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最終更新日:2017年10月12日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その47 事業仕分け人
交通リスクコンサルタント 小林 實

「市民参加」につながる

 「仕分け人 妻にくらべりゃ まだ甘い」とは今年のサラリーマン川柳の入選作ですが、ひところテレビで注目を集めたのが、各省庁の予算の執行状況に関する「事業仕分け作業」でした。それに当たる人を「仕分け人」と呼んでいます。彼らのやり方がきわめて直截的であるとか、独断に満ちている—といったような反論もあったようですが、今まで国民の前にさらけ出されなかった行政の金の使い方が明るみに出てきたことから、多くの関心を集めました。オバマ大統領率いるアメリカ政府は“TPC”をモットーにする—と言っていますが、これは、「政府の透明性(Transparency)を増すことによって、国民の政府への参加(Participation)の機会を増やし、政府と国民、省庁間などの協調(Collaboration)を促す」ということです。事業仕分け作業というものは、まさに「透明性」を確保するうえでのキーであり、また、こうした情報が一般市民に知れたことは、ある意味で「市民参加」につながるのではないでしょうか。
 事業仕分け作業に対しては、国家の長い将来を見きわめるのに、あまりにも視野が狭いとか、科学技術であるとか文化財などの問題も、あまりに短期的な見方だ—という批判もあります。コストパフォーマンスだけでバサバサ斬るというやり方は、その典型でしょう。彼らが「必殺仕掛け人」ならぬ「必殺仕分け人」と呼ばれるのもうなずけます。
 実際、長い時間のスパンで評価しなければいけないものは、かなりあります。その良い例が、ヨーロッパ各国に見られる美術館や博物館の場所のあり方でしょう。たとえば、オーストリアの首都ウイーンの中心には、有名な美術史美術館と自然史博物館が厳然とそびえていますが、何も街のど真ん中になくてもいいのでは…と考える人もいるかもしれません。しかし、それは日本的発想です。当時の女帝マリア・テレジアは、オーストリア帝国の威信を各国に示すため、こうした歴史的建造物、さらにはそこに展示する優れた美術品の数々を、これでもかとそろえた—というわけです。
 最近、とみに企業における安全文化の構築が叫ばれていますが、こうした無形の財産を膨らませるには、かなり長期的な視点が必要です。安全の評価にしても、近視眼的ではなく、かなり長期のビジョンが望まれるところです。こうした観点からも、「安全管理に携わる自分たち管理者の言うとおりにやっていれば、交通の安全は確保できる」という発想は、すでに過去のものといえるでしょう。

安全運転の促進剤

 今の厳しい経済情勢では、物流にかかわるコストはきわめて厳しい状況下にあります。よくいわれる「運行三費」とは、「燃料・オイル代」と「タイヤ費用」(交換・ローテーションなど)、それに「車両の修理代」(一般修理と車検費用など)を指しますが、自動車の運行コストを管理するうえで、きわめてデリケートに変化するのが、これらの変動費です。最近とみに叫ばれている「地球環境にやさしく」というスローガンは、こうした運行三費に大きく影響し、また、それが安全運転の促進剤ともなります。
 エコドライブを会社全体で推進すれば、ガソリンの消費量は大きく変わるでしょう。しかも、急発進・急ブレーキをやめることで、タイヤの摩耗も激減します。その一方で、固定費というものはなかなか減らすことができません。固定費の多くを占める人件費は、ドライバーを確保するためには減らすわけにいかないでしょう。そのなかにあって唯一減らせるのは、車両にかける保険料でしょうか。被害額の大きな事故を起こしますと、翌年の保険料は跳ね上がりますが、逆に無事故を継続できた場合は、いわゆる「優割」が機能して、保険料は大幅に下がります。つまり、長期的に見ることにより、「エコドライブを徹底する」→「それがドライバーや管理者に浸透していく」→「その結果として運行三費や保険料が減る」という構図ができ上がるわけです。
 しかも、ドライバー自らがこうした運動にかかわることにより、いわゆる「参加意識」が生まれ、それが動機づけとなってさらに運動をけん引していきます。目標を掲げて皆でそれにチャレンジすることにより、安全に対する考えも変わっていくのです。アメリカ政府が掲げる「市民参加」ではありませんが、ドライバーたちが率先してエコドライブを実行する「参加型経営」が、これからの経営の鍵となるでしょう。

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バックナンバー

第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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