い―、それが、いわゆる「悪質違反」による事故の占率が低下する一方で「安全運転義務違反」による事故の占率が高くなっていることの背景になっていると考えられます。そこでまず、「安全運転義務違反」とは何か―を改めて確認してみましょう。

まず、「安全運転義務」とは、道路交通法第70条に、「ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と規定されている義務で、これに反した運転をしたことが事故の主原因になったとみなされたケースが「安全運転義務違反」による事故ということになります。しかし、この70条の規定自体、非常に抽象的で具体的な行為がイメージしにくいうえに、速度超過や一時停止違反等と異なり、この義務自体の違反で検挙された―という例はほとんどなく、事故が発生した場合において、速度超過や一時停止違反等の具体的通行方法違反や義務違反が認められない場合に限って適用される特異な違反なのです。

そもそも、この道路交通法第70条の規定は、他の条項に定める典型的・類型的な行為の制限・禁止だけでは、複雑・千変万様に変化する現実の交通状況のすべてをとらえきれないため、他の条項に定める典型的・類型的な行為だけではとらえきれない部分を補充することを目的に定められた、きわめて特殊な規定なのです。それだけに、その規定内容は抽象的で明確性を欠き、極論的にいえば、道路交通方法等の規制は本条のみでこと足りるとさえいえるほどの総括的なもので、事故を起こしたドライバーには例外なくこの条項違反が適用できます。つまり、限りなく拡大解釈、乱用の恐れがある規定なのです。したがって、本条は「(条項の適用の)基準を設定し運用の適正を期すること」という衆参両院の付帯決議が付いてようやく通過したという、いわくつきの条項でもあるのです。それだけに、警察現場では「法令違反の決定にあたっては、安易に安全運転義務違反としないこと」とされ、また、「道路交通法の他の条項ではまかなうことができないような運転行為で、しかもその運転方法が他人に危害を及ぼす恐れがある場合に限り適用すべきである」との趣旨の判例も多く出されており、実際の事故現場でも、速度超過や一時停止違反等の具体的通行方法違反や義務違反が認められない場合に限ってのみ適用されています。さらにまた、交差点を通行する場合には、「交差点安全進行義務」が道路交通法第36条第4項に別個に明記されていますので、交差点(の事故)では原則的に第70条の「安全運転義務」が適用されません。

こうしたさまざまな制約があり、抽象的で明確性を欠く「安全運転義務」であるにもかかわらず、「安全運転義務違反」による事故が圧倒的に多く、その占率が年々高くなっているという現実は、換言すれば、真因が不明瞭な事故が多くなっている―ということでもあり、これは、今後の交通事故防止、安全運転の確保を考えるうえできわめて重要な問題点である―という認識を共有したうえで、交通事故の真因解明に真摯に対応することが不可欠であることをまず強く訴えておきます。と同時に、現状の「安全運転義務違反」とは何か―、その具体的・現実的理解を、まずしっかり図っておくことが必要不可欠です。

まず、警察の交通事故統計上では「安全運転義務違反」として計上されることはまずなく、いわゆる「前方不注意」が事故の決定的原因になったとみられる(1)漫然運転や(2)脇見運転、また、安全確認が不十分だったために相手当事者(危険)を見落としたり、その発見が遅れたことが事故の決定的原因になったとみられる(3)安全不確認、そして、ハンドルやブレーキ等の操作を誤ったことが事故の決定的原因になったとみられる(4)操作不適などのより具体的な不安全行為として区分されて計上されることがほとんどです。それ故に、「安全運転義務違反」による事故が圧倒的に多い―という認識に欠けるドライバーが多いのも無理はありませんが、これらは、あくまでも「安全運転義務違反」のうちの比較的明瞭な不安全行為を細分化したもので、換言すれば、ドライバー自身のちょっとした「不注意」による「認知ミス」や「判断ミス」、あるいは「操作ミス」ということでもあり、ドライバーの誰もが犯しやすい「違反」であるといえます。それだけに、安全運転を確保するためには、「安全運転義務違反」の実態を正しく理解し、それに対する警戒心を高め、適切な対処法を身につけ実行することが必要不可欠なのです。

そのためにも、(1)漫然運転や(2)脇見運転、(3)安全不確認など、「安全運転義務違反」の具体的内容とされている不安全行為についてさらに詳細な説明が必要ですが、以上に倍するほどの長文になりますので、次回に続くということで、とりあえずのくくりとしておきます。
(2011年3月3日)

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