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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その13 銃社会のジレンマ
交通リスクコンサルタント 小林 實

銃社会の怖さ

 つい先日起きたアメリカ・バージニア州立工科大学での学生32人が銃乱射により犠牲となった事件は、いまさらアメリカの銃社会の怖さを強く感じる出来事でした。犯人が同大学のアジア系学生であったことも、きわめて象徴的であったともいえます。アメリカでは銃器の保有数は3億丁ともいわれ、成人のほとんどが「護身用」と称して武器を保有している勘定です。州によって違いがありますが、身分証明一つあれば簡単に銃を購入でき、コンビニで弾薬も手に入ります。
 アメリカの歴史は、建国以来、銃とともにあったといっても過言ではないでしょう。自分たちの兄貴分にあたるイギリスからの独立を勝ち取るために彼らと銃火を交え、西部開拓時代のアメリカインディアンとの戦いは、すでに西部劇でおなじみのものです。さらに南北戦争後、アフリカからの黒人奴隷が大量に流れ込んだ南部の各州では、彼らを抑え込むのに銃が必要であったわけです。ですから、保守勢力の強い南部では、銃の個人による所持をきわめて合法的とする姿勢が強いともいえるわけです。
 ヨーロッパの諸国は、国により事情が違いますが、フィンランドでは所持が認められています。これは、国民皆兵制度により射撃技術の維持が必要だからだといわれています。また、アメリカの隣国カナダでは違法です。

銃に対する自制心

 アメリカの銃社会の風土というものは、自分たちの命は自分たちで守るという自己防衛の見地から、きわめて当然といえます。生まれるとすぐ銃になじみ、車の運転よりもはるか以前に銃を扱えるようになります。女性の8人に一人といいますから、1千数百万人の女性が銃を所持し、性的暴力などに対峙(たいじ)しています。こうした一連のことが、いわば認知母型となって彼らに根づいているわけです。
 したがって、一般の人々は銃のもつ殺りく性の高さからくる危険について、十分に承知をしており、その扱いは慎重であるのが一般的です。しかし、今回の犯人はアジア系の移民であり、彼の頭のなかにこうした銃に対する自制心というものが生まれにくく、あたら自分の持つ社会に対する不平不満というものを暴発的に外にぶつけ、その結果、罪のない人々が犠牲になったという構図です。
 しかし、銃で殺害される人が年間1万人以上、自殺者は3万人以上という現状をこのまま放置してよいのだろうか、何か対策を打てないのかと思いますが、実はアメリカの政治にはいわゆる「ロビイスト(lobbyist)」が強くかかわっており、なかでも退役軍人協会であるとか、俳優のチャールトン・ヘストンが会長を務めたこともある全米ライフル協会(NRA)のもつ力は、与党である共和党の動きをも左右しかねません。このため、ブッシュ政権は銃の規制についてはあまり積極的でないのが現状です。
 例のコロンバイン高校での銃乱射事件以降、学校の保安は厳しくなっていますが、大学、ことに州立大学などの場合、キャンパスが広大であるため、一般車両が何の検問もなく学内を通っています。大学警察(University Police)も、大学構内ではそれほど大きな犯罪が少ないため、その規模は小さく、十分な火器も用意されていません。当然、大きな事件が発生すれば、市や州警察の応援を受ける形になります。

義務と責任

 アメリカの交通事故による年間の死者数は約4万人ですが、この統計数字に彼らは意外に無関心です。それは、交通事故による被害は個人の責任でこれを防ぐしかないという発想により、車による移動のもたらす便利性というものが優位に立っているからです。「車は走る凶器」といわれますが、銃はそれそのものが凶器です。銃の所持についても、本来は所持する本人の義務と責任ということが常に表に出てきます。こうした点で、単に銃の所持そのものを危険だとする我々の発想とはかなりの隔たりがあるように思います。
 アメリカにおける車社会の歴史は、我が国よりも圧倒的に長いわけですが、そこに生まれる安全への考え方は、ある意味で伝承の長さかもしれません。皆が合意をした事柄のある一線を越えることは、いかなる事情があってもそれを許さない──という融通の利かなさが、ある意味での安全文化の母型ではないでしょうか。

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第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
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イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
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第03回
脳のサボリ装置
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転倒リスク

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