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最終更新日:2017年4月24日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その74 仮眠と過労
交通リスクコンサルタント 小林 實

仮眠はドライバー個人の恣意に任されがち…

 先日、関越自動車道で発生したツアーバスの激突事故は、運転手の居眠りが事故の直接的な原因とされています。乗客の話によれば、このバスがサービスエリアに停車した際、運転手はハンドルにもたれかかって仮眠していたそうですから、このときすでに眠気を催していたのでしょう。
 仮眠とは仮の眠り、つまり一時的に睡眠をとることですが、仮眠とひとことにいっても、その内容は明確ではありません。このバスの運転手も、事故前日の朝、東京ディズニーリゾートから金沢に戻り、仮眠をとるため、午前8時ごろホテルにチェックインしています。そして午後4時半ごろにホテルをチェックアウトしていますが、彼はこの間、どの程度仮眠をとったのでしょうか。新聞報道などによりますと、別のアルバイトのため電話連絡に終始していたということですから、仮眠とは名ばかりのものだったといえるでしょう。このあたりはドライバー個人の恣意(しい)に任されている—というところに、管理上の一つの落とし穴があります。
 最近ではかなり少なくなってきたようですが、南イタリアやスペインでは「シエスタ(siesta)」と称し、昼食後に昼寝をする習慣があり、そのために職場から一度自宅へ戻るそうです。だから子どもができやすいとか、交通事故が増える(通勤が倍になるため)といった、まことしやかな話までありますが、20分程度の仮眠でも、人間の注意力は全体的に増し、生産性も向上する—といわれています。
 なお、業務中の仮眠時間は、労働者が使用者の指揮系統下にあることから、労働時間に含まれる—とされています。「労働時間ではない」というためには、労働からの解放が保障されている必要があるのです。復習しますと、「拘束時間」とは運転・荷扱い・手待ち時間を足した「労働時間」と、仮眠を含む「休憩時間」を合わせたものになります。終業から次の始業までのあいだを「休息時間」といい、これは拘束時間に入りません。

居眠り運転を日常的に経験…

 長時間運転といった労働の結果、慢性的な休養不足により疲労が蓄積しやすい—というのは以前からよく知られていることで、これが「過労」につながります。睡眠環境の悪さをどう克服するか—は、プロドライバーの大きな課題といえるでしょう。
 トラックドライバーを対象にしたある調査によれば、睡眠時間が5時間未満の群を1とした場合、それ以上に睡眠時間をとる群では居眠り運転が0.3、ヒヤリハットが0.43と、こうした危険は明らかに少なくなっています。また、ドライバーの65%は眠気による危険を感じたことがあり、このうち68%は居眠り運転の経験がある—という報告もあることから、長距離運転のドラックドライバーは、居眠り運転を日常的に経験している—といえるでしょう。これは、恒常的な睡眠不足によるところが大きいのですが、定時走行を強いられる心理的なストレスや、不規則な食事・生活時間なども一因でしょう。

夜間勤務で生じる「二つのズレ」

 夜間運転もそうですが、夜間勤務者には「二つのズレ」が生じます。一つは「生体リズム」のズレです。通常、夜間はそれほどエネルギーが必要ではないため、エネルギーの消費が少なくなり、体温も低下します。午前4時ごろに体温が最低、つまり、心身の活動が最も不活発な状態になるため、緊張は持続していても何となく眠い…といった感じになります。この時間帯は、特に注意が必要でしょう。また、昼間の仮眠のように、生体リズムにおいて、活動に適した体温の高い時間帯にとる短時間の睡眠では、睡眠の質が悪く、十分な疲労回復は望めません。
 もう一つのズレは、「生活リズム」のズレです。常日勤者は「睡眠→勤務→自由時間」というリズムで活動していますから、前日の勤務時の疲労は回復しやすく、過度な疲労にはなりにくいのです。これに対し、夜勤交代者は「睡眠→自由時間→勤務」というサイクルになりますから、自由時間での活動が疲労となり、これが夜勤時の過度な疲労へとつながりがちです。
 また、夜勤労働者の高齢化が進むと、疲労の進展が早く、回復も遅くなる—という構図になりやすいことも、今後の大きな検討課題でしょう。過労死がよく話題になりますが、その7割以上は中高年です。長時間労働や過大なノルマに対して、「自分ならできる」という中高年特有の頑張りが作用し、事態を悪化させるのです。その対策として、「勤務編成による対策」「勤務中の疲労対策」「職務に対する対策」などが考えられますが、睡眠の調整については個人の恣意に左右されるため、面接などによる指導が不可欠です。
 今回の関越自動車道での事故を受けて、国土交通省はトラックへの居眠り運転防止装置の取り付けといったハード対策を考えているようですが、これはいわば対症療法であり、逆に一種のモラルハザード、すなわちドライバーの緊張感をそぐことにもなりかねません。それよりも、厳しい労務管理といったものを企業に課し、それを徹底させるような原因療法が必要でしょう。加えて、企業やドライバー側にも、睡眠・仮眠・過労について正しく理解・認識することが今求められています。

 

筆者プロフィール

小林實(こばやし・みのる)
 1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

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現場の声を聞く
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10年後の交通を読む
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