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最終更新日:2017年8月17日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その28 マニュアルにないもの
交通リスクコンサルタント 小林 實

アナログ的な発想の欠如

 先日の東京ビッグサイトでのエスカレーター事故は、規模の点でも名古屋の地下鉄での場合と比べ、大きなものでした。あるイベントがあったようで、たくさんの人が開場と同時にエスカレーターにダッシュしたことが原因のようです。平らなところを駆け出して殺到するのと違い、長いエスカレーターを使わざるを得ない状況で、エスカレーターのプレート1枚に3人から4人が乗るという超過密乗車でした。このため、あまりの過重が異常と検知されてブレーキがかかり、さらには逆走するという最悪の事態になったものと思われます。
 お目当ての品をゲットするための「先急ぎ」の心理状態では、エスカレーターが鈴なりの状態にあっても、彼らは異常とは感じなかったでしょうし、主催者側は、テレビを見ている限り、誘導員を配置して迅速な対応をしていたようですが、彼らのマニュアルには、メーカーで決めた「限界重量」なるものは明記されていなかったでしょう。また、仮に乗車制限をしたとしても、強大な彼らのエネルギーには対応し切れなかったと考えられます。
 誘導員にこの異常が感じられなかったのは、理由の一つには、それがマニュアルになかったからでもあるわけです。たとえば、ある遊園地を訪れた子どもが、係のお姉さんに、ありがとうとお礼の意味で手を振ったのに、手を振り返してもらえなかった─という出来事があったそうですが、これは、マニュアルに「手を振って応えること」と記されていなかったことが原因です。機転を利かすという、いわばアナログ的な発想の欠如といえましょう。

バールマンの名がすたる

 ところで、「スターバックス」という人気のコーヒーチェーン店があります。このスターバックスは、世界的に店舗数を拡大しています。より上質のコーヒーを提供するという一種の差別化が人気を博しているわけですが、世界で店舗数は約3万店、日本でも200店以上あるそうです。オリンピックで沸いたお隣の中国でも急増中ですが、イタリアには目下のところ1店舗もありません。なぜでしょうか? イタリアには、昔からコーヒーなどの飲料を提供する「バール(語源的には英語のbar)」が日本のコンビニのようにどこにでもあるので、進出の余地がないこともあげられるでしょう。しかし、最大の理由は、イタリア人にとって「マニュアル通り」というのが性に合わないからなのだそうです。
 バールというのは、単に決まったコーヒーを出すことでなく、客のどんな注文にも応じられることが要求されます。バールのなかにはカクテルも作れる「バールマン」というクラスの人もいるのですが、思いもかけぬ注文に「それはできません」といって断るようではバールマンの名がすたるというものです。つまり、機転を利かすという一種のアナログ思考が要求されます。日本のコーヒーチェーン店で「ミルクの代わりに生クリームにして」と注文しても、おそらく「それはできません」となることでしょう。
 それにしても、「スタバ」という略語の響きは、どうにかならないものでしょうか。「合コン」よりはまだましですが…。

パワーポイントでのプレゼン

 略語といえば、「プレゼン」という響きもあまり好きではありません。最近では、猫も杓子も「パワーポイント」なるパソコンソフトを駆使して、いわゆるプレゼンに対応しています。この製作に要する人力はバカになりませんが、当人は、至極真剣なまなざしで取り組んでいますから、いかにも「仕事をしているぅ」という印象が強いのです。
 パワーポイントの製作はパソコンへの入力ですから、マニュアルに沿って作業を進めるわけで、アナログ的な発想がわきにくい、いわば「デジタル作業」といえます。これに凝りすぎると、つい動画なども入れたくなりますから、どうしても画像中心になり、しゃべりのほうが後手に回るので、私はきわめて苦手です。かつて、こんなものがなかったころのプレゼンは、せいぜいOHPの「紙芝居」でしたから、話のほうも集中できて熱が入ったように記憶します。
 こうした最近の風潮に対して、たとえばトヨタでは、プレゼンはA4用紙1枚でやるようにという指示が出ているそうで、これも経費と時間の節約の一環でしょう。話すという、いわば「アナログ発想」をある意味重視しているともいえます。
 あるところで、パソコンを駆使してプレゼンしている最中に停電になってしまい、本人もそのあとどうしていいか、まさに「お先真っ暗」の状態になっているのを見たことがあります。わたしも後輩連中には、こんな非常事態も想定して、パワーポイントなしでプレゼンができるようにさせています。
 最近増加する凶悪犯罪の陰には、自分のやりきれない気持ちを誰も感じてくれないといった欲求不満があり、これが、無差別に人を刺す─という短絡行為につながっているようですが、これも、いかにもデジタル的な発想ではないでしょうか。「おまえとみちづれに」という歌謡曲の文句がありましたが、「他人をみちづれに」では歌にもなりません。
 車の運転も、ただデジタル的に行っているだけでは、時々刻々と変化を続ける交通場面にはとても対処し切れないでしょう。常に不測の事態を想定し、アナログ的な機転を利かせた運転をお願いしたいものです。

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第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
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モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
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第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
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第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
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ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
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第02回
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転倒リスク

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