★今年も早や12月、1日には、毎年、『現代用語の基礎知識』が主催・選考するその年の世相を反映した言葉を選ぶ「流行語」が決定・発表され、大賞には「政権交代」が選ばれたほか、トップテンには「事業仕分け」や「脱官僚」も入っており、政治関連の言葉が多かった―というのが今年の特徴といえますが、いずれにしろ、本格的にはわが国の近代・現代史上初めてといっていい「政権交代」が実現したことは画期的なことで、それは多くの国民の意思が反映した結果であることも確かでしょう。
★しかし、「政権交代」を望んだ有権者のなかには、新政権・民主党政権が誕生したら、たちどころに、「マニフェスト」等に掲げられていた新たな諸政策が実現し、経済情勢や暮らし向きが好転するものと期待していた者も、あるいは、少なくなかったかもしれませんが、目下の鳩山政権は、思いのほか迷走しているのが実態で、失望感に陥っている者も日増しに増えているのが実情のようです。
★だが、少なくとも半世紀以上も続いた同一政権が産み落としたあまたの弊害、塵(ちり)・芥(あくた)が一朝一夕で解決できると考えるほうが大きな間違いで、新政権の当事者たちも、野党時代に思い描いていた政権・政府、官僚機構等の闇は予想以上に深く濃厚であったことが、当面の「迷走」の最大要因だと思います。それだけに、「事業仕分け」も当面のパフォーマンスに終わらせないで、それに類する作業を今後も継続し、あまたの問題点を明確に洗い出して公開し、民意を問い、同意を得ながら一歩ずつ確実に解決していく姿勢を、まずは、明確に示していくことが必要だと思うものです。
★特に、この「雑記子」の立場からすると、「マニフェスト」に掲げていた高速道路の無料化や暫定税率の廃止はどうなるのかが気掛かりです。目下のところ、それに伴う財源の確保が予想以上に厳しいことや「総論賛成各論反対」などが障害になって難航し、実現の見通しがつかない状況にありますが、もともと、建設費の償還が済んだ高速道路は無料化する取り決めだったはずですし、30年ほども続けている「暫定」税率というのも、まったく奇異なことは確かで、それを財源不足など、あれやこれやの詭弁が繰り返され既成事実を積みあげてきたことが政治への国民の信頼を損ねる大きな要因の一つになってきた―とも考えられます。だからこそ、まずは、高速道路の無料化や暫定税率の廃止を実現し、新政権―政府・政治への信頼を確保したうえで、それに伴って派生するであろう財源不足等のさまざまな問題点は、それはそれとしてしっかり洗い出し、その解決案を含めて国民に明示し、十分な議論を重ね、同意を得つつ解決していく―という手順をとることが大切だと考えるものです。特に、「政権交代」を望んだ有権者の圧倒的多数を占めているはずの一般ドライバーの意思を然るべくしっかり調査し、新政策に反映していくことをぜひやってもらいたいものです。これまで、トラック等輸送事業者(団体)等の意見聴取やその反映などは少なからず行われてきましたが、圧倒的多数を占める一般ドライバー(ユーザー)の声は、聴取・反映されることはほとんどなかったからです。
★また、「国民の生活が第一」をスローガンに掲げて誕生した新政権には、国民の安心・安全な生活を守る政策を最優先で重点的に実現することに取り組んでもらいたいものですが、圧倒的多数の国民に日常的に関与する道路交通の根幹を成す「道路交通法」も抜本的に見直し、国民の圧倒的多数であるドライバーや歩行者、自転車利用者の目線に立った新たな時代にふさわしい「新道路交通法」の樹立をもぜひ視座に入れてほしいと願うものです。周知のように現在の道路交通法は、1960年・昭和35年に制定・施行されたもので、それ以前の「道路交通取締法」に代わった新法とはいえ、「取締法」の根幹にあったドライバーや歩行者は専ら取締りの対象―という思想を幾分なりとも引きずるものであるほか、年々、急速・劇的に変化する道路交通事情に対応するために、毎年のように、一部改正を繰り返してきた結果、整合性等に疑問を抱かざるを得ない部分も少なくないのが実情です。
★たとえば、今、エコ・環境問題との関係でも注目され、利用者も増えている「自転車」は、周知の通り、現行の道路交通法では、自動車と同類の「車両」の一種とされ、その通行方法等も自動車とほぼ同等に規定されていますが、半世紀も前の状況では、それも納得できたとしても、現下の道路交通状況では、自動車の同類ではなく、むしろ、歩行者の延長線上に位置づけるほうが妥当ではないのか、しかも、自動車のドライバーは、たとえば、一時停止違反などで検挙された場合、基本的に「反則金」等の行政処分で済むのに対し、自転車はその行政処分の対象外になっているため、いきなり刑事罰が適用される―というまったく奇妙な実情にあります。さらにまた、高齢者などの利用者が多い「原動機付自転車」がいまだに「車両」の区分として生き残っていますが、現状の「原付」は、どう考えても自転車の同類ではなく、自動二輪車の一種とするべきものです。
★また、最近、ようやく、運用基準の見直しが行われた自動車の規制速度問題も、もともとは道路交通法に「一般道路では最高速度60キロ」と定められていることが根本の問題点で、自動車の性能や道路交通環境も飛躍的に改善・向上し、道路交通事情が劇的に大きな変化を遂げたにもかかわらず、半世紀も前の道路交通事情の下で定められた規定がいまだに生き続けている、その根本的な疑義をこそ検討すべきなのです。
★等々、現行の道路交通法が実情と大きなミスマッチをきたしている点が多々あることは疑いようのない事実です。「国民の生活が第一」、国民の安心・安全な暮らしを守ることを基本理念として掲げている新政権には、これまで、政治の場でほとんど論議されることがなかった圧倒的多数の国民にかかわる生活関連法の代表といえる道路交通法の抜本的改革の必要性をぜひ、その視座に入れてほしいと切に願うものです。(2009年12月3日)