★2008年、全国で発生した交通事故による死者数は、前年よりも589人少ない5,155人にとどまり、8年連続して減少し、過去最多だった1970年(16,465人)の約3割にまで減ったことが、この1月2日、警察庁まとめで報告されました。
★かつて何度か、この「雑記」でも紹介しましたが、政府の中央交通安全対策会議策定の「第8次交通安全基本計画」では、計画最終年の2010年までに年間の全国の死者数を5,500人以下にすることを目標としていましたので、2年も早くこの目標を達成したことになります。
★また、昨年は全国で発生した人身交通事故(1月2日現在の概数)も前年より66,000件余も少ない765,510件にとどまり、それによる死傷者数も前年より90,000人ほども少ない949,200人ほどにとどまり、「第8次交通安全基本計画」に掲げた「2010年までに年間の全国の死傷者数を100万人以下にする」というもう一つの目標も軽々とクリアしました。
★こうした結果からすると、昨年の交通安全は、かつてないすばらしい成果をあげたといっても決して過言ではありません。実際、新聞報道によると、昨年の結果を受けて、中央交通安全対策会議会長でもある麻生太郎首相は「今後10年間をめどに、さらに交通事故死者数を半減させる」との談話を発表しています。
★しかし、昨年の交通事故発生状況は、賞賛に値する成果であることは確かですが、なぜ、かくも減ったのか、それがよくわからないというのも実態です。罰則強化による飲酒運転(事故)の減少、少子化による若年ドライバーの暴走型の事故減少、原油の高騰や不況による車の乗り控え・買え控えによる交通量の減少などの要因が相まってのこととは思いますが、交通事故死の激減、交通事故そのものの減少要因の決定打といえるほどの裏づけもないのが実情です。
★しかも、その一方で、国をはじめ地方自治体やその関係団体の末端に至るまで、いわゆる経済・財政の悪化の影響を受けてか、交通安全対策関係予算は近年、毎年確実に縮小され、地域における交通安全活動が停滞しつつあるのも紛れもない実態です。そうしたなかで交通事故・死が減少し続けているのは、やはり、不可解といわざるを得ません。「今後10年間をめどに、さらに交通事故死者数を半減させる」ためには、これらの疑念・不可解さをしっかり解明し、正しい現状認識を共有したうえで、明確で合理的・効率的な交通安全対策を確実に実行していくための基盤整備を具体化することが不可欠であることを指摘しておきます。
★この20日に正式に第44代のアメリカ大統領に就任したバラク・オバマ氏はCHANGE(変化・変革)をキーワードに掲げ、米国初の黒人大統領となりましたが、正に時代は世界的な大変化・大変革を必要としています。奇しくも、昨年の日本社会を象徴する漢字は、大変の変、激変の変が選ばれましたが、今年新年は、オバマ氏の言うCHANGEの「変」、変化・変革が具体化し、社会の行く先に光明が見える年になることを大いに期待したいものですが、交通事故をさらに減少させ、「今後10年間をめどに、さらに交通事故死者数を半減させる」ためにも、同様に、安全意識を高め、速度を落として適法に運転すれば、交通事故は防止できる―というこれまでの交通安全に関する古典的建前的な視点のみならず、「人―車系」の制御特性を踏まえた科学的で合理的な視点での交通安全の諸対策と取り組みが、今こそ必要だと思わざるを得ません。(2009年1月21日)