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最終更新日:2017年10月12日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その23 感覚の研ぎ澄まし
交通リスクコンサルタント 小林 實

世界的な信用

 大分県には「宇佐」という街があります。ローマ字で書くとUSAですから、ここで作られた名産品には“Made in USA”(宇佐産)と書いてもよいわけです(実際、そういう看板が昔あったように記憶します)。
 戦後、進駐軍としてやってきたアメリカ軍の兵士が黄色いネッカチーフをなびかせながらジープで走っていくさまは、子ども心にも実にスマートに感じられ、“Made in U.S.A.”に誰もがあこがれました。戦後間もない日本の輸出用のおもちゃや工業製品は、品質もかなり悪く、当時“Made in Japan”とは粗悪品の代名詞でもあったわけです。今はやりの「偽装」ではありませんが、“Made in USA”とすれば、宇佐の方にはご迷惑でしょうが、アメリカ製だと勘違いする人もいたはずで、実際、香港あたりの製品には、そうした偽装をしたものもありました。その後、日本の製品も、ニコンやソニー、松下などが頑張ったことで、世界的な信用を得るようになり、“Made in Japan”は、まさに世界的なブランドに成長しました。

食品に対する警戒心

 ところで、今、皆さんのお手元にある通信販売などの分厚いカタログをご覧になると、結構、中国や東南アジアの製品があることに気づくでしょう。ロゴはまさしく世界的な有名ブランドでも、生産地は中国や東南アジアであるわけですが、これは、技術指導などで品質が向上した、いわゆる「ライセンス生産品」と呼ばれるものです。しかし、最近アメリカでは、中国製の玩具に鉛が混入していたり、中国製のペットフードを食べたペットが死亡する事件が多発したことにより、“China Free”(中国の原材料を含まない、中国製でない)というラベルを張ったものが出てきました。
 昨年は、我が国で食品の偽装が相次いで発覚し、消費者が極めて神経質になっていたわけですが、図らずも今回発生した「農薬入り餃子事件」は、命にかかわる問題でもあり、賞味期限の偽装とはいささか異なる犯罪性の強さが感じられます。詳細は目下捜査中ですが、日中両国の、国や商社による管理体制がまさに問われているわけです。
 中国では、こうした強力な農薬の野菜への混入により、毎年かなりの人が死亡したりしていることもわかってきました。今回のショッキングな事件が起こる前までは、スーパーマーケットで売られているあれだけの種類の餃子や食品の多くが中国で作られていると知っていた方は少ないでしょう。
 これには、食生活が極めて便利となり、レトルト食品をはじめ、あまり手をかけずに食生活が成り立っていることにも一つの原因がありそうです。歴史的にみると、ヨーロッパあたりでは毒殺というのは日常的でしたし、「毒見役」というのがいたくらいで、食べ物にはかなり慎重だったと考えられます。
 しかし、文明が進化すると同時に、人の「舌の感覚」は退化してきているといえないでしょうか。もしくは、食品に対する警戒心といったものが退化しているといってもよいでしょう。ましてや、すでに加工済みの冷凍食品となれば、人々は警戒心など抱かないのかもしれません。

安全と危険とは表裏一体

 もう一つ、「餃子事件」で考えなくてはならないのは、人間の「感覚の退化」ではないでしょうか。目や耳に比べて、刺激に対する舌の感度は発生学的にもそれほど高くなく、感覚の退化も大きいとされています。韓国料理や東南アジア料理にはいわゆる「激辛」なものが結構ありますが、こういう辛さに慣れている民族は、ある意味、舌の感覚が退化して辛さに順応しているわけです。
 こうした「舌の感覚」に限らず、「感覚の研ぎ澄まし」は、交通安全の場においても大切です。特に重要なのは、何かおかしいのではないか、何かあるのではないか…といった「疑いの感覚」です。人間は、危険な行為でも、それが成功し慣れてくると、もはや危険とは感じなくなることが多いのです。たとえば、いつも通り慣れている通勤路などでは、いわば「定型パターン」に陥り、疑いの感覚が鈍くなりがちですが、実はこうしたときこそ、感覚レベルでのとらえ方が必要となります。
 今回の「餃子事件」は、飽食時代への一つの警告としてとらえることができましょう。製造者をはじめ、流通各段階での厳しいチェックの責任を問うことで一件落着とするのではなく、消費者自身も安心のなかに埋もれてはいけないことを教えています。
 交通の場でも、安全と危険とは表裏一体であることを、常に忘れないことが大切でしょう。

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第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
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第79回
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第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
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第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
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スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
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社会のスピード
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コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
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うどん文化と運転
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青矢印信号の謎
第44回
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第43回
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第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
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第36回
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認知ギャップ
第34回
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第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
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左か右か
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銃社会のジレンマ
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