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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その30 ゲリラ化する災害
交通リスクコンサルタント 小林 實

異常気象

 今年の夏は、いわゆる「異常気象」という言葉が当てはまるように、集中豪雨、雷など、例年にない激しさでした。これは、ビルの乱立する夜間の都市部で気温が下がらないことなどを含め、地球の温暖化が促進されたためと解釈できますが、ある意味では、長い周期で地球そのものが温暖期に入ったとみることもできるのではないでしょうか。したがって異常気象ではなく、これがこれからの毎年の気象現象としてみたほうがよいかもしれません。
 お天気キャスターとして著名な倉嶋厚さんの書かれた「お天気歳時記」(チクマ秀版社)は、今から10年以上も前に出版されたものですが、天気予報の裏話だけでなく、安全についてもいろいろ示唆に富んだ話が載っています。この著のなかで、氏は「自分の生存を侵す事柄に対する防衛は、誰かがやってくれるものであり、その誰かをせめていればすべてこと足れるという考え方とはまったく別のものである。災害がゲリラ化している現代では、個人の判断・選択・行動が生死を分けることが多い」といっておられますが、これは気象だけでなく、交通事故も含めて大いに考えさせられる問題ではないでしょうか。

個人の判断

 これを気象場面でみますと、「ゲリラ豪雨」というものが当てはまります。このあいだ首都圏を襲った集中豪雨で、マンホールのなかで作業員の方が鉄砲水で流され、死亡するという痛ましい事故がありました。急激に水量が増すなどとは想定していなかったためで、まさにこうした場合、警報をもっと早く出すことも必要ですが、むしろ、個人の判断が生死を分ける重要なポイントとなってくるわけです。これは、都市災害の大きな問題です。
 この「ゲリラ豪雨」という言葉は、新聞などでよく用いられているマスコミの造語の一つで、局地的かつ同時多発的な予測困難な集中豪雨を指す─とあります。すでに1953年ころの新聞にも載っていますが、正式の気象用語ではないそうです。
 もともと「ゲリラ」とは、guerrillaというスペイン語に語源があるといわれています。戦争のことをguerraといいますが、その小規模なものという意味から、小さいという意味のillaという縮小辞がついています。ナポレオンがヨーロッパを征服した際に、スペインの民衆が最後まで抵抗したこの戦術をいったもので、後のパルチザン、遊撃隊というものがそれです。イランやアフガンで最近多い自爆テロも、まさにゲリラという言葉が当てはまります。
 こうしたゲリラの原型というのは、中国の孫子のころからあったようで、当時の群雄割拠の中国ではこうした作戦が不可欠であったのでしょう。後の毛沢東による「便衣兵」もこの名残ですが、いざ危険という場面では戦闘服を脱いで民衆にまぎれ込み、さっと「変身」となるわけです。

甘えの姿勢

 ところで、天気のことを英語ではweatherといいますが、このウエザーという言葉の語源には、荒天、つまり天気が悪い─という意味があります。そのため欧米では、天気に対して「構える、準備する」という意識が働きやすいのに対し、日本では甘えの姿勢があるのでないか─と倉嶋氏は指摘していますが、日本には「脳天気」という言葉があるように、まさにうがった見方だと思います。
 氏が記した「多くの惨事というものは、防災システムがきちんとあるにもかかわらず、誰かがやってくれるだろうという、個人の職務の重要性を認識していない油断とか、怠慢で引き起こされている事実」という一文は注目されます。いわゆる医療事故にしろ、食品の偽装事件にしても、また皆さんの安全管理者の仕事にも同じことが言えると思います。
 数年前に、JAL907便が、JAL958便と焼津上空であわや空中衝突という超ニアミスをやった際に、パイロットがコンピュータの指示に反して自分の判断で行動して、衝突という最悪事態を回避しました。このニアミスの原因は、管制官がそもそも機種を取り違えたことにありましたが、まさに、パイロットという個人の判断が生死を分けたともいえるでしょう。
 交通事故というのも、まさにゲリラ的な存在だということができるでしょう。思いもかけないところで発生する、あちこちで毎日のように不特定多数を対象に起きているなど、予測することが不可能な場合が多いのです。交通事故でも何でも、「起こらなければ大丈夫なのだ」という危険な論理が働いてしまうことを覚えておく必要があるでしょう。

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バックナンバー

第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
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ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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