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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その86 企業とゾンビ族
交通リスクコンサルタント 小林 實

競技の世界にもいる「ゾンビ」

 有名なホラー映画「ゾンビ(Zombie)」が日本で公開されたのは1979年のことで、原題は「Dawn of the Dead(死者の復活)」でした。この映画のストーリーは、全米各地で突如死体がよみがえり、人間を次々に襲い始め、社会全体がパニックとなった…という設定から始まり、これらゾンビの襲撃から逃れるため、フィラデルフィアのショッピングモールに人間の男女が立てこもり、ゾンビと戦う―というものでした。アメリカバージョンでは、結構残酷なシーンがありましたが、日本版ではかなりカットされていました。
 ゾンビというのは、もともとアフリカのコンゴで信仰されている神「ンザンビ(Nzambi)」に由来するといわれ、その後、コンゴ出身の奴隷仲間により西インド諸島や中米に伝播したものとされています。
 娯楽競技の一つに「サバイバルゲーム」というものがありますが、デッド(戦死)になったプレーヤーがルールを無視してプレイし続けることを、この映画になぞらえて“ゾンビ”と言うそうです。また、自転車競技のロードレースでも、タイムオーバーで棄権扱いになった選手を、主催者による救済措置として次のステージで復活させることを俗に「ゾンビルール」、このルールで復活した選手自身をゾンビと言うそうです。

大きな組織の弱体化を招く「ゾンビ族」

 ところで、企業の危機管理の分野で著名な牛場靖彦氏によりますと、企業には「ゾンビ族」と言われる人が多く存在するそうです。これは、見た目は堂々とした巨木(大企業)でも、中は「ゾンビ族」というシロアリに食い荒らされ、いつ倒れるか分からない企業が結構ある―ということで、大きな組織の弱体化を意味しています。
 牛場氏は、われわれが住んでいる地球という社会は、大きな変動のなかでハザードにさらされ、そこに発生するリスクに立ち向かわなくてはならない―、また、企業で心ある人間として生き抜くためには、気概や独立心をしっかり保ちつつ、自分がこれからどう生きていくかという主体性をもつことが大切だ―と強調されています。
 企業のなかにあって八方美人的であり、建前論に拘泥したり、自分のポストに汲々としたりするタイプの人のことを「ゾンビ族」と言っていますが、経営のトップは、こうした自社内の空気を読んで、モラルの低下を起こしている「ゾンビ族」をあぶり出すことが重要です。
 現実に、自分はもう管理職を離れた「窓際族」だと割り切って、会社の仕事は積極的にやらず適当にこなし、あとは一日インターネットのサーフィンをしたり、ゲームに熱中したり、果ては居眠りに徹して過ごす人もいるようです。ところが、会議となると先輩面をしていっぱしのことを言う。こうして毎日を過ごしていればよしとするスタンスの「ゾンビ族」が、お宅の会社にもいませんか?

「ゾンビ族」をつまみ出して会社を活性化

 これを交通の安全管理に置きかえるとどうでしょう。任期満了まで何とか不祥事がなければいいがな…と思いつつ毎日を過ごす、決して新しいことには挑戦しない、旧態依然の管理業務に終始している管理者はいませんか? こうなると、ドライバーのほうも軽微な事故などは報告しなくなり、社有車も汚いまま乗り過ごしてしまいます。
 また、安全運転のことはよくわかっている、自分流が一番だとばかり、人の意見にはまったく耳を貸さないような「オレ流」に徹しているベテランドライバーも「ゾンビ族」と言えますし、免許など取らなくても運転なんかできる、捕まらないように目立たなければいい―という一部の悪質なドライバーも「ゾンビ族」でしょう。
 こうした社内にはびこる「ゾンビ族」をつまみ出して会社を活性化することも、安全管理者に課された仕事の一つではないでしょうか。
  

筆者プロフィール

小林實(こばやし・みのる)

  1959 年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所 勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

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第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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