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最終更新日:2017年10月12日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その50 うどん文化と運転
交通リスクコンサルタント 小林 實

香川県人と交通事情

 最近の健康食品ブームの一端を担っているのが「うどん」ではないでしょうか。有名な讃岐うどんのチェーン店が、東京の都心にも続々と誕生しています。ご本家の香川県のうどんの消費量は年間一人当たり230玉と全国1位、総生産量は2006年に6万トンと、第2位の埼玉県を4万トン以上引き離しています。
 寛永19年(1647年)の飢饉の際、江戸幕府により、うどん・素麺類はぜいたく品とみなされ、禁令が出されましたが、讃岐国の琴平は金光院の朱印地として高い自治権が認められていたため、ここは禁令から外されました。さらに、塩田で作られる塩や、小豆島をはじめとする醤油の生産など、うどんに必要な原料の確保が容易であったことが、琴平周辺でのうどん作りに拍車をかけたわけです。また、当地の金刀比羅宮への参拝客もターゲットでした。
 最近、たまたま香川県に出かける機会があったのですが、もしかすると、こうした香川県民のうどん好きと交通事情には何か関係があるのではないか…と思い、当地で感じたことと重ねてみていこうと思います。

ハッスルな運転ぶり

 香川の人たちの運転マナーは、四国のなかでも決して良くはない—というJAF四国本部の調査結果があります。踏切での一時停止といったルールの遵守率で比較したものらしいのですが、マナーの良いほうから高知、徳島、愛媛の順で、香川県は30%とワースト1位だったそうです(高知は57%)。香川県における2006年の人口10万人当たりの事故死者数は9.5人と全国ワースト1位でしたが、それでも年々低下し、2009年には7.0人にまで改善されています。とはいえ、この数値は全国平均からみるとまだかなり高く、しかも、事故の多くはルール違反が主な原因となっているようです。
 数日の滞在でしたので、あまり大きなことは言えませんが、確かに結構元気の良いハッスルな運転ぶりが目立ちました。車間距離はかなり短く、ウインカーはほとんど使わずに車線変更しますし、小さな脇道から出てくる車は、最終的には停止するものの、結構スピードを出してきますので、そのまま突っ込んでくるのではないかと一瞬ヒヤリとしました。黄色信号でも、かなり「青」に近い感覚で通過していきます。
 よく「県民性」といわれますが、香川県民は、温暖な気候のせいか温和であり、争いごとを好まないといわれます。当地の「へらこい」という方言には、抜け目ない、自己防衛的という意味があるそうですが、この方言も県民性の一端を反映しているのでしょうか。

「オリーブマーク」でアピール

 ところで、県民気質というのは食文化、生活慣習、それに地域経済というものに左右されるといわれます。そうすると、案外彼らの好む「うどん」と無関係ではなさそうです。讃岐うどんの定番は、「ぶっかけ」と称し、少ない濃い目のダシに大根おろしを乗せて食べるという簡単なものであり、「具なしうどん」、「素うどん」といったごく簡単な食べ方が好まれますが、これには、早く出せる、早く食べられる、待たなくともよい、結果としてイライラしない—というメリットが考えられます。つまり、彼らの日常の運転行動には、こうした認知母型により、あれこれ気にせずにその場その場で対応する…という傾向があるのかもしれません。
 香川県内を車で走っていると、右折車線にオリーブのマークが描かれていることに気づきました。オリーブは地元小豆島の名産ですが、このマークは、車に対して「早めに合図を出せ」とアピールするもので、警察や道路管理者も、ウインカーの励行にはかなり神経を使っているようです。私見ですが、警察は単にスピードの取締りではなく、交差点での違反者の指導取締りをもっと積極的にやることが重要でしょうし、ある時期に徹底してやれば、なぜウインカーを出さなければならないのか、それにはどういう意味があるのか—ということがドライバーに浸透するのではないでしょうか。単に「ダメだ、ダメだ」と行動を修正するのではなく、彼らが本当に納得したときに初めて定着するものでしょう。
 もしかすると、香川県のドライバーのなかには、今の運転で良いとお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっとしたことで、もっと楽でスマートな運転ができることをぜひご理解ください。彼らのもつ、温和で争いごとを好まない—という県民気質に大いに期待したいものです。

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バックナンバー

第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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