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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その04 自転車の勘違い
交通リスクコンサルタント 小林 實

我が物顔に歩道を疾走

 最近のマスコミによるアンケート調査によると、「東京裁判」というものを知らない20代の若者が80%を超えているということです。ですから、昨今第二次世界大戦のきっかけとなった日本軍による「真珠湾攻撃」があったことも知らずに、ハワイに出かけている日本人観光客が多いのもうなずけます。
 時代とともに過去の歴史的な事実が消え去ってしまうのは致し方のないことかもしれませんが、何があったのか、そのルーツを知っておくことは何事においても必要でしょう。
 最近、自転車の加害事故が急増していることが新聞などで報道されていますが、これは、我が物顔に歩道を疾走する自転車にその大方の原因があるといえるでしょう。つまり、自転車はどこでも走れるのだという発想がそこにあります。
 あまりに乱暴な乗り方をしている中学生がいたので、真ん中を走らず端に寄れと注意しますと「何だ、このくそじじい!」と怒鳴られることもしばしばですし、警察官ですら、自転車で結構ジグザグな歩道通行をしているのを時々見かけます。
 私と同年代の友人のKさんも自転車事故の被害にあった一人です。横断歩道を青信号で渡ろうとしたところ、左斜めから疾走してきた自転車とぶつかり、全治1カ月のけがをしてしまいました。自転車はそのまま逃走してどうしようもなかったそうです。

変則的なシステム

 ところで、自転車が歩道を通ることができるようになったのは、今から30年近く前の昭和53年のことです。なぜ自転車が歩道を通れるようになったか─といえば、これは、「緊急避難」ともいえる交通行政上の苦肉の一策でした。つまり、当時、自転車が被害者になる事故が急増したことから、彼らを車道から歩道に上げれば事故が減ると考えたわけです。
 以来、多くの歩道で歩行者と自転車とが共存するという変則的なシステムが続いているのですが、こうした経緯を知らない人たちが、自転車で歩道を走るのは当たり前だと勘違いしても決して不思議はないでしょう。
 バイクの「三ない運動」もこれと同じ発想でした。高校生のバイク事故が急増した折、これに歯止めをかけるために、バイクに乗せない、免許を取らせない-とバイクからの締め出しを図ったわけです。神奈川県などでは「親は子どもの圧力に屈しない」なども加えた「五ない運動」にまで発展したことを覚えている方も多いでしょう。緊急避難のはずが、いつのまにか恒久対策に変わった一つの例だといってよいでしょう。

歩行者が絶対優先

no04_img01.jpg もちろん、道路交通法63条の4によりますと、自転車はすべての歩道を通行してよいのではなく、「自転車通行可」と指定された歩道のみがその対象となります。このための標識もちゃんとありますが、先ほど述べたような自転車側の誤解から、どこでも、いつでも走れるのだという発想になっているのです。
 歩行者がじゃまだからとベルを鳴らして走っている姿は、「そこのけ」の発想であり、「歩行者の通行を妨げない」という法の趣旨に明らかに反しています。こうした乱暴な走りは、当然取締りか指導の対象になるはずですが、なかなか徹底されないのが現状です。警察官の方たちがよく道路脇でシートベルトの取締りをしている姿を見かけますが、それよりも、自転車走行のマナーやルール遵守を指導徹底してもらうほうが、より市民の安全のために大切だと思うのですが。
 自転車王国オランダは、自転車の規律が非常に厳しいことで有名です。もちろん、自転車専用道路が市内に完備されているという施設的な理由もありますが、歩行者が絶対優先である点には間違いありません。
 自転車が歩道を通行するという、いわば緊急避難の対策がそのまま継続されていることには若干の疑念があります。最近取り入れられてきた「社会実験」と称するような手法でモデル地域での実施と評価を行い、そこで初めて全国的な実施が図られるのが本筋でしょう。あたって砕けろという、いわば即効性を求める姿勢というのは今後問われてくると思います。

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第137回
企業と労働災害
第136回
残酒(のこりざけ)運転
第135回
マナーについて
第134回
沈着な判断と行動が鍵
第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
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第123回
これからの交通社会は?
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レジリエントな発想
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レジリエンスと安全管理
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トンネルのリスク
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バスの暴走
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オアフ島と交通渋滞
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第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
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コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
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第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
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目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
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第28回
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第27回
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第26回
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第25回
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第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
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自己防衛の殻を破る
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