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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その67 スウェーデンとアルコール
交通リスクコンサルタント 小林 實

高い税金は、健康促進が狙い

 デンマークでは、今年10月1日から「脂肪税(fat tax)」なるものを導入しましたが、目下これに対する賛否両論が沸き起こっています。これは、バターなど飽和脂肪酸を一定以上含む食品に対して課税するというもので、脂肪の取りすぎに注意して健康を促進しようという政府の意図があるといわれています。「脂肪税」は、飽和脂肪酸1キロ当たり16クローネ(約220円)が課せられるそうですが、これを250グラムのバターに換算すると2.2クローネ(約30円)の値上げとなり、庶民にとっては結構厳しい数字です。また、隣国のスウェーデンでは酒税を極めて高くしていますが、この狙いも健康促進、ここではアルコール依存症(いわゆるアル中)を減らす目的があるようです。
 北欧諸国は日本と違い、いわゆる「全国民福祉社会」を目指していますから、社会保障への支出も多く、税金が高いことでも有名です。消費税は12%から25%で、一時的に滞在する旅行者に対しても課税しますから、どうしても北欧は物価が高いという印象をもってしまいます。

公認のお店でしか買えない酒類

 ところで、北欧4国は歴史的にいわゆる「ウオッカベルト」の一部をなしており、国民は強い蒸留酒を愛飲しています。かなり前のことですが、フィンランド航空に乗った際、皆がウオッカを注文するのに驚いたことがあります。蒸留酒も、ウオッカのような高級なものや、アクアビット、シュナップスなどがあり、貯蔵食として有名なニシンの塩漬けとともにショットグラスでグイッと飲む光景は、さすが酒飲みの国というか、バイキングの末裔といった感じがします。
 スウェーデンでは、こうした昔からの飲酒癖をなくそうと、農村地帯を中心に1922年ごろから禁酒運動が盛んになりました。政府も1905年に酒類の販売独占化を図り、1955年ごろまでは配給制だったということです。今、スウェーデンでお酒を買おうと思ったら、政府直轄の非営利組織である「システムボラーゲット(System bolaget)」で平日の10時から18時まで(土曜日は13時まで)に購入しなければならず、自動販売機でビールなどを買える我々日本人からすると、実に面倒です。また、お店の数も少ないので旅行者などは探すのに苦労しますし、お店に行っても、ショーケースに並んでいるお酒の見本の番号を申込用紙に記入し、自分の番号を呼ばれるまで待たなければなりません。
 とにかくアルコール税が高いので、お酒の値段はある意味“目が飛び出る”ほどです。たとえばウオッカ1リットル当たりのアルコール税は約200クローナ(2,000円以上)ですから、日本でしたらこの税金分だけで買えるくらいです。酒類の販売を公認の店に限っているのは、国内のアル中を根絶するためだそうですが、朝10時、これらの店の前には、開店を待ちかねたように人がたむろしています。かなり酒臭い人、アル中ではないか…と疑われるような人も小銭をチャラつかせて待っています。スウェーデンでは飲酒運転を厳しく取り締まっているという話ですが、この光景を見ると「本当かな?」という感じもします。

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飲酒運転による事故も多い

 これほど酒類の販売に厳しいスウェーデンですが、面白いことにアルコール含有量が3.5%以下のビール類は、スーパーやコンビニで買うことができます。つまり、お酒というよりは、ペットボトルに入った水のような扱いです。この缶ビールの外側には「勤務中は飲むな!」と記されているのですが、水代わりにこれを飲んで仕事をする人がいるということなのでしょうか…。
 実際、スウェーデンでは2008年、約1万3,000件の飲酒運転が届け出られています。スウェーデンの飲酒運転の基準値は呼気1リットル当たり0.1mgと日本以上に厳しいのですが、重大事故に占める飲酒運転の割合は29%と、かなり高い数字になっています。
 スウェーデンで1996年から交通事故死者が60%も増えているのは、95年にECに加盟したことで規制緩和が図られ、スウェーデン人のアルコール摂取量が年間30%も増えていることと関係があるかもしれません。また、アルコール依存症が飲酒運転と深い関係にあることも報告されています。ストックホルム近くのウプサラで行われた飲酒運転の調査によると、検問で飲酒運転が発覚したのは午前9時から12時の午前中がほとんど—ということですが、これは、前の晩にかなりの量の飲酒をして、翌朝通勤のため運転をした、いわば「二日酔い」による飲酒運転だとみられます。
 こうしたことから、スウェーデン最大の自動車メーカーであるボルボ社を中心に「インターロックシステム」、つまり呼気中のアルコールを感知するとハンドルがロックしてクルマが動かなくなるようなシステムが開発されており、ボルボ社では2012年あたりから自社の新車すべてに装着するとのことです。

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筆者プロフィール

小林實(こばやし・みのる)
  1959年慶應義塾大学大学院修士課程修了。警察庁入庁、科学警察研究所勤務。同研究所勤務の間、米国厚生省訪問研究員、フィリピン大学交通訓練センターでの教育指導などに従事。1989年交通部付主任研究官を最後に退官後、(株)損害保険ジャパン顧問、(財)国際交通安全学会顧問、主幹総合交通心理士。現在、交通リスクコンサルタントとして活躍。
 『運転学のすすめ』『安全への視点』『運転の構図』『あんぜんかわらばん』『クルマ社会の安全管理』『なぜ起こす交通事故』など著書多数。当社からは『安全運転管理のスタンス』『安全運転管理の心理学』を発行。

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沈着な判断と行動が鍵
第133回
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