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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その58 外国人観光客と冬道事故
交通リスクコンサルタント 小林 實

せっかくの北海道観光なのに…

 今年の冬、日本海側は例年にない大雪に見舞われました。屋根の雪下ろし作業中に転落死した高齢者も多数おられ、被害は思わぬところにも及んでいます。昨年の夏、日本は酷暑に見舞われましたし、この冬、オーストラリアでは、フランスとドイツを合わせたほどの面積が浸水する大洪水が発生、ヨーロッパやアメリカでは大雪と、地球全体が何か異常なのではないか…といった感じです。
 冬といえば昨年12月、北海道・喜茂別町(きもべつちょう)の国道230号で乗用車とトラックが正面衝突して2人が死亡、7人が重軽傷という重大事故が発生しました。ごく普通の冬道での事故であれば、大方の関心も薄かったことでしょうが、北海道観光に訪れていた香港からの観光客が巻き込まれた事故だったところに問題があります。
 この観光客の運転するワゴン車が、ニセコ方面に向かう緩やかなカーブで、先行するトラックを追越そうとセンターラインにはみ出したところ、対向するトラックと激突し、さらにそのはずみで別のトラックにも接触したあと、同じく香港の知人が運転する後続のワゴン車に追突された―というのが、この事故の実態です。夜9時すぎの事故でしたが、現場は小雪が降り、路面は圧雪アイスバーン状態だったようです。おそらくこれでは追越し禁止の道路標示も見えなかったでしょう。
 このような道路状況で、冬道運転に慣れていないドライバーが、追越しのため急加速をしたことによりスリップを併発し、車のコントロールを失ってしまったものと推測されます。地元のドライバーでしたら、このような場所で追越しをすると危ない―ということは十分承知しておられるでしょうが、地理にも不案内、しかも先を急いでいた外国人観光客には情報不足だったことは間違いありませんし、ましてや、ふだん冬道運転などしたことがない香港からの観光客ですから、こうした落とし穴に引っかかっても何ら不思議はありません。
 北海道内で、外国人ドライバーによる人身事故は、過去5年間で年平均73件発生しているそうですが、今回の事故は、2001年以降では道内初の外国人ドライバーによる死亡事故であり、しかも冬道ということですので、早急な対策が必要です。

アジア各地からのスキーヤーに人気

 近年、冬の北海道は、雪質も良いことから、中国本土や台湾、香港のスキーヤーやスノーボーダーらに大変人気があり、衝突したワゴン車から子ども用のスノーボートが散乱している様子がテレビに映し出されていました。
 北海道はなかでも台湾の方に人気があるようで、彼らのもたらす経済効果は年450億円にも達するといわれ、冷え切った北海道経済の貴重な財源になっています。たとえば、道東の弟子屈町(てしかがちょう)には年間9,600人の外国人が訪れていますが、何とそのうち9,000人が台湾の方だそうで、まさに台湾パワーが爆発している町といえます。
 ちなみに台湾は、国際運転免許にかかわる「ジュネーブ条約」の加盟国・地域ではなく日本との国交がないため、台湾政府の発行する国際運転免許を持っていても、日本では運転できません。かつて、台湾の方が日本で運転するためには、日本の運転免許を取得しなければなりませんでしたが、平成19年9月に道路交通法が一部改正され、台湾の運転免許と、その記載内容を日本語に訳した所定の文書を持っている人であれば、日本でも運転できるようになりました。その背景には、台湾から多数訪れる観光客に対する便宜があったというわけです。

警告表示だけでは不十分

 話を先ほどの事故に戻しましょう。香港と日本は、先ほど述べたジュネーブ条約加盟国・地域ですから、香港で発行された国際運転免許を持っていれば、日本国内どこでも運転することができます。しかし、冬の北海道をはじめとする雪国で運転した経験がほとんどない人たちに、安易に冬道で運転させてよいか―というと若干の疑問があります。日本の教習所では、全国共通のカリキュラムがありますから、沖縄の教習所でも「雪道の走行」について座学で教えていますが、これも決して無駄なことではありません。転勤族など、雪に慣れていない人たちが北海道勤務になることもあるわけですし、観光で訪れることもあるでしょうから。
 北海道内のレンタカー会社の窓口には「雪に注意、過信は禁物」との英語表示があるようですが、この程度の警告では不十分です。冬道での安全運転のポイントを英語、中国語などで解
説したパンフレットを窓口で配布するほか、口頭でも積極的に安全運転のアドバイスをすべきでしょう。つい先日、東京の遊園地で起きた転落事故でも、安全確認を目視で済ませていたことが問題となっていますが、こうした安易なスタンスは、事故の再発を招く危険性が高いといえます。

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第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
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スイスチーズの大きな穴
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外国人観光客と冬道事故
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安全そして安心を目指せ「運転代行業」
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タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
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左か右か
第13回
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