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最終更新日:2017年6月19日

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交通安全時評

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安全運転管理 あれこれ記 その08 飲酒運転とJカーブ
交通リスクコンサルタント 小林 實

社会規範を無視

 たとえば、工場労働者の出勤時間の分布をとってみますと、ほとんどの人は遅刻をしないが、ほんのごく少数のグループは常時遅刻をする―といったように、集団のなかには社会規範を乱す人がごく少数ながらいます。このことは、道路交通の場面でもあてはまります。今から70年ほど前のことですが、アメリカのオルポート(F.H.Allport)という学者が交差点で信号無視をするドライバーの数を調べたところ、ほとんどのドライバーはきちんと赤信号で止まるのに対し、ドライバーの5%近くは、たとえ警察官がいてもこれとは無関係に、まったく止まらないか徐行して通過していることがわかりました。
 日本でも、赤信号になっているのに加速して通過する危険な車やバイクを日中でも見かけることがあります。もちろん、人通りの少ない深夜になれば、こうした社会規範を無視するドライバーはもっと増えます。この分布をグラフにすると、ちょうどアルファベットのJを裏返しにしたような形になるので、これを「Jカーブ理論」といっています。

確信犯の存在

no08_img01.gif ところで、最近、テレビや新聞紙上を連日にぎわしているのが飲酒運転で、やれ公務員だ、さらには現職の警察官までが逮捕されるという信じがたい事件が次々と報道されます。8月に福岡で起きた、小さいお子さんが犠牲になった飲酒運転による事故は悲惨です。
 酒気帯び運転の基準値がまだ今よりもゆるい呼気1リットル中アルコール濃度0.25ミリグラムのころ、全国の盛り場や郊外で約8万人を対象に飲酒運転の実態調査を行いました。アルコールが検知されたのは、自家用車のドライバーで3%ほどでしたが、自転車やバイクでは7%程度とかなり高かったことが注目されます。
 つまり、当時も全体の97%のドライバーはまったく飲酒していない正常なドライバーでしたが、アルコールが検知された残りの3%、つまり約2千400人のうち、道交法上の「酒気帯び運転」に相当する人は30%ほどの約700人いました。この飲酒量別の分布をとったものが図Aです。
 お気づきのように、当時基準値の0.25を境として二つのJカーブがあることがわかります。右側の飲酒量の多いグループは、飲酒運転をしても自分は酔っていないから大丈夫だとするか、捕まるのは運が悪いだけで自分は捕まらないとする一種の「確信犯」だということになるでしょう。左側の少量のアルコールのグループは、捕まらないぎりぎりのところまでしか飲んでいないから大丈夫だという人たちです。
 これは、まったくの推測ですが、平成14年6月施行の道交法改正で酒気帯び運転の基準値が呼気1リットル中アルコール濃度0.15ミリグラム(血中アルコール濃度1ミリリットル中0.3ミリグラム)と厳しくなりましたが、それにより、おそらくこの右側のカーブの「飲酒運転確信犯」だった人たちが、グラフの上で0.15近くまで平行移動しているのではないかと思います。つまり、新聞やテレビで報道されているのはそのごく一部であり、潜在的な飲酒運転常習者は法をいくら厳しくしても後を絶たない社会現象だという見方ができるでしょう。
 確かに、法律を厳しくすると一時的に違反数が減ることは昔から知られています。しかし、しばらくすると取締りもたいしたことはないようだとか、自分は飲んでも平気だし、きっと基準値未満だろうという自分に有利な解釈で飲酒運転を続ける人が出てくるのではないでしょうか。

自己中心的な解釈

 社会心理学でいうところの「認知的不協和の理論」では、人間は時として自分の不利益になる意見には逆らって、自分なりの都合のよい解釈でこれを逃れる―とされています。俺は違うのだ、俺の運転技量なら平気だし、滅多なことでは捕まらないといった自己中心的な解釈で飲酒運転を続けているというわけです。
 我が国では、飲酒運転の取締りは街頭一斉検問など諸外国に比べて厳しく、酒気帯び運転の基準値でも、たとえばアメリカの多くの州やイギリスなどでの血中アルコール濃度0.8ミリグラムに比べて低く抑えてあります(最近、アメリカやカナダでは、若年層に対しては0.2ミリグラムと厳しくなったようです)が、飲酒運転による事故は、単独事故よりも、歩行者、ことに学童など他の交通参加者を巻き込む事故が多いというところに問題があります。
 一部企業の管理者のなかには、内心飲んでも大丈夫と思っている旧態依然の体質が残っていることも問題です。ほんの少しの飲酒でも、人体に与える影響は大きいことを企業のトップは知るべきでしょう。ましてや、飲酒による危険運転致死傷罪を避けるためにひき逃げが増加している事実にも注目しなければならないでしょう。

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第132回
忖度こそ安全マナー
第131回
タイヤ以外、何に触れても事故である
第130回
現場の声を聞く
第129回
運転の自動化とドライバー
第128回
人類は変化を続けている
第127回
眼の動きを捉える
第126回
プロアクティブな安全管理
第125回
次世代に向けた安全管理
第124回
思い込みの心理
第123回
これからの交通社会は?
第122回
レジリエントな発想
第121回
レジリエンスと安全管理
第120回
トンネルのリスク
第119回
突然死のリスク
第118回
バスの暴走
第117回
オアフ島と交通渋滞
第116回
安全管理八策
第115回
安全の費用対効果
第114回
交差点での安全運転
第113回
自転車事故と保険
第112回
感電のリスク
第111回
「安全神話」は崩壊したか?
第110回
新人教育のヒント
第109回
自動運転を考える
第108回
再び問われるメンタルヘルス
第107回
ハイタクと安全管理
第106回
何を認知するのか?
第105回
交通安全標語の変遷
第104回
なぜゴリラは見落とされるのか
第103回
10年後の交通を読む
第102回
若者との接し方 指導教官の話から
第101回
若者とクルマ離れ
第100回
異常気象と安全運転管理
第99回
どうする物損事故
第98回
ミラーの効用
第97回
「ハザード」の捉え方
第96回
「手術なき医学」からの脱却
第95回
二つの鉄道事故に学ぶ
第94回
歩道橋について考える
第93回
死亡事故の減りにくい部分
第92回
交通違反の悪質性
第91回
見える化
第90回
ハインリッヒの法則の逆読み
第89回
カクテルパーティー効果
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コミュニケーション・ミス
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企業とゾンビ族
第85回
ハイブリッド
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第71回
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第69回
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第27回
あっ、カエルが跳び出すよ!
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第25回
我輩は「ジコ」である
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第23回
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第22回
若い世代と安全管理
第21回
近づくもの・遠ざかるもの
第20回
自己防衛の殻を破る
第19回
トップの厳しい目
第18回
逆転の発想
第17回
ベトナムとヘルメット
第16回
心のサーモスタット
第15回
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第14回
左か右か
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第12回
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第01回
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