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最終更新日:2017年5月23日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その26 経年劣化
交通リスクコンサルタント 小林 實

継続使用の限界

 長年使った家庭電気製品からの出火が新聞やテレビで報道されています。冷蔵庫の裏側に長いこと差したままになっているコンセントにホコリと湿気が付着し、いわゆる「トラッキング現象」を起こして出火に至る─といったケースもあるようです。また、あるメーカーの石油ストーブの回収の呼びかけは今でも続いています。
 省エネやエコの時代に、物を少しでも長く使いたいとする心理が消費者サイドにあるわけですが、その一方で、メーカーサイドは、PL(製造物責任)の普及などから、品質が向上した壊れにくい商品を作っていますから、こうした、いわば二律背反の事態に戸惑いがあるようです。
 しかし、継続的使用には限界がある限り、消費者サイドにも責任があります。メーカーサイドはフェイルセーフ(※)を目標にしていますが、ユーザーの長期使用には対応しきれていないのが現状です。たとえば高齢者の家庭では、動く限りは使いたいという人が多いものですが、日常点検はままなりません。また、スキーのブーツなども、しばらくぶりに履いたとたんに完全破断を生ずることがあります。こうしたユーザーの長期使用は、企業の安全が長く続くと安全に対する感度が鈍くなり、結果として大きな事故が発生する─ということとも無関係ではないでしょう。
 平成19年11月には改正消費生活用製品安全法が公布され、同21年4月に施行されますが、施行後の工業製品には「この製品の設計上の標準使用期間は○○年です。この期間を超えての使用には『経年劣化による発火、怪我などの事故にいたる恐れがあります』」というように明記されるはずです。


※フェイルセーフ=故障や操作ミス、設計上の不具合などの障害が発生することをあらかじめ想定し、障害が起きた際の被害を最小限にとどめるような工夫をしておくという設計思想のこと。

事故につながるタイヤの劣化

 ところで、安全工学でよく出てくる「バスタブ曲線」というものがあります。この曲線は、工業製品などの故障率を時間を追って示したもので、グラフの形が洋式の浴槽の断面に似ていることからそう呼ばれています。
 下図の(1)の部分は「初期故障期間」といって、いわゆる工業製品の初期不良といわれるものですが、派手な航空ショーで新型機が墜落したりするのもその例でしょう。また、平坦な(2)の部分は「偶発故障期間」といって、故障率は一定であり時間の経過とは無関係な時期で、工業製品の経年劣化を示します。そして、(3)の部分で故障率は急激に上がりますが、これを「磨耗故障期間」といい、工業製品に寿命がきた状態です。
 当然、クルマも経年劣化します。この経年劣化によるトラブルを避けるため、行政は定期点検や車検を義務づけているわけです。エンジンなどの部品も劣化しますが、仮にエンジンが故障しても車は停止するので二次災害には至りにくい。これに対してタイヤというものは、いわば消耗品で特に経年劣化しやすく、5年以上使用するとひび割れなどが生じ、これを放置しておきますと、バーストという異常事態が生じる危険性が高まります。仮にクルマが高速走行中にタイヤがバーストすると、大きな事故に至らないとも限りません。わずか、はがき1枚の面積でタイヤと路面が接し、クルマを操っているわけですから、タイヤの点検は常にしておく配慮が必要です。 

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自身の経年劣化を自覚

 人間の寿命も、このバスタブ曲線によく似た特性をもっています。生まれて間もない新生児や1歳未満の乳幼児の死亡率はけっこう高く、青年期・壮年期と死亡率は減少し、かつ安定していますが、高齢になると、死亡率は急激に高くなります。
 こうした経年劣化に対して、ウイスキーを樽のなかで寝かせる「エージング」は、経年がプラスに働く例ですが、加齢による人体の機能の劣化を遅らせる「アンチエージング」も人気があります。たとえば白内障を手術した高齢者に明るい世界がよみがえることは素晴らしいことであり、人体のパーツはある程度復元できるわけですが、脳のなかは劣化が激しくなることには注意が必要です。
 交通事故の発生率も同様で、免許をとってすぐの発生率は非常に高い。後半から急激に高くなるのは、高齢ドライバーの事故が増加していることと関係しています。社会参加に積極的な高齢者も、自身が経年劣化していることを自覚して生活することが要求されています。

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第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
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第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
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目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
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ある学者の死を悼む
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氷河急行の事故
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企業も頑張っている!
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うどん文化と運転
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100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
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事業仕分け人
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お客様目線
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青矢印信号の謎
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「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
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第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
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第06回
イタリアとリスク
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ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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