★間もなく3月、年度末を迎えますが、例年この時期、4月に行われる春の全国交通安全運動に向けて都道府県・市町村、交通安全協会など関係機関・団体での広報活動の準備作業が活発化します。しかし、今年は、かつてないほど、春の全国交通安全運動に向けての広報活動の準備作業が全国的に沈滞・不活発です。100年に一度とも言われる大不況と政治の混乱による影響、地方自治体や交通安全協会などの関係団体の財政がさらに悪化し交通安全活動推進の財源が大幅に減少していることが最大の要因であろうと思いますが、最大の懸案であった交通事故死者数が8年連続して減少し、半世紀以上も前のレベルにまで激減し、かつ、交通事故も4年連続して減少していることもあってか、関係機関・団体当局者の交通安全への取り組み意欲が低下している気運が感じ取られることが気がかりです。
★確かに、最大の懸案であった交通事故死者数は激減し、特に昨年は「第8次交通安全基本計画」の当面目標、全国の年間の死者数を5,500人以下にし、かつ、全国の年間の死傷者数を100万人以下にするという二つの目標を2年も早く達成したことになりますが、この状況を今後とも維持し続けられるという保証は何も見当たりません。また、確かに交通事故死者数は激減していますが、交通事故死者に占める「歩行中」の事故死者の割合は欧米先進国に比べ依然として高く、特に昨年は「歩行中」の事故死者が33.4%を占め、四輪自動車乗車中の事故死者(33.2%)を上回るという逆転現象が起きており、しかも、その「歩行中」の事故死者の大半が65歳以上の高齢者で占められているという憂慮すべき事態にあります。
★さらに、世界的規模で注目されつつある地球環境・エコロジー問題も相まってか自転車の利用が年々増える傾向にありますが、それに伴って「自転車乗車中」の交通事故も増加傾向にあり、昨年の「自転車乗車中」の事故死者の割合も前年より若干ながら増加しています。もちろん、こうした事態を受けて、4月に予定されている春の全国交通安全運動においても、高齢者の交通事故防止や自転車の安全利用の推進が運動の重点に掲げられていますが、運転免許の更新時講習など法的・定期的な指導や広報の機会があるドライバーとは違って、運転免許を持たない高齢者や自転車利用者には、一般的な商業コマーシャルと同様、相当量の広報を断続的に繰り返していくことが必要不可欠です。にもかかわらず、そうした広報活動が関係機関・団体の財政・財源の悪化によって年々急速に縮小しており、特に今年は、各都道府県の関係機関・団体で春の全国交通安全運動に向けた広報活動の準備作業が全国的に沈滞・不活発化している実情をみるとき、せっかく運動に掲げた高齢者の交通事故防止や自転車の安全利用の推進という重点も、結局は、絵に描いた餅で終わるにすぎないのではないかと危惧せざるを得ません。
★半世紀近くにわたって繰り返されてきた全国交通安全運動、もちろん、多少の改善・工夫がなされてきたとはいえ、基本的には年中行事のごとく形式的になっていることは否めません。世界の経済・政治が抜本的大転換を迫られているのと同様、交通安全運動や交通安全広報活動の在り方も抜本的大転換をすべく、真摯に検討すべき段階にきていると強く思うものですが、いかが・・・。(2009年2月27日)