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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その49 100円ライターのリスク
交通リスクコンサルタント 小林 實

ワゴン車から出火…

 航空機内へのライターの持ち込みは一人1個に制限されていますが、相変わらず手荷物検査場の脇には、制限数を超えて回収されたライターがたくさん積まれています。持ち込み制限の理由は、あの“9.11”以来、ハイジャック防止のための措置と理解していたのですが、いわゆる“100円ライター”の自然発火もその理由の一つだそうです(禁煙の航空機のトイレで喫煙する輩がいることもあるのでしょうが…)。なるほど、腰のポケットに入れていた、着火部にフタがない100円ライターが何かの拍子に着火し、座席に引火して火災となることもあるわけです。
 実際、2009年6月には、高度600メートルを降下中の日航機内で発煙する事故が発生しました。さいわい火災には至らなかったものの、シートのすき間から焦げたライターが見つかったことから、ライターが人体とシートのあいだにはさまれて摩擦発火した疑いがあるそうです。このほかにも、机の引き出しに入れたライターのローラー部分が、引き出しを閉めた拍子に回転して発火した—というケースも報告されています。  
 また、今年4月に北海道で、駐車中のワゴン車のなかにいた子どもがライターにいたずらをして出火、車内に取り残された0歳から3歳の乳幼児4人が死亡する—という痛ましい事故がありましたが、この事故では、ライターのような危険物を車内に放置していた保護者の無神経さも問題となっています。

横着さが災い

 04年度から08年度にかけて、こうしたライターの関与した事故は132件あり、このうち死亡事故が1件、重・軽傷事故が57件という報告があります。車両火災の例としては、電動シートを動かした際、シートレール上に落ちていたライターの着火レバーが押されて発火した—という事故が報告されています。うっかり車内にライターを落としても、「安いものだから…」と、探そうともしない横着さがここでは災いしたわけです。
 こうした風潮を受け、消費生活用製品安全法という法律のなかで、ライターを「特定製品」に指定し、着火しにくい構造にする動きもあるようです。これはいわゆるCR(Child Resistance)といって、子どもの火遊び防止が狙いなのですが、簡単に着火する今のライターの便利さに慣れている層や高齢者にとっては、少々扱いづらくなることでしょう。
 ともあれ、小さい子どもたちのもつ興味というものは、なかなか大人には理解しがたいものがあります。100円ライターは色も鮮やかで子どもの目につきやすく、しかも親がダメと言っているものにはさらなる興味がわくわけで、簡単にポッと火の出るライターは、彼らにとって格好の標的になるのです。

薄れつつある危険意識

 ところで、家電等による製品事故では、06年度から08年度のあいだに、その誤使用・不注意などによって230人近くの人が死亡している—という統計が最近発表されました。このうち「ガスコンロ」「石油ストーブ」「電気ストーブ」が事故の三大原因となっていますが、製品そのものの欠陥による死亡事故は27件にとどまっているのに対し、いわゆる人為ミスによる死亡事故が195件も起きています。なかには、石油ストーブにガソリンを入れ間違えるというミスもありました。このほか、介護用ベッドに挟まれて窒息死されたご老人もおられるそうです。
 製品事故の形態はさまざまですが、身の回りのものに対する危険意識が薄れてきているのも事故原因の一つではないでしょうか。一昔前ですと、だるまストーブにさわって「熱い!」とやけどをした経験が誰にでもありましたから、これが原体験になり、「近づくと危ない」という意識が生まれます。最近は、ストーブのたぐいも安全装置が進化し、こうした危険が少ないものですから、ある老人ホームで起きた火災事故のように、衣類などを干すとき、ストーブに近づけすぎて引火する—という事故が起きてしまうのです。世の中で核家族化が進むと、それぞれが“自己責任”という形を取らざるを得ませんが、身体障害者や高齢者に責任をすべて覆い被せるのは酷でしょう。家族らがそれぞれの立場から協力するほかありません。
 家庭内での事故といえば、風呂場が最も多く、転倒や、湯船での溺死などが挙げられます。また、座布団やちょっとした段差につまずいて骨折し、その後は寝たきり…といったケースも後を絶ちません。家のなかでじっとしていれば交通事故に遭うことがないのは確かですが、家のなかといえども危険はたくさんあるのです。しかも、日常的に見慣れた生活環境のなかから危険を察知することは、ことに高齢者には難しいといえましょう。

感度の違い

 ところで、デュポン社の方に講演をしていただいたときのことです。パソコンやプロジェクターの周囲にコードが散乱していました。われわれにとっては、見慣れた普通の光景でしたが、安全文化に敏感な彼らの目には、乱雑なコード類は明らかな危険源と見えたのでしょう。「これをまず片づけていただいてからお話ししましょう」ということになり、危険に対する感度の違いをまざまざと見せつけられた次第でした。

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第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
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第85回
ハイブリッド
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「運転技能」について
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第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
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青矢印信号の謎
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第23回
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第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
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自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
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ベトナムとヘルメット
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心のサーモスタット
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地図の効用
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