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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その112 感電のリスク
交通リスクコンサルタント 小林 實

電気柵による事故

 道路標識は見慣れている皆さんでも、下の標識はあまり見たことがないのではないでしょうか? これは「感電注意」の標識で、感電の危険性の高いところに設置されているほか、家電の取り扱い説明書などでも目にすることがあります。

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 先日、静岡県西伊豆町で起きた電気柵による感電事故の現場でも、こうした危険を示す標識や看板を設置することが義務づけられていたはずなのですが、どうやら設置されていなかったようです。仮に設置されていたとしても、水遊びに夢中だった小学生は、おそらく標識には気づかなかったでしょう。この事故は、われわれがごく普通に使っている家庭用電源によるものだっただけにショックでした。
 伊豆あたりでは、イノシシや鹿などの動物による花や野菜の食害が多く、こうした動物が近寄らないようにするため、人体に影響のない程度の電流を流した電気柵を設置しているところが少なくありません。しかも、ホームセンターやインターネットでも購入できるとあって結構普及しているようです。
 ただ、今回の事故を起こした装置は自家製であり、漏電遮断器(15ミリアンペア以上漏電したら0.1秒以内に電気を遮断する装置)が設置されておらず、毎日手動で電源をオン・オフしていた?ということで、たまたま断線したケーブルが何らかの拍子で近くを流れる川に浸かってしまったため、水遊び中の二組の家族連れが感電したわけです。
 担いだ長い釣り竿が高圧線に触れて感電する―といったケースは結構あるようですが、今回のような感電事故はそれほど多いわけではありません。それだけに、電気柵の設置者の安全への配慮が問われます。

海外での感電リスク

 ところで、東南アジア諸国へのビザなしでの入国緩和もあってか、相変わらず海外旅行が人気です。海外旅行のリスクのなかで皆さんが一番心配するのは、おそらくスリや置き引きなどの盗難でしょうが、こうした犯罪とともに想定されるリスクは、豪雨による洪水や家屋の浸水など、自然災害によるリスクです。
 例えばベトナムの首都・ハノイは、湿地の低地に位置し、池や沼地も街のあちこちにあり、すぐ脇には暴れ川といわれる紅河が流れていますから、昔から洪水が頻発しています。記憶にある方もいらっしゃるでしょうが、7年前にも大洪水に見舞われました。
 当時、あたりは人の胸のあたりまで水に浸かったため、何らかの理由で蓋が外れたマンホールにはまって死亡した女子高校生がいたそうですし、西伊豆の事故と同じように、水中で感電死した人もいました。下の写真のように、電線類のほとんどは地下に埋設されていませんから、これらが断線して水中に垂れ下がれば、当然ながら感電のリスクが生じるわけです。念のため、海外旅行では自然災害時のリスクも頭に入れておいたほうがいいでしょう。
 

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作業時の感電

 こうした水辺に限らず、夏の現場作業中にも低圧の感電事故が起きやすいそうです。その理由は、(1)暑さのために着衣が半袖になるなど皮膚が露出しやすい、(2)作業者の発汗により皮膚自体の電気抵抗や、皮膚と充電物との間の接触抵抗が減少する、(3)暑さのため、本来つけるべき防護具の使用を怠りがちである―といった理由が挙げられます。
 また、これは夏の事故ではありませんが、今から10年以上前、東京の新宿区で、当時18歳の男性工員が耳につけていたピアスが、電気室内にあった変圧器の電線にたまたま触れて感電死した―というケースがありました。外部から引き込んだ6,600ボルトの高電圧の電気を100ボルトに変換する変圧器の通電試験をしている最中に起きたようですが、作業開始前の管理者の点検に問題があった―という理由で、管理者が業務上過失致死容疑で書類送検されました。電気関係の工事作業者が重装備をしているのは、こうした漏電事故を防止するためですが、現場の監督者は、作業者の服装や身なりなどにもしっかり目を配る必要があるでしょう。
 一方、一般的な作業現場では、電気に直接触れる機会が少ないことから、感電事故には意外と無関心ではないかと思います。しかし、4年前には、台風の直後にバスを運転していたドライバーが、道路をふさいでいた電線を手で取り除こうとして感電死した―という事故も発生しています。こうした感電事故は「指差し呼称」により大幅に減少できる―という報告もありますが、何にせよ企業の安全管理者は、これから台風シーズンを迎えるにあたり、道路に垂れ下がった電線があっても安易に触れないこと、冠水した道路を通行するときは感電の危険があることを、従業員らに周知徹底しておきたいものです。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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