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最終更新日:2017年10月12日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その102 若者との接し方 指導教官の話から
交通リスクコンサルタント 小林 實

相手の行動を読めない…

 「今の若者は何を考えているのかわからない」という声は、ことに大人たちから聞こえてきますが、これは今に始まったことではありません。若者に接する機会の多い仕事、たとえば自動車の教習指導に当たる教官の方たちも、若者にはかなり苦労されているようです。彼らに若者の特徴を聞いてみますと、いくつかのことが挙がってきました。

1.「素直なふりをする」
 何とか早く免許証を手にしたい―というのが、彼ら若者の教習所に通う最大の動機であることは自明です。そのため、指導教官のいわば「ロボット」のごとく仮面をかぶり、少々いやなことも平気でいて、「ブレーキの踏み方が甘い、遅い」と言われても、素直に聞いているふりをします。おそらく心のなかでは、教官の意見と対立して不協和が生じているのでしょうが、教官の言うことを素直に聞いているふりをして、この不協和を解消しているのでしょう。

2.「自己中心者が多い」
 現代のネット社会を生きる若者にはそれなりの特性があり、その一つとして「自己中心性が強い」ということが挙げられます。つまり、他人も自分と同じ発想をするものだと考え、相手の行動は千差万別であることを理解せず、物事を実際に体験する前に自分の尺度だけでとらえてしまう傾向があるのです。
 車の運転中にこうした発想をしますと、かなりリスクが高くなります。相手も自分と同じ考えだ―とする思い込みが強いので、「まさか、あの車が出てくるとは思わなかった」というケースが発生しやすく、他の車や人と交錯する交差点などの通行には注意が必要です。

3.「他責に逃げる傾向がある」
 若い人は、直面した場面に対して簡単に「ダメもと」の感覚で処理する、つまり、仮想(バーチャル)の世界でよくやるようなデリートやリセットをすればいい―という発想をする傾向があるようです。ところが、車の運転にはイエスかノーで割り切れない部分、いわゆるファジー(あいまい)な部分が結構あります。
 また、若者は問題が起きると他人のせいにする「他責に逃げる傾向」が強い―と言われていますが、事故が起きた際にも「あれは相手が急に出てきたから…」と主張し、自分の非を認めない傾向があるようです。

4.「早飲み込みをする」
 早飲み込みをするのも、彼ら若者にありがちな傾向です。全部を説明しないうちに「アッ、わかった、わかった」となりやすいので、規則やルールについては具体的に示してやる必要があります。たとえば、交差点の通行方法などを説明する際、単に「信号に気をつけて」「他の車に気をつけて」と言うのではなく、この場面にはどのような危険が潜んでいるか―を具体的に示してやることが肝心です。
 また、普段の注意事項でも「あれ」や「これ」といった指示語ではなく具体的に示すこと、一度に複数の指示をしないことなどもポイントです。

5.「応用動作が苦手」
 一般に彼ら若者は、定型的な「記憶暗記」には強いものの、それをどう応用するか―は不得手のようです。これは、わが国における高校教育の影響かもしれませんが、たとえば山、平野、川のある地形で農業に適する条件を書きなさい―といった問題にはうまく答えられるといいます。逆に、では農業に適さない条件を書きなさい―と言うと、うまく答えられないそうです。
 千差万別の交通場面においてはさまざまな応用が必要なわけで、もし急に相手がとび出してきたらどうするか…といった想定外の緊急時の対応がうまくできないようでは問題です。運転操作という面だけを見れば、彼ら若者は運動神経も高く、うまいかもしれませんが、自己抑制力であるとか、他との共感性といったメンタル面では、経験不足も含めて、必ずしも十分とはいえません。

明確に示すことが大事

 こうした若者の特性を踏まえ、若者を指導する際には「総論イエス、各論ではノー」といった一種のメリハリを付けるべきでしょう。つまり、あなたという存在は基本的に尊重しましょう。しかし、個々の表現・行動については、これはまずいのではないか…といった指導をするのです。何もかもオブラートにくるんだような当たり障りのない対応をせず、こういう行動にはこういう罰則がある―ということを明確に示すことが肝心です。
 また、若い人から何か訴えがある場合には、できるだけ聴いてやる「傾聴」の態度が必要でしょう。こうすることで、「上司は自分の言い分を十分に聞いてくれている」という信頼関係が構築されるわけです。
 このように、若者を指導する際には、スキル(技術)とセンス(思考)のバランスがうまく取れた教育が必要です。若者は自分を正当化する傾向も強いので、添乗指導などの折には「もしかしたら相手はこちらに気づいていない」「もしこちらに優先権があっても慎重に減速する」といった一歩引く行動のとり方を示し、そうすることで事故は容易に回避できることを理解させ、納得させることが必要です。彼ら若者は「交通環境への働きかけ」が十分ではないからです。
 安全運転管理でも同じことで、ちゃぶ台をひっくり返すような「何だ、君の態度は!」という感情を交えた叱責は、すべての否定につながってしまい、結局無意味になりやすいのです。君はこのことに関してどう考えるか、どうすれば解決できるか―という対話を平常心で進めることが肝心でしょう。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。 

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