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最終更新日:2017年8月22日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その101 若者とクルマ離れ
交通リスクコンサルタント 小林 實

クルマに魅力を感じない若者

 若者が車に乗らなくなった、いわゆる「クルマ離れ」という現象がマスコミによく取り上げられています。果たして彼らはクルマから遠ざかっているのでしょうか? 確かに、若者をターゲットとしたバイクの売れ行きが不振であることは事実のようです。こうした状況に危機感を抱いたクルマメーカーは、若者を何とか引き込もうと、彼らをターゲットとした車を開発しています。最近でいえば、ダイハツのコペンなどは着せ替えのできるスポーツカーとして評判を呼んでいますが、若者の反応はいまいちのようです。
 バブル期とそれ以前を体験した者にとって、クルマはあこがれの商品でした。「ケンメリ」のコマーシャルがテレビで流れた時代、若者はそれにあこがれ、今は手に入らないけれども、いつかはあの車に乗りたい―という欲求がありました。ところが、20代男性のクルマへの関心度をみると、2001年には71.2%だったのに対し、2011年には41.8%と大幅に低下しています。現代の若者は、生まれたときから自分の生活において車と共存していますから、かつての若者が持っていたようなクルマに対する憧れは薄くなっているのかもしれません。
 では、彼らのクルマへの欲求はなぜ減ったのでしょうか? 一つはその経済状況にあります。「リーマンショック」以来の不況時代を生きた若者は「そこそこの生活」を望んでおり、「現在の生活に満足している」と答える若者が結構多いことがその証拠です。経費のかかるクルマは、彼らの生活自体を脅かす存在でもあるからです。
 若者の免許取得者の比率は男子で89%、女子で80%となっており、以前と比べてそれほど下がっているわけではありません。地方部での若者の取得率が少し高くなっているのは、クルマに依存せざるを得ない事情からでしょう。一方、都市部での免許取得の動機というのは、証明書代わりに便利だし、とりあえず取っておこう―という程度であり、免許の必要性と車の運転とが直接関係していないところに問題があります。

「コスパ」を求める若者

 「コスパ」とは、コストパフォーマンス(費用対効果)を略した若者用語ですが、現代の若者は、とにかくこの「コスパ」を優先し、「コスパ」が悪い車の所有は敬遠します。彼らにクルマを買わない理由をたずねますと「クルマの利用頻度が低い」「購入と維持に費用がかかる」と言うように、クルマはむしろ「所有したくない」商品になっているようです。今の時代、インターネットの普及により、ある意味、バブル期の若者よりもお金をかけずに多様な商品・サービスを享受できる環境にあるわけですから、消費の物差しが変化していることに注目しなければなりません。人々はより高級なものを購入しようとする「消費のハシゴ」という過去の典型的な消費モデルは大きく変化してしまったのです。
 彼らがクルマを持たずに公共交通機関を使う最大の理由はもちろん「コスパ」でしょうが、クルマに比べて公共交通機関の空間価値が上がっていることも理由の一つでしょう。これは電車のなかの光景を思い浮かべればうなずけることで、今では車内でインターネットを見ることもできるし、メールや「ライン」もできます。彼らにとってクルマは単なる移動手段でしかなく、「運転の楽しさ」といったかつての夢は無意味なものなのかもしれません。

つながっていたい若者

 「いつもつながっていたい気持ち、わかります?」
 これは最近のテレビコマーシャルで流れるフレーズです。「ライン」などのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で常に誰かとつながっていたい、そうでないと心配だ…という現代の若者の心理を象徴したものといえるでしょう。
 彼らは、このための経費は惜しみません。人付き合いのための「ちょこちょこ消費」は惜しまない代わりに高額消費は敬遠します。こうした彼らを取り巻く環境が変化したことにより、クルマへの関心が薄くなっていったわけです。
 彼らは「クルマでのアピールはイタイ」と言います。「イタイ」とは痛々しいから転じた若者用語で、「勘違い」「場違い」といった意味で使われています。自分らしさを表現するものとして、現代の若者は第一に「スマホ」や「携帯」を挙げ、男性の場合、「クルマ」は「バッグ・リュックサック」に次いで第4位になっているという調査結果もあります(女性では「クルマ」というものは自己表現の対象にもなっていません)。つまり、クルマという道具は、かつての地位をスマホや携帯に譲った―といってもよいでしょう。
 こうした「車を利用しない交通行動」、特に「サイバー空間での移動」は欧米ですでに高まっているといわれています。「物理的移動(physical mobility)」に対して「バーチャルな移動(virtual mobility)」という対立概念がありますが、ミシガン大学のシバック教授の言葉を借りるまでもなく「電子機器によるvirtualなコンタクトが現実世界のコンタクトの必要性を低下させている」ことは明らかであり、若者のパートナーは、クルマという道具からネットの世界へと大きく様変わりしているのです。言い換えれば、メールやSNSというツールが、若者のクルマでのドライブを代替している―ということでしょう。

クルマを核としたネットワーク

 企業コンサルタントの小出紘道(こいで・ひろみち)氏はこんな提案をしています。現代の若者がネットワークでつながっていることを重視するならば、クルマを核としたネットワーク構想というものがあるのではないか―というものです。たとえば、クルマメーカーが比較的安価な若者向きのクルマを開発し、これを格安料金で若者に提供する。ガソリンスタンドやパーキング業者とも提携して事業を展開し、すべてをカード決済として、このカードで提携コンビニでも買い物ができる。つまり、クルマ関連事業者が一体となって事業を展開できるような仕組みを考え、これを社会実験として特定都市で展開する(たとえばマツダが広島市で、トヨタが豊田市で展開してみるといった具合に)。そうすれば若者がクルマを単なる移動手段としてだけでなく、そこに付加価値を求めることができるのではないか―という発想です。
 現在、日産と横浜市が「チョイモビ」と称して実験的に事業を展開していますが、その実験結果によると、意外と若者の利用が少ないようです。そこには若者の求める付加価値が何か不足しているのかもしれません。

 

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

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血液型と性格
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