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2017年11月22日

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2017年6月 1日

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最終更新日:2017年12月12日

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交通安全時評

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事故が語る安全 日本ハイウェイセーフティ研究所所長 加藤 正明

第5回 車の安全性向上と交通安全

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安全性の高い車の限界

努力
 昨年の交通事故死者数は49年ぶりに7千人を下回ったが、その背景には飲酒運転に対する罰則強化をはじめ、速度違反などの取締り強化が挙げられている。さらには、シートベルト着用率の向上、チャイルドシート使用の定着、マナーの向上など、ドライバーの交通安全に対する意識の変化にも注目しなければならない。また、道路照明や誘導標識、歩道などインフラの整備も進んだ。
 それに加えて忘れてならないのは、車両メーカーも積極的に安全思想に基づく車造りを目指し、まさにグローバルな安全基準に合致するよう努力を続けていることだ。

設計思想
 「究極の安全な車を造ろうとすれば、戦車か装甲車のようなものになってしまう」と、ある評論家が語っていたが、これは、衝突されたときに自分はダメージが少ないほうが良いという発想である。もちろん、相手のダメージは視野にない。こうした考え方は、現代の車社会に採用するわけにはいかないだろう。
 (財)交通事故総合分析センター発行の「イタルダ・インフォメーション」No.63では、「自動車の安全性の向上」が特集されているが、その特集では、車自体の「設計思想の変化」に着目し、乗用車同士の衝突安全性の向上にスポットを当てながら、事例に基づいた詳しい分析が行われている。
 要約すると、近年の設計思想は、衝突の際に「車体を変形させて衝撃エネルギーを吸収する」だけでなく、「変形を前部にとどめ、車室の剛性を高めて乗員の生存空間を確保する」というのが主流である。言うまでもなくこれは一種の対症療法なのだが、一方では「車を衝突させない」IT技術もほとんど実用化の段階に達している。
 確かに、技術の進歩には目を見張るものがあるが、海中に落ちても沈まない車、あるいは高い崖や橋から河原に転落しても乗員はマユに包まれたように衝撃を受けないといった車は、コストパフォーマンス(費用対効果)から考えても無理だろう。また、最近、車両火災が目立つが、場合によっては乗員が閉じ込められたまま丸焼けになるという例も後を絶たない。それならば、スプリンクラーつきの車はどうか、という発想も、あまり実用性があるとは思えない。
 どうやら現状では、前部変形によって衝撃を吸収する「クラッシャブル構造」と車室周りを強固にした「高強度キャビン」に期待をかけるしかなさそうだ。そして、最も肝要なことは、ユーザーの安全意識の向上をどう進めるか、ということに尽きるようだ。
 未熟なパイロットを、最新鋭の戦闘機に乗せて「健闘を祈る」と送り出しても、あとは神のみぞ知るというのでは、ちょっと無責任というものだろう。機械の信頼性には期待するしかないが、絶対の信を置くというわけにはいかない。今でも、考えられないようなクレームが生じ、パーセンテージは低いとはいえ、たびたびリコール騒ぎが起こっている。
 したがって、車の安全性を高めるといっても限界があるわけで、その限界に人間のミスを重ねない心構えが大切になってくる。例えば、単純なことだが、急加速や急制動、極端なスピード超過などによって走行性能のバランスが失われることがある、というのはむしろ常識に属することかもしれない。その常識に沿った操作が守られないから、平坦で見通しの良い場所にもかかわらず、電柱への衝突、センターラインオーバーによる対向車への衝突といった「考えられない」アクシデントに見舞われてしまう。
 実は、こうした事故は決して「考えられない」アクシデントなどではなくて、マスコミ報道では連日のように紹介されている。日ごろからそうした事例に関心をもち、なぜ?と疑問符を浮かべる訓練ができていたならば、その事故は「ヒヤリ・ハット」の段階で防止できていたと思う。また、そうした「ヒヤリ・ハット」の生きた体験をしっかり振り返ることで、「安全」に寄与することができるはずである。そうはせずに、ただ周囲の悪条件が重なっただけだと、運まかせの操作を続けているようでは、次はきっと取り返しのつかない事故を招き寄せてしまうに違いない。
 こんなドライバーに、どんな安全車を与えても、絶対安全に生き延びるだろう、というお墨つきを出すことはできない。

100パーセントの安全

三位一体
 いくぶん開き直った言い方に聞こえるかもしれないが、交通安全に関する限り、100パーセントの安全を実現することは、ほとんど絶望的と言わざるを得ない。
 事故発生の要因として、古くから”人・車・道路“の三位一体が指摘されてきた。近年道路の整備が進んで、道路に関する苦情はあまり耳にすることもなくなった。ところが路面が良くなったことで、車の走行性能を決定づけるのにタイヤが重要な役割を果たしている、ということをすっかり忘れてしまったドライバーが多いのには驚く。
 冬になればすぐにわかることだが、普通のラジアルとスタッドレスの違いがわからず、乾燥路で飛ばして目的地に着く前に新品のスタッドレスをぼろぼろの台なしにしてしまった泣くに泣けないエピソードもある。かと思うと、高速道路のガソリンスタンドでタイヤチェーンを買って、面倒だからとその場で装着してもらい、ガラガラ鳴らしながら走り続け、あやうく断裂寸前となった話もある。帰路がどうなったかは知らない。
 最近の高速道路の舗装は、例の高機能舗装への改良が進んで、降雨時のタイヤのしぶき、雪解け時のワダチ掘れでのスリップなどのトラブルは少なくなった。しかし、なくなったわけではなく、相変わらず降雨・降雪時の、特に降り始めには10%以上のトラブルの増加がみられる。大抵はドライバーの無知が招いた初歩的なミスである。

取り残される
 こうした現象を見るにつけても、タイヤや車のメカ、道路は進化をたどってきたのに、人間だけが取り残されてしまっているといった感は否めない。三位一体の三位がバラバラでは、なかなか真理が実現されないのも無理もなかろう。
 やはり、ここは車や道路に過大な期待や幻想を抱かず、100パーセント安全を求める地道な人間づくりが重要である─というような、意識変革から始めるべきだろう。

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