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2017年1月 6日

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最終更新日:2017年5月23日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その93 死亡事故の減りにくい部分
交通リスクコンサルタント 小林 實

4,373という数字

 最近、警察庁から発表された速報値によりますと、昨年平成25年に発生した交通事故による24時間以内の死者は4,373人で、前年よりも38人の減少となっています。これは13年連続で減少している数字だそうで、交通事故による死者数が最も多かった昭和45年の1万6,785人の約4分の1にまで減少したことになります。また、昨年の死者数は昭和26年の数字に匹敵し、当時に比べて車の保有台数が圧倒的に増え、人々の移動がますます盛んになっている現状を考えますと、ある意味で世界的に誇れる数字かもしれません。
 この減少傾向は、すでに言い尽くされたことですが、一つは、クルマの安全性能の向上、シートベルト着用の義務化やエアバッグの効果など、ハード面の進化が功を奏した結果でしょう。さらに、警察による適切な取締りや指導、救急救命態勢の充実、道路施設の改良なども要因として挙げられます。また、これは意外と評価されにくいのですが、教習所や小学校などでの安全教育の普及など、地道なソフト面での対策の効果も挙げられます。
 一方、交通事故による負傷者の数は、平成11年から同19年までの9年間、年間100万人の大台を超えていましたが、昨年は約78万人にまで減少しています。しかし、死者数ほど顕著な減少ではありません。昨年に発生した死傷者における死者の比率は179:1で、約180人の死傷者のうち1人が死亡した計算になります(昭和45年での比率は60:1です)が、死亡者に対して負傷者はさほど減っていない―という両者の乖離(かいり)は、一つの社会問題と受け止める必要がありましょう。今後は何としても人身事故全体を減少させる―という大きな目標が残っています。

交通弱者をどうするか

 行政当局の言う「官民一体の努力の結果」として、交通事故死者数が減少したことは評価できるでしょう。しかし、中身を少し掘り下げてみると、意外に減りにくい部分があることがわかります。その一つとして挙げられるのは、65歳以上の高齢者の交通事故死者が全体の半数を超えている―という部分です。事実、昨年は昨平成24年より39人増の2,303人に達しています。これは、交通事故による死者全体の53%にあたり、この傾向はこのところほぼ横ばい状態です(人口当たりでみれば、この比率は極めて高いことになります)。
 こうした65歳以上の高齢者の事故死者の内訳をみると、「四輪自動車乗車中(同乗中を含む)」が591人(26.1%)、「原付乗車中」が162人(7.2%)、「自転車乗用中」が364人(16.1%)、「歩行中」が1,109人(49.0%)となっており、いわゆる「交通弱者」といわれる歩行者と自転車利用者だけでほぼ3分の2を占めています(下の表参照)。この傾向は、75歳以上の年齢層だけでとらえてもほぼ同じ傾向です。
 さらに、65歳以上の高齢者が占める割合を状態別にみると、「歩行中」では高齢者が67.9%、「自転車乗用中」が64.7%を占めており、高齢者が生活するうえで、移動のために歩いたり、自転車を利用したりという機会が増え、交通の危険にさらされる度合いが高くなっていることがうかがえます。
 問題は、致死率にもあります。致死率とは、死者の数を死傷者全体で割り、これに100を掛けたものです。平成24年のデータによりますと、「四輪自動車乗車中」の致死率は0.27、「自動二輪車乗車中」は1.06、「原付乗車中」は0.59、「自転車乗用中」は0.43、「歩行中」は2.48となっており、「歩行中」は「四輪自動車乗車中」の10倍近いリスクをもっていることがわかります。65歳以上の高齢歩行者の「道路横断中」に限ると、その致死率は7.69となっており、高齢者層の道路横断という行為(ことに違法横断)のリスクがいかに高いか―がわかります。
 このことは、車に乗っている人は交通事故に遭ってもケガで済んでいるケースが増えているのに対し、「交通弱者」の場合は一向に良くなっていない―ということを示しています。一市民の立場からすれば、交差点での信号無視など、歩行者を軽視したドライバーの摘発、さらには高齢歩行者の保護といった交通監視や指導を強化してほしいところです。
 

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高齢歩行者との共存を図る

 各種のアンケート調査の結果によれば、自転車や歩行者という「交通弱者」を邪魔な存在と感じているドライバーが多いようです。歩行者が青信号で横断歩道を渡っている最中に、右・左折を急ぐドライバーがイライラして、早く歩けと言わんばかりに車をずるずると動かす光景は、その一つの証拠でしょう。しかし、高齢歩行者の被害が極めて多いことを考えれば、こうした邪魔者扱いはやめなければなりません。
 高齢歩行者の歩行速度が遅いこと、彼らが時として途中で止まったり、方向変換すること、赤信号でも歩き出したり、横断歩道以外を平気で渡ったり…といったことが頻発する今日、ドライバーには、さらなる自己防衛手段をとることが求められています。高齢歩行者に対して回避動作を求めることはまず難しいことから、これをドライバー側が担う必要があるわけです。高齢歩行者の心理としては「俺は高齢歩行者なのだ」という自負心(?)があることを、ドライバーは理解しておいたほうがよいでしょう。
 安全運転管理者の皆さんも、朝礼などで高齢歩行者がかかわる事故が頻発していることを強調してほしいところです。たとえば、夜間に横断禁止の広い道路を走っているときでも、もしかすると違法横断する高齢者がいるかもしれない…と警戒心を高めること、さらに、交差点での右・左折の際、死角に入りやすい歩行者の確認徹底を図ることにより、思わぬ事態が避けられることをお伝えください。管理者が「歩行者を見たら黄信号、高齢歩行者を見たら赤信号」と口うるさいほどドライバーに声をかけることにより、彼らの安全意識が高まり、それが安全行動へと変容するのではないでしょうか。
 
 

筆者プロフィール

小林實(こばやし・みのる)

 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。  

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タイヤ以外、何に触れても事故である
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