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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その12 はい作業とは
交通リスクコンサルタント 小林 實

積み上げられた荷物

no12_img01.jpg その分野の人だけにしか理解しがたい専門用語というものがあります。しかも、その語源というものがあまり明確にされないまま、日常的に使われています。放送局やテレビ局などでも隠語的なものがよく出てきます。
 労働災害でよく出てくるものに、「はい作業」という言葉がありますが、これは法令などでもそのまま使われています。かなり前から使われているようで、その語源は何ですかと聞いても明快な答えが返ってきません。しかし、門外漢にとって、なんでそんな名前がついているのか、いささか興味をもってしまいます。早速インターネットで検索してみると、いろいろな解釈があるようで、しかも定説がなく、いわば諸説紛々という感じです。
 共通の理解がなされている「はい作業」の定義をみると、袋物や箱物の保管、仮置き、検品などを行うために倉庫や上屋、土場に積み上げられた荷物の集団のことを「はい」といい、この「はい」を一定の方向で規則正しく積み上げたり、積み上げられた荷物(はい)を崩す作業を「はい作業」という、とあります。
 この際、手を使ったり、フォークリフトなどの機械を利用して積み降ろしをするわけですが、この「はい」が2メートル以上の高さになる場合は「はい作業主任者」を選出し、安全を確保しなくてはならないという法律もあります。

「はい」の語源は?

 なぜ「はい」というか、諸説のなかには、米俵が日本古来の荷の姿であって、その証拠に俵5個で「五俵はい」と言う─というものがありますが、イメージはわかるがそれほど説得力があるわけではありません。「擺」と書いて「はい」と呼ぶ古語がありますが、これは「広げて手順よく並べる」の意で、どうもこれが正しいのではないかという説もあります。その根拠に、作業場を渡り歩く人を「はい師」「はいつけ師」というようです。
 また、かつては、畑の土壌改良のために灰を肥料としてまいたことから、大量に灰を輸入して倉庫に積み、少しずつ取り崩して使っていたそうですが、その「灰」を語源とする説もあります。農家では、肥料としての灰を蓄えておく小屋を灰小屋、灰部屋ともいっています。
 「杯」という字もハイと呼びますが、これは、「増し加える」の意味の語源で「倍」からきています。江戸時代の「両」に相当する単位として使用されていたようで、たとえば芝居小屋で見物人の数を数える語として50人を1杯と呼ぶこととも関係しているようですが、これも定説とは言いがたいようです。

外来語の可能性

 ここで、一つ興味のある事実があります。荷役作業というのはもともと、船に荷物を積む「船積み」「船卸」の作業、つまり船内荷役作業から発したのだという説です。船の操縦用語の「ごへい」とはgo ahead(前進)から、「ごすたん」はgo astern(後進)が転化したとされています。建設用語の「さいすう」は英語のsize(サイズ)からきており、船のなかでの作業で外国語(この場合は英語)が飛び交うなか、このほうが便利だったことは予想されます。
 ならば、高さのことを英語ではheight(ハイト)、形容詞ではhigh(ハイ)ということから、これが日本語化して「ハイ」となったというのはありうる話でしょう。はい作業主任者の職務のなかにも、『床面からの高さが2メートル以上の「はい」については云々』といった表現があり、これを2メートル以上の「高さ」と読み替えることが可能です。高さが「はい」の語源でないかというのが有力な説です。
 当時の日本人作業員の背の高さは今よりも低く、2メートルの高さは確かに彼らにとって「ハイ」ではなかったでしょうか。意外に英語の語源説が妙に説得性を帯びているように思います。
 漁船に乗って難破したあと、アメリカ大陸へと渡ったジョン万次郎は、当時辞書もなく耳で発音を覚え、それを日本語に置き換えたという有名な話がありますが、なかでも「掘った芋いじるな」とはご存じのように“What time is it now?”のことです。
 話が少々脱線しましたが、最近、交通労働災害のなかで、いわゆるフォークリフトなどを使った「はい作業」における構内事故が、道路上での交通事故以上に増えてきているという事実には注目しなければならないと思います。

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第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
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オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
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第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
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見える化
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コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
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外国人観光客と冬道事故
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アビイ・ロードの横断歩道
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安全そして安心を目指せ「運転代行業」
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目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
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第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
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