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2018年8月23日

ホームページの内容を一部リニューアルしました。トップページに掲載されていた「シグナル交通安全雑記」は、交通安全時評内でお読みいただけます。

最終更新日:2018年9月25日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その135 マナーについて
交通リスクコンサルタント 小林 實

ファスナー合流

 交通工学では「ファスナー合流」という言葉があります。これは、ジッパー合流とも言いますが、ちょうどファスナーの左右が順序良く交わっていく状況を比喩したものです。例えば、前方の道路が工事中であるとか、事故の発生により車線が縮小するような場合、並進している車線上のクルマが交互に譲り合いながら走行をして織り込む形になることを指します。
 こうした譲り合いというのは、一つの運転マナーだといえますが、クルマ社会の初期にはなかなかこの譲り合いができず、我も我もと先を争い、ついにはにっちもさっちもいかない、いわゆる「チョーキング現象」(デッドロックとも言います)が生じました。実際に経験された方も多いのではないでしょうか。チョーキングとは英語で「窒息する」という意味で、まさに車が身動きの取れない状況となります。
 かつてフィリピンのマニラでは、停電が多く、交通信号機が消えることもしばしばありましたが、交差点に我も我もと車などが突っ込んできますので、こうしたチョーキング現象がよく発生したものです。

譲り合いのメリット

 交互に譲り合うというマナーが定着したのは、こうした方が結局は早く抜けられるし、お互い気持ちがいい―ということをドライバーが学習したからにほかなりません。大阪で、右折専用レーンを設置し始めたころのことです。誰もが早く右折したいという気持ちから、交差点内が右折待ちのクルマであふれてしまい、かえって渋滞を招いてしまう結果となりました。しばらくして、レーンを守り、順に動けばスムーズであることに皆が気づき始め、車の流れが落ち着くようになったことを記憶しています。
 もっとも、我が国にクルマ社会が出来上がったころには「運転マナー」なる言葉も存在していなかったような状態でした。渋滞するクルマから平気で煙草の吸い殻をまとめて外に投げ捨てたり、右・左折の際にウインカーも出さないで曲がったりするドライバーはざらにいました。当時は道路が舗装されていないところが多く、大雨ともなれば、スピードを落とさず水たまりをバシャッとはねていく車も多く、歩行者は絶えず水はねに気を付けなければならなかったのです。
 ところで、マナーの根底にある思想とは、相手に不快感を与えないこと、相手に迷惑をかけないこと―とされています。交通の場というのは単独で構成されるものではなく、そこにはクルマや歩行者、バイク、自転車など多くの他車(者)がかかわっています。その間の交渉といいますか、関わり合いのなかで、ルールという規則の範囲を超えた「思いやり」といったマナーが必要となります。
 ルールを守るということは、何々しなくてはいけない、英語のマスト(must) の部分に当たり、「義務」のレベルです。マナーをわきまえるというのは、何々したほうがいいという「任意」のレベルになります。つまり、マナーというのは安全で円滑、かつ快適な交通環境を構築するためのものであり、これらに配慮しながら、その場に必要なものにウエイトを与えるという柔軟性のある運転を目指すことだといえます。つまり、道路交通法という比較的厳格な存在に対し、現実の交通状況にうまく対応する際にこのマナーというものが必要になるわけです。

自転車のマナー

 道交法52条では、自転車は夜間の走行時には前照灯をつけなければならない―と規定されていますが、ライトをつけるのは格好悪い、暗い夜道でも自分は見えているというのが無灯火で走っている人たちの言い分です。
 無灯火の指導警告票(イエローカード)の交付件数は2006年に69万件もありましたが、この10年間で約20万件減って49万件になっています。これは、警察官による街頭検問の効果もあるでしょうが、法律に違反しているから…というよりも、自分は見えているが他の歩行者には気づかれにくいことを理解し始めた人が徐々に増えてきたからではないでしょうか。
 しかし、歩行者が自転車に対して無灯火以上に脅威を感じるのは、音もなく近づいてすれすれで追い越していくことです。ことに、歩道上でその危険性が高いといえます。高齢歩行者はとっさに方向を変えることも多く、自転車との接触事故も多発しています。自転車が歩行者を追い越すときは、まずスピードを落とし、一声かけていくことが望まれます。歩行者にとっては、背後から音もなく近づいてくる自転車はまさに忍者なのです。

企業とマナー

 企業にとってマナーの良い運転は不可欠でしょう。ことに、トラックなどは企業名が書いてあることも多く、いわば衆人環視のなかでハンドルを握っているわけです。こうしたときにちょっとした運転行動、例えば交差点で信号無視を意図的にやったような場合、「なんだ、あの会社は!」となってしまい、すぐインターネット上などで情報が拡散します。
 良いマナーを定着させることは、「さすが、あの会社ならでは」という企業イメージの向上のためにも重要でしょう。特にプロドライバーには、狭い道でむやみにスピードを上げて走るような行動を控えたり、坂を下るときは上ってくる車がないかどうかを十分確かめてからゆっくりと走行したりするような好ましいマナーが欲しいところです。

新しい時代のマナー

 最近の「歩きスマホ」は一種の社会現象となっています。かつて、人間は歩いているときには周囲の状況に目を配り、頭のなかで様々なことに思いを巡らせたものですが、スマホの登場でこれががらりと変わったのです。自分は自分の世界に埋没し、他人には迷惑をかけていない…と主張するのがスマホ族で、別段マナー違反はしていないという意識があるようです。
 立ち止まって使う分にはまだいいのですが、これがひとたび歩き出すと状況は変わります。周囲の様子に無神経となり、他の歩行者と衝突する事態が頻発します。自分では見えていると錯覚していますから始末が悪い。下手をすると本人が駅のホームから転落する事故まで発生するわけです。これは、マイカーが爆発的に普及し始めたころ、そのスピードに運転マナーというものが追い付けなかった…という事実と何か共通しているようにも見えます。
 近い将来、車の運転が自動化されることは間違いないでしょう。そのとき、相互の認識におけるマナーというものがAI(人工頭脳)とどう協調していくのか、一つの課題としてクローズアップされてくるのではないでしょうか。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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第146回
運転教育とコーチング
第145回
コーチングについて
第144回
かくれんぼができない子供たち
第143回
これからの安全管理
第142回
「駐車場」というワナ
第141回
脅かされる歩行者空間
第140回
台車事故を考える
第139回
「注意」の落とし穴
第138回
デイサービスと安全管理
第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
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第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
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第100回
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第99回
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第98回
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