★平成29年3月12日に施行された道路交通法一部改正により、車両総重量3.5トン以上7.5トン未満などを大きさ等の基準とする準中型自動車が新設され、準中型自動車を運転することができる免許として準中型免許が導入されましたが、これに伴い、「初心者マーク」の表示や「初心運転者期間制度」の適用など、準中型免許や準中型自動車にかかわる規定も整備されました。
★そこで、以下では、準中型免許や準中型自動車にかかわる規定のうち、準中型免許を取得したドライバーや、企業等のドライバーを指導・管理する立場にある安全運転管理者や運行管理者などが知っておくべき規定について、そのポイントを解説します。
※準中型免許で運転できる自動車の範囲については、本項No.9「複雑な新・免許制度において、各免許で運転できる自動車の範囲はどうなっているのか―」を参照。
★周知の通り、普通免許を取得してから1年未満のドライバーは、普通自動車を運転する際、車体の前面と後面の所定の位置に「初心者マーク」を表示しなければなりませんが、準中型免許を取得してから1年未満のドライバーも、準中型自動車を運転する際には「初心者マーク」を表示しなければなりません。
★ただし、準中型免許取得後1年未満であっても、普通自動車を運転する際には「初心者マーク」を表示する必要はないほか、以下の(1)(2)(3)(4)のいずれかに該当するドライバーは、準中型自動車を運転する際も「初心者マーク」を表示する必要はありません。
(1)普通免許を2年以上受けてから準中型免許を受けたドライバー。
(2)準中型免許を受けた日の前6カ月以内に大型免許または中型免許を受けていたことがあるドライバー。
(3)準中型免許を受けた日の前6カ月以内に準中型免許を受けていたことがあり、その免許(直前準中型免許)を受けていた期間が1年以上であるドライバー。(「初心運転者期間制度」による「再試験」の不合格や受験放棄によって「直前準中型免許」の取消し処分を受けた者などを除く)
(4)準中型免許を受けたあとに大型免許または中型免許を受けたドライバー。
※「初心者マーク」表示の所定の位置と方法…地上40cmから120cmまでの間に、前方および後方から見やすいように取り付ける。
※初心者マーク表示の対象者が準中型自動車にマークを表示しなかった場合の罰則等は以下の通り。
罰則…2万円以下の罰金または科料
違反点…1点
反則金…6,000円
★普通、大型二輪、普通二輪、原付のいずれかの免許を取得してから1年以内のドライバーはそれぞれ、普通自動車、大型自動二輪車、普通自動二輪車、原動機付自転車の運転により違反行為をして、以下の(1)(2)(3)のいずれかの基準に達した場合、初心運転者講習が行われますが、新設された準中型免許を取得したドライバーも、免許取得後1年以内に準中型自動車の運転により違反行為をして基準に達すると初心運転者講習が行われます。
(1)1点または2点の違反を繰り返し、累積点数が3点以上になった場合。
(2)一度の違反で累積点数が3点になったあと、再び違反をして4点以上になった場合。
(3)一度の違反または事故で累積点数が4点以上になった場合。
※ただし、以下のドライバーについては、準中型免許取得後1年以内に上記の基準に達しても、初心運転者講習は行われない。
●普通免許を2年以上受けてから準中型免許を受けたドライバー。
●準中型免許取得前6カ月以内に中型免許または大型免許を受けていたことがあるドライバー。
●準中型免許取得前6カ月以内に準中型免許を受けていたことがあり、その免許を受けていた期間が1年以上であるドライバー。
●準中型免許取得後に中型免許または大型免許を受けたドライバー。
★上記(1)(2)(3)のいずれかの基準に達したにもかかわらず初心運転者講習を受けなかった場合や、講習を受けても再び免許取得後1年以内に基準に達した場合には再試験が行われ、再試験で不合格になったり、再試験を受けなかったりした人は、免許の取消し処分を受けます。
★道路標識等による最高速度指定がない高速自動車国道では、自動車の種類ごとに定められている最高速度制限に従わなければなりませんが、新設された準中型自動車の最高速度制限は、普通自動車などと同じ「時速100キロ」です。
★違反行為をした場合にドライバーが支払わなければならない反則金や、違法駐車による放置車両の使用者が支払わなければならない放置違反金の額は、「大型車」「普通車」「二輪車」「原付車」別に定められていますが、準中型自動車は、大型自動車や中型自動車と同じ「大型車」に属しており、準中型自動車の反則金・放置違反金の額は、大型・中型自動車などと同じです。
★企業などの自動車等の使用者は、以下の(1)または(2)の場合、都道府県公安委員会から自動車等の使用制限命令を受け、命令で指定された期間(使用制限期間)中、命令の対象となる自動車等の使用が禁止されますが、使用制限期間は自動車等の種類ごとにその上限が定められており、準中型自動車の使用制限期間の上限は、大型自動車や中型自動車などと同じ「3カ月」です。
(1)「最高速度違反」や「過積載」、「過労運転」の防止措置を講ずるよう都道府県公安委員会から指示を受けたにもかかわらず、ドライバーが、これらの違反行為を繰り返すなどして一定の基準に達した場合。
(2)ドライバーの違法駐車による「放置違反金命令」を受けて一定の基準に達した場合。
※「最高速度違反」などの防止措置…自動車の使用者が必要な運行管理を怠り、ドライバーが業務中に「最高速度違反」や「過積載」、「過労運転」をした場合、都道府県公安委員会は自動車の使用者に対し、その違反行為を防止するために必要な措置を講ずるよう指示することができる。
※一定の基準…(1)の最高速度違反などの違反行為については「1年間に行われた違反行為の合計点数が6点以上」、(2)の放置違反金納付命令については「6カ月間に受けた納付命令が4回以上」になると使用制限命令が出される。(過去1年間に使用制限命令を受けていた「前歴」がある場合は、基準がさらに厳しくなる)
※自動車の使用者が所定の違反行為を下命・容認してドライバーが違反行為をした場合も、都道府県公安委員会から自動車の使用制限命令が出されるが、その使用制限期間の上限は、自動車の種類ではなく違反の種類に応じて6カ月または3カ月とされている。
★聴力が一定の基準に達しない聴覚障害者は、普通免許や大型二輪免許、普通二輪免許、小型特殊免許、原付免許を取得することができますが、新設された準中型免許も取得可能です。
★ただし、準中型免許や普通免許を取得して準中型自動車や普通自動車を運転する際は、以下の(1)(2)のルールを守らなければなりません。
(1)「聴覚障害者マーク」を車体の前面と後面の所定の位置に表示する。
(2)車両斜め後方の死角を解消するために、乗用車の場合は車内にワイドミラーを取り付け、貨物車の場合はサイドミラーに補助ミラーを取り付ける。
※聴力が一定の基準に達しない聴覚障害者…補聴器を用いても10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえない人。
※「聴覚障害者マーク」を表示する所定の位置と方法…地上40cmから120cmまでの間に、前方および後方から見やすいように取り付ける。
(2017年7月31日)
A4判 40ページ カラー ●平成18年6月施行分から最新施行分までの道路交通法一部改正の要点について、わかりやすく丁寧にまとめた冊子です。イラストや写真等を豊富に使用し、詳細な説明が必要な部分には注釈を添えるなど、誰もがしっかり理解できるよう工夫しました。 ●また、参考資料として、「近年の主な道交法施行令等一部改正の要点」、特別企画として、「人身交通事故の処罰規定の変遷」と「飲酒運転の罰則等の変遷」を掲載しました。 |