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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その103 10年後の交通を読む
交通リスクコンサルタント 小林 實

自動車の安全性が向上

 10年一昔とはよく言ったもので、この10年は本当にあっという間でした。ことに筆者のような高齢になりますと、その感はより強くなります。では、この10年間で、道路交通にはどういう変化が起きたのでしょうか? まず交通事故の実態を見てみましょう。
 10年ほど前の平成15年は、交通事故による死者数(24時間以内)が7,768人と、ピークであった昭和45年を100としたときの指数で46と半分以下にまで減らした年です。さらにそれから10年、すなわち平成25年には、この指数が26となり、実数で4,373人まで減少しました。この5年間だけ見ますと、いずれも5,000人の大台を割っていることも特筆すべきでしょう。
 なかでも、自動車乗車中の死者数が、歩行中の死者数を下回ったことに注目すべきです。衝突時に衝撃を軽減する装置の効果は重要であり、ハードとしての車の安全性が大きく貢献している証拠と見ることができます。また、シートベルトの着用率をみると、平成15年に一般道路での運転者で89.4%でしたが、平成26年には98.2%まで上昇しています。同様に助手席の着用率も93.9%とかなり高くなっていますが、後部座席では、高速道路でもまだ70%ほどにとどまっているのが現状です。今後、着用推進キャンペーンなどにより、この数字が少しでも上がっていくことを期待したいところです。
 次に、歩行者の事故を見てみましょう。昨年の歩行者の死者数は1,584人でしたが、このうち65歳以上の高齢者が1,117人と実に70.5%を占めていることに注目しなければなりません。これはまさに高齢社会を象徴する数字であり、今後この割合はますます増加すると見るべきでしょう。
 一方、交通事故による負傷者はどうでしょうか? 平成15年にその数は約118万人でしたが、平成25年にはこれが約78万人にまで減り、実に34%も減少しました。かつて、死者の減少は著しいものの負傷者が一向に減らない―という乖離現象が問題になりましたが、このところの負傷者の減少傾向は好ましい方向にあると言えましょう。

「世界一安全」には程遠い…

 では、今後10年間で、交通事故による被害者をどこまで減少させられるか―ですが、24時間死者を3,000人台にもっていくこと、負傷者については年間で50万人以下に抑え込むことができるのではないかと期待されます。平成15年に当時の小泉首相が「今後10年間で死者を5,000人以下にし、日本を世界一安全な道路交通の国にする」と公言しましたが、この目標の半分は達成できたと言えます。しかし、果たして「世界一安全な道路交通の国」になってきているでしょうか…。歩行中、猛スピードですり抜ける自転車にしばしばヒヤリとさせられることを思うと、「世界一安全」と言うには程遠いというのが実感です。
 高齢者の歩行中・自転車乗車中の事故は、健康老人が増え、社会参画の機会も増えてきますので、今後も増加の可能性が高いと言えますし、認知症などによる夜間の徘徊老人もまた増えるでしょう。家族や地域による監視がより必要になります。

ソフト面での対策の効果に期待

 さて、交通事故の被害を抑止する方策としては、大別して、(1)事故発生以前の「予防安全」、(2)事故発生時の被害の軽減を図る「衝突時安全」、(3)事故発生後の救命救急を主体とする「事故後安全」の三つがあります。これまでは、主にハード主体の「衝突時安全」と、「事故後安全」の対策が功を奏して死者の減少につながっていると言えます。
 今後は、ハード面での「予防安全」として、「追突防止装置」や「車線逸脱防止装置」などがさらに普及するものと考えられます。また、自動操縦の分野も今後10年で進化するものと考えられますが、道路環境の情報をいかに取り込むか、路車協調システムの高度化が必要となります。近年、レーザーレーダーで自車周辺の3次元空間を読み取り、地図データと連係することで正確な位置を確定できるシステムが開発されていますので、完全な自動操縦もあながち夢ではないでしょう。
 ただ、こうした自動化によってドライバーの運転負担が軽くなることは間違いありませんが、モラルハザードといいますか、クルマに対する依存心が大きくなると、人間本来が持つべき注意力などが喪失しかねません。「運転の主権はドライバーにあり」という前提を崩すわけにはいかないでしょう。
 こうした「Engineering(ハード主体の技術)」の進化はもちろん大切ですが、教育や訓練の分野での「Education」や、警察による指導取締りなど「Enforcement」も含めた「三つのE」が重要であることは言うまでもありません。しかしながら、これらソフト面での対策のもたらす効果というものは、なかなか数字に表れにくいものです。今後は、こうしたソフト面での地道な努力が実を結ぶことにも期待したいところです。

自主型への進化が問われる安全管理

 このように大きく変化し続けている道路交通ですが、企業にとって今後10年の大きなリスクは、今と変わらず交通事故による損失でしょう。しかし、それを防ぐための手法は頭打ちであり、またマンネリ化していると言われます。企業の安全管理というと、どうしてもトップダウンの「言われたらやる」という強制型から脱しきれないケースが多いようですが、これからは、自らやろうとする「自主型への進化」が問われます。何をすべきかを全社的に考え、これを実践していく―という、守りから攻めへのチェンジが期待されるところです。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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忖度こそ安全マナー
第131回
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運転の自動化とドライバー
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