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2017年1月 6日

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2016年11月21日

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平成18年6月施行分から平成29年3月施行分までの法改正の内容をわかりやすくまとめた「近年の道路交通法 一部改正の要点(改訂版)」好評発売中!

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最終更新日:2017年5月23日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その109 自動運転を考える
交通リスクコンサルタント 小林 實

ロボットの進出

 この7月、九州のハウステンボスに「変なホテル」という珍しい名前のホテルが開業するそうです。斬新なアイデアで「変わり続けることを約束する」というコンセプトからつけられたネーミングだそうで、最新の工法やロボットによる自動化を導入することによって人員を削減しローコスト化を図る―という、いわば時代を先取りする形のホテルなのでしょう。ロボットはフロントの受付、ポーターそれに清掃などを担当するそうですが、果たしてこうした新しい試みが受け入れられるのか、大いに興味のあるところです。
こうしたイノベーションは、人工頭脳(AI)の急速な発展によるものといってよいでしょう。オックスフォード大学のオズボーン准教授によりますと、今後、人間の仕事の大半がAIに取って代わられるといいます(『あと20年でなくなる50の仕事』水野操著)。これは一例ですが、通販会社「アマゾン」の配送センターでは、今後1万5千台のロボットを導入することで1,000億円に上る人件費の削減を図る―とのことですから、今人間のやっている仕事の相当の部分がロボットに取って代わられると予想されます。今、社会問題にもなっている「ドローン」なども、今後、宅配などの分野に参入する可能性があるかもしれません。

ドライバーをアシスト

 こうした時代を反映してか、クルマのほうも着々と自動化の方向に動いているようで、明日にでも自動運転が実現するのではないか? と錯覚するくらいです。自動化により、ドライバーがやっていた仕事を、人工頭脳いわばロボットに委ねることになるわけですが、このためのソフト・ハード両面での開発に、車メーカーのみならず「グーグル」などソフト開発をメインとした企業も参入し、しのぎを削っている様相です。
アメリカのネバダ州では、すでに公道での自動操縦の実験が認可されており、カリフォルニア州でも同じような動きがあるようで、グーグル社ではすでに公道で48万キロの無事故走行を実現したということです。今にでも自動操縦が実現しそうな雰囲気ではありますが、前途にはまだ解決すべき課題もあるようです。
すでに多くのクルマに装備されている「クルーズコントロール」も、前の車との距離を自動的に調整する機能を備えるなどかなり進化しており、特に高速道路走行時のドライバーの疲労軽減に役立っているようです。また、追突防止装置や駐車をアシストするシステムなどもすでに実現しており、基本的な制御機能であるとかセンサー機能はすでに存在しているわけです。
「車線逸脱防止装置」などは今後さらに普及するものと考えられますが、問題は、道路環境の情報をどう取り込むか―であり、路車協調システムの高度化がさらに必要となります。近年、レーザーレーダーで自車周辺の3次元空間を取り込み、地図データと総合することで正確な位置を確定できるシステムが開発されつつありますので、完全な自動操縦もあながち夢ではないことになります。

時代に法律が追いついていない…

 こうした自動化により、ドライバーの運転負担が軽くなることは間違いないのですが、モラルハザードといいますか、クルマに対する依存心が大きくなれば、人間が本来持つべき注意力などを喪失しかねない事態になることが危惧されます。クルマの運転の主権はドライバーにあり、という前提を崩すわけにはいかないでしょう。
日本の道路交通法第70条では、ドライバーは各種の装置を確実に操作し、交通状況に応じた速度と方法で運転しなければならない―とされているため、自動運転における、いわゆる「レベル2(複数の操作を人間に代わって機械が行う)」までしか対応できないことになります。また、わが国の加盟しているジュネーブ道路交通条約(1949年)でも、その第8条において「運転者は、常に、車両を適正に操縦し…」とあり、現在の法律体系では、ドライバーは運転席を離れたり、ハンドルから完全に手を離すことは禁止されています。つまり、自動化を推進するためには、クルマ時代の初期に作られた法律を改正する必要があるわけです。
世界の趨勢は着々と自動運転の方向へと進んでいますが、現実にどこまで自動化が可能であるか―については、まだ問題が山積みです。今のところ2020年までが導入期、2040年までがプロセスの高度化、2050年頃が自動化の成熟期になるのではないかと思われます。

ドライバー心理とのせめぎあい

 では、自動運転の車が実際に公道を走り出した際の初期の問題を考えてみましょう。自動運転の車は法順守を徹底する、ある意味で杓子定規の運転になるはずです。つまり、信号をきちんと守り、人間のやるような臨機応変の融通の利いた行動(例えば、譲り合いといったような)であるとか、危ない行動(リスクテーキング)などはしないと考えられます。
こうした場合に、自動運転ではない一般車両のドライバーがイライラして、無理な追越しをかける、車間距離を詰めるといった行為をしないとは限らず、追突事故などが結構起きるのではないかと懸念されます。アメリカの自動運転の実験車両に「この車は自動操縦の車である」ことを明記した大きめのナンバープレートをつけることが義務付けられているのは、こうした理由からでしょう。
自動運転になったらドライバーはどこを向いてもいいのだ、何なら飲酒しても大丈夫…などと考える人もいるかもしれませんが、ドライバーはあくまで車を正常に保つ義務が課せられていますので、そんなことはありません。
自動運転を何らかの理由で手動に切り替える事態も想定されます。事故などで渋滞している道路で長いあいだ待たされ、イライラしたドライバーが手動に切り替えることもあるでしょう。その際における人間の運転能力の低下も考慮しなければなりません。また、自動運転が広まった場合、従来の運転適性の基準も変わるかもしれません。例えば、機械のやることに人間サイドが従順である―といったような適応性が求められるかもしれません。
これはかなり将来のことでしょうが、仮にこうした自動化が進むと、ドライバー管理の仕方も変わるはずです。例えば、自動運転によって居眠り事故は減る可能性が高いでしょうが、ドライバーの注意力をいかに高いレベルに保つか、彼らが異常事態に即時対応できる高い能力をどう維持するか―などが課題になってくるでしょう。

「人動車」との決別

 私もかつて指導を受けた東京大学の平尾収先生は、クルマは人が動かすものであるという発想から、自動車ではなく「人動車」という概念を提唱されました。人間機械系のなかの「人間」の部分に関心を持ち、人間の見込み違いが事故の最大の原因である―としたわけです。そして、人が動かす車は自律的なシステムだが、これが自動化されると他律的なシステムになるため、人間の力の及ばない部分ができる―との懸念を、当時から示されていました。
仮に将来、クルマの自動化が進むとすれば、それは先生の言われる「人が操るクルマ」の発想から、まさに文字どおり「自動車」へと回帰することになります。アメリカのアイザック・アシモフは、ロボットの条件として「人に危害を加えない」ことを挙げていますが、果たして、自動運転が人間を幸福にするのでありましょうか…。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
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第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
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第95回
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第94回
歩道橋について考える
第93回
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第92回
交通違反の悪質性
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カクテルパーティー効果
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第79回
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