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最終更新日:2017年8月22日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その36 持続可能性
交通リスクコンサルタント 小林 實

環境汚染で人類は破局

 地球が太陽系の惑星として誕生してから約46億年、人類がこの地球上に姿を現してから約20万年。今後、数十億年のあいだに巨大隕石が衝突するなどして人類は滅亡すると予測する人もいますし、いや、それまでに人類はいなくなるという悲観論すらあります。「そんなの関係ねぇ」といってしまえばそれまでですが…。
 環境破壊などの問題対処のために設立された「ローマクラブ」は、1972年に「成長の限界」を出版し、100年以内に人類の成長は限界に達する─という警告を出しましたが、その後1992年には、「限界を超えて?生きるための選択」というテーマで、資源採取や環境汚染の行き過ぎによって21世紀前半に人類は破局に至る─というシナリオを提示しました。
 ところで、最近マスコミで「持続可能性」という言葉が目立つようになりました。もともとは水産資源を減らすことなく、いかにして最大の漁獲量を得ることができるか─という水産資源の評価に使われていたキーワードです。持続可能性とは英語で“Sustainability”(サステイナビリティ)といいますが、語源はサステイン(sustain)、つまり「維持する、耐える」からきており、これに接尾語の“able”がついて、「維持できること」という意味になります。最近では、この言葉が「地球」というグローバルな話題と関連してよく用いられています。大きくみれば、これは「地球環境の持続性」を問うものなのです。
 確かに20世紀というのは、車をはじめとする便利なハードウエアにどっぷりと漬かり、いわば便利さにかまけて、その及ぼすマイナス面に目をつぶっていた世紀であったともいえるでしょう。そのつけは、このところの世界経済からくる不安と相まって、われわれに大きく影響しています。

若者の「持続性」に疑問

 近ごろ話題になった“LOHAS”(ロハス)という言葉も、この持続性をうたうものです。“Lifestyles of Health And Sustainability”という英語の頭文字を取った略語で、「健康で持続可能な社会を志向するライフスタイル」という意味です。こういう生活態度の人が増えることを目指した一つのビジネス用語です。
 さて、そんななか、たとえばゴルフ場のカートの普及は、特に若い人に「ゴルフなぞ楽なゲームだ」という感覚を与えてはいないでしょうか。そうした人には、電動カートのないゴルフ場には行きたくない、歩くのは苦手…という心理があるようです。しかし、1台の電動カートに3人も4人も若い人が群がって乗っている光景は、「おサルの電車」のように見えなくもありません。イギリスで発祥したゴルフという競技は、本来歩くこと、さらには自分のクラブは自分で運ぶことを旨としていました。
 電車の優先席にしても、本来は高齢者や妊婦、身体障害者などのためにあるのに、何の抵抗もなく若い男女が座っているのも同じことです。彼らの体力からすれば、少しくらい立っていても我慢できるのではないでしょうか(その点、横浜市営地下鉄の「全席優先席」というのは、席を譲りやすく好評です)。こうしてみると、今の若者が高齢者の年齢になるまで持続する可能性はあるのかどうか疑いたくなります。

手抜きの結果は数年後に…

 植生学で世界的に著名な宮脇昭さんは、地球上で植物に寄生して生きてゆくのが人類であり、命の尊厳であるとか、30億年前から現在まで続き、さらに将来につなげてゆくべき「遺伝子の保障」に対し、人間はあまりにも無関心すぎる─と警告されています。われわれ人間も、地球の命のドラマの主役であって、決して傍観することは許されないわけです。(「いのちを守るドングリの森」より)
 ところで、企業においても、将来を見すえた存続可能性というものが大きく問われ始めています。100年に一度といわれる世界的な未曾有の大不況のなかで、自動車産業をはじめとする多くの企業が、将来はどうなるのやら…といった不安材料に取り囲まれているところです。こんな不況を乗り切るには、無駄なものを省こう、カットできるところはできるだけカットしようという発想もありましょう。安全、ことに交通安全となると、企業では成果が目に見えにくいこともあって、コスト削減の槍玉にあがりがちです。企業における安全管理でも、手抜きの結果は数年後に現れるといいます。ボクシングのボディブローのようにじわりと効き始め、気づいたときには原状復帰が難しくなっている─というシナリオです。
 そこで思い起こされるのは、米・デュポン社で200年も前から培われてきた「安全文化」が、今日まで脈々と継続されていることではないでしょうか。

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バックナンバー

第133回
血液型と性格
第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
第88回
指差し称呼
第87回
コミュニケーション・ミス
第86回
企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
第84回
「運転技能」について
第83回
金魚のフン
第82回
5回のなぜなぜ
第81回
天井板崩落事故に学ぶ
第80回
荷役事故と交通事故
第79回
安全管理の格付け
第78回
交通KYTの限界
第77回
中小企業と安全管理
第76回
高年齢者の再雇用問題と企業リスク
第75回
「ハザード」の持つ意味
第74回
仮眠と過労
第73回
ハンドルを握る重み
第72回
厳しくなるメンタルヘルス対策
第71回
事故防止のために事業主は何をすべきか
第70回
多発するトレーラー事故〜プロドライバーの資質を問う
第69回
交通での安全マネジメント
第68回
「ゼロ」の持つ意味
第67回
スウェーデンとアルコール
第66回
北欧・コペンハーゲンの自転車道
第65回
無事故が続いていたら...
第64回
社会のスピード
第63回
国際運転免許
第62回
モラルハザード
第61回
コードンラインは不要だったか? ―首都圏での二次災害の可能性―
第60回
稲叢(いなむら)の火 ―防災の伝承を考える―
第59回
スイスチーズの大きな穴
第58回
外国人観光客と冬道事故
第57回
アビイ・ロードの横断歩道
第56回
安全そして安心を目指せ「運転代行業」
第55回
"不死鳥"の帰還
第54回
目先のリスク回避 ―バスの転落事故から―
第53回
ある学者の死を悼む
第52回
氷河急行の事故
第51回
企業も頑張っている!
第50回
うどん文化と運転
第49回
100円ライターのリスク
第48回
カルガモ走行
第47回
事業仕分け人
第46回
お客様目線
第45回
青矢印信号の謎
第44回
「安・近・短」のわな─グアムでの印象
第43回
120万という数字
第42回
加賀屋さんにみるCSR
第41回
「安全力」をアップしよう
第40回
「まぁ、いっか」の発想
第39回
元を質(ただ)す
第38回
ランドマーク
第37回
誤探知
第36回
持続可能性
第35回
認知ギャップ
第34回
「パーおじいさん」のこと
第33回
40年の功と罪
第32回
キャリーバッグと事故
第31回
KYTの落とし穴
第30回
ゲリラ化する災害
第29回
エスキモーと白
第28回
マニュアルにないもの
第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
第26回
経年劣化
第25回
我輩は「ジコ」である
第24回
タイタニック症候群
第23回
感覚の研ぎ澄まし
第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
地図の効用
第14回
左か右か
第13回
銃社会のジレンマ
第12回
はい作業とは
第11回
ロータリー的発想
第10回
図と地の関係
第09回
安全の文化
第08回
飲酒運転とJカーブ
第07回
視覚公害
第06回
イタリアとリスク
第05回
ボルボが似合った男
第04回
自転車の勘違い
第03回
脳のサボリ装置
第02回
おかしなアナウンス
第01回
転倒リスク

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